ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

ボールの全体はゴールラインを越えなかった直後にゴールラインの全体を超えた!FIFAワールドカップカタール2022 日本代表VSスペイン代表

ほぼ3年ぶりに戻ってまいりました。

 

日本代表VSスペイン代表の試合。三苫薫選手のボールの全体がゴールラインを超える前のギリギリでの折り返し。副審A2のソウル・ファットソーンさん、これを見極めたのは凄いですね。あの位置は過去記事にも書きましたけどゴールライン上の鬼門と言われる場所でゴールポストや選手も重なり副審から見辛いファーサイド。主審の位置取りが非常に重要になるもののラインの真横から見ているわけではないので

いずれにしても難しい。

 

なので今回はVARによる「アシスト」ゴールともいえます。

 

もし仮にファットソーンさんがボールがアウトオブプレーになったと判断しフラッグアップしていてVARが存在しなかったら、日本のゴールは消えていたでしょう。つまりテクノロジーによって結果が確証され誰もが納得する(せざるえない)判定になったということですね。

 

サッカー競技規則

第9条ボールインプレーおよびボールアウトオブプレー

 

1.ボールはつぎのときにアウトオブプレーとなる。

グラウンド上または空中で、ボールがゴールラインまたはタッチラインを完全に超えた。

(以下省略)

Law 9 The Ball In and Out of Play

1. Ball out of play

The ball is out of play when:

  • it has wholly passed over the goal line or touchline on the ground or in the air

 

VARもペナルティキックかどうかの見極めなどの時には「スローモーションの罠」に陥っている(=プレーの力の強弱やスピードや全体の動きとの関係が考慮されなくなる)とも考えられるときもあるものの、今回はVARあって皆(選手も審判もベンチも観客も)がハッピーになれたかと思います(得点による試合の結果は別にして)。

 

VARの罠はこちらの記事を↓

zaskersanetomo.hatenablog.com

 

とにかく今回の三苫選手→ 田中碧選手のホットラインゴールはテクノロジーとの融合のいい結果ですね。

 

ひょっとしたらファットソーン副審もVARがあるので安心して?フラッグアップしないで自身の判断を実行できたのかもしれません。でもファットソーンさんはボールの全体(フィールドにボールが触れている必要なく立体的にラインとボールの縦の位置関係を見極めることが重要。ボールのインフィールド側の端に意識をフォーカス)がラインを超えていないという自信の感覚を信じたようにも思います。感覚!これこそ矛盾するようですけど適切な判定に必要なテクノロジーと両輪になるべき人間だけが持っているものかと思います。

 

いずれにしてもブラボー!

 

 

テクノロジーとサッカー審判についてはこちらの記事もどうぞ↓

zaskersanetomo.hatenablog.com

 

それではI'll be back.

一挙再々掲載! 「サッカー審判員の「無知」が選手の生命を危険にさらす(前編&後編)。」

もはや別の惑星か?と思えるほどの暑さです。

今年は完全に出遅れ審判活動も滞っておりますです。

 

秋になったら再開しようと思っておりますので、まずはこちらを未読の方は是非。

 

 

 

 

サッカー審判員の「無知」が選手の生命を危険にさらす(前編)。

 

 

 

サッカー審判員の「無知」が選手の生命を危険にさらす(後編)。

 

 

 

 

では、I'll be back.

 

「カメラを止めるな!」ゴールかノーゴールかの先に。

ちょっと記憶が薄れつつも去年の夏にあった事例について触れます(自分にとってもちょっと反省しきりな事例だったので、すぐにアップするにはためらいがあったのです)。

 

それは社会人リーグで副審(A2)を担当していた時のことでした。

 

リードしていたチームのコーナーキックでした(A2側、つまり私の目の前のコーナーからのキックです)。いつものように争点はゴール前の攻撃側選手と守備側選手の位置関係、つまりオフサイドの判断を念頭に集中力を高めていました。

 

そしてそれは私にとっては突然の出来事でした。

 

「入った!」

 

その声の直前にボールはゴールキーパーの手によってゴールからはじき出されました。

今思えばボールの全体は空中で完全にゴールラインを越えていたかもしれません。

ただその時の私はそのような形でボールがゴールラインを超えるとは全く予期していませんでした。もっと言えばボールがゴールラインを超えたか越えなかったの判断を強いられるとも思っていなかったのです。逆に言えば得点される場面は予期していたのですけどそれはボールが完全にゴールネットに突き刺さるイメージだったのです・・・。

 

「エッ~!」という選手の声、そして私の方を見る主審の視線を感じながらベンチからは「笛が鳴っていなんだから続けろー!」とのコーチの方の声。

 

それでも私の手にもたれているフラッグがアップされることはありませんでした。プレーはそのまま続行です。その直後再度私サイドのコーナーキックとなりました。私が得点を認めなかった側の攻撃チームの選手がボールをコーナーアークにセットしながら呟いた言葉が耳から離れません。

 

「公正公平にお願いしますよ」

 

これにはもちろん反論ありです。審判員がどちらかのチームに加担するなんてことは絶対にないという自負があります。ただ一方で自分は正確に事象を捉えていたのか?ということにたいして負い目があったのも事実なのです。私はその選手の言を否定しながらも自分が副審として最高のパフォーマンスを発揮できたかどうかには自信が持てなかったわけです。

 

ゴールの見極めには集中力が必須です。そう、まさに審判員は近づいたり、角度を付けたり、フォーカスしながら事象を「撮影」し続けなければなりません。カメラを止めてはならないのです!

 

そして同時に予断をもって事象を勝手にパターン化してはならないのです。私が行ったように「得点シーンはボールがゴールネットに突き刺さる」と限定してはならないのです。そうカメラがそうであるように事象を解釈なしにそのまま映し出すことも必要なのです(もちろん同時に解釈も必要なのですけど)。

 

「この場面では得点はないだろう」「ここからシュートはしないな」「この角度でシュートされたボールが得点になることはないよ」ということがよりよい距離、角度、ポジションから事象を見極めようとすることの大きな足枷になるのです。そう、まさに「予断」大敵なのです!

 

画像録画やVARやゴールラインテクノロジーがない私のようなレベルの審判員では試合後に遡って事象が正確にどうだったかをレビューすることは出来ません。なのである意味自分という「カメラ」しかも再生不可能なカメラで全力を尽くす必要があるのです。

 

審判員は常に得点だったのかそうだったのかも含め全力を尽くして見極める必要があります。今回は出来なくても次回こそ!というのが審判員の持つべき向上心であり、それが審判員としてのあるべき姿勢なのです。

 

ミスプレーが選手を育てるように誤審が審判員を育てることもあります。プロならなおさらです。ひとつひとつのプレーに「人生をかけている」のがプロのサッカー選手だとしたらサッカー審判員だって「人生をかけている」のです。サッカーにかけてその先の夢を追い続けているのは選手だって審判員だって立場は違えど同じなのです!

 

オウンゴールしたくてオウンゴールしている選手など一人もいないように誤審したくて誤審している審判員など一人もいません。

 

もちろんミスをした選手や審判員にはフィールドの内外から非難がよせられることは承知しなければなりません。だからこそフィールドに立つサッカーを愛する同志として選手と審判員はお互いをリスペクトしあわなければなりません。そしてフィールドの中のミスでフィールドの外でリスペクトが失われるなんてことは絶対にあってはならないと思います。

 

時には嘲笑と揶揄を遠くに聞きながら、フィールドの中でサッカーの魅力を世界に向かって映し出す選手と審判員に向かって再度言いたい!カメラを止めるな!

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

興梠選手のPKフェイントとケネディ暗殺にみるVARの罠

またまた、しばらくぶりなのにアクセスが集まっているなあ~と思ったら・・・

興梠選手のPKフェイントが話題になっていたのですね。

 

浦和レッズ VS ヴィッセル神戸での試合開始10分での興梠 慎三選手が獲得したPKですね。

 

さて興梠選手のPKフェイント。私も何回も動画で確認させて頂きました。何の問題もございません。

 

以前のこちらの記事もご参照ください→ 「PKもしくはPK戦における「正当なフェイント」と「不正なフェイント」 」

 

 

「競技者が一度助走を完了した後、ボールをけるためにフェイントをする(助走中のフェイントは認められる)。主審は、そのキッカーを警告する。」

 

付け加えるなら「助走を完了」とは「ボールを蹴り始める体勢になった」ということです。この体勢になったらフェイントは許されません。つまり「ける動作」自体は一連の動作になっていなければなりません。一連の動作とは、けり足を止めたり、けるふりをしたり、蹴り始めている足があるのに、いきなり軸足にけり足を変えるとか(そんな動きが現実に可能かどうか。一方の足が蹴り始めていなければ、軸足(と思われていた)足でけること自体は問題ございません)を行わないということです。

 

ただ動画見直していた時に感じたことを一言。スロー再生していると興梠選手の軸足の動きが気になったりしたのですね。まるで軸足をずらしているかのような(実際軸足は動いています)。

 

でもこれは「ボールをけるためのフェイント」ではありません。ける動きは一連の動作になっています。フェイントを「相手を惑わす動作」という定義にすると助走まではその惑わしに成功、けり始めては惑わす動作にはなっていないのです。お見事興梠選手。

 

ここにVARの「罠」があるような。あのアジア杯でも議論を呼んだハンドリングの反則がVARで特定されたのは、スローモーション(ハイスピード)画像が人の目に「別の現実」を拡張してみせるのではという罠です。その昔ケネディ大統領の暗殺画像をスロー再生したら「トンデモ」解釈が出てきたようにです。

 

VAR恐るべし、という結論に至った興梠選手のPK。なんか変な方向にいってしまいましたね。

 

では、I'll be back.

サッカー審判員にとっての「見る力」~ その④

最後に記事を書いたのが去年の10月。随分とサボっておりました。で、その間実戦からも遠ざかり・・・週末に久しぶりに4種の副審を担当。

 

試合から遠ざかっていても、そうそうに体力が落ちたり、試合勘が鈍ったり、動作がぎこちなくなったりはしません(なってないつもり)けど、なんか抜け落ちるんですね。今回で言えばブッキングするのを忘れたり・・・継続は安定なりでしょうか。

 

さて3回に渡って書いた「見る力」について。前回ご紹介した自己流トレーニングの結果どうなった言えば・・・。

 

1)視野を広く持って今の争点から次の争点への予想を意識するようになった。

2)試合前には必ず眼球運動(視点のコントロール)をするようになった。

 

ということでしょうか。

 

正直、争点が以前よりはっきりと見えるようになったとかというと、これは眼球トレーニングだけで改善できることでもないと思います。それでも眼球トレーニングは自分の「見る力」の弱点とか機会点の発見につながり、なにより一番の効能は「見ること自体が楽しくなる」ということだと思います。それは見ることで情報量が増えることの楽しみとも言えます。選手の動きがファウルか通常のプレーか?ということだけでなく個々の選手の特徴的な動きとか顔の表情とか、そういったことも全部見てやろうという気持ちが以前より増したように思います。

 

さて、ここで話が脱線しますけど、実戦から遠ざかっていた間、筆者は何をやっていたかと言えば、映画館に通っていたのですね。実は大の映画好きである筆者は映画は映画館で観るものを自己ルールとし昨年は合計82本を観賞しました。洋画邦画なんでもござれのかなりの雑食性でございます。で、筆者的には映画が輝きその力が偉大だったのは1950年代までで、ほとんどのそれ以後の映画は過去の偉大な映画の遺産をなぞっているとものである(つまり引用とリメイクと同義)と思っています。とは言えチェーンソー持って追いかけるとか、遠い惑星で昆虫と闘うとか、宇宙で善と悪に分かれて戦うとか、家族全員犯罪者とか・・・の映画も好きではあります。

 

サッカーの試合で選手のプレーを見ることと映画を観ることは全くの別ものですけど、共通して気付くことがあります。それは自分の見ることのクセです。実は映画館でも視界にはスクリーンの映像が入っていながら、数秒間意識が飛んでいてセリフも話の筋も抜け落ちる瞬間がたまにあります。そう、私にとっての見る上での最大の課題は、映画鑑賞でもサッカー審判員を担当している時でも同じでそれは「集中力の持続」なんですね(^^)。

 

やはり見ることというのは難しいです。アジアカップでのVAR判定を引き合いに出すまでもなくカテゴリーやレベルに関係なく難しいのであります。修行は続く。そろそろ実戦再開です・・・。

 

では、I'll be back.

 

 

スローインは足の裏がついていなければならない?

前回の続きで「その④」を書く予定だったのですけど、週末の試合であったことを取り上げます。

 

今年に入って担当している試合のほとんどが1種、2種、3種のローテーション。で、今週末久しぶりに鬼審判部長Kさんの代役で4種の副審を務めました。

 

試合後、一緒に副審を担当したお父さん審判員の方が「このスローインってファウルですよね?」とご質問がありました。試合中私は気が付かなかったのですけど、主審の方と目を合わせながら「これって?」とお互いに思いながらもファウルかどうか確信が持てないのでフラッグアップしなかったとのこと。

 

それはどのような事象かと言えば、スローインの時に「片足がつま先立ちになっている」状態なのです。つまり「足の裏がグラウンドから離れている」状態なのです。面白いですね。これだから4種の審判員ってやめられません。選手も審判員の方も時にこちらの競技規則の理解が「甘い」ところを鋭く突いてくるプレーや質問を投げかけてくれます。今回も「競技規則を確かめてみましょう」とゴマカシながら即答を避けました。もちろん試合中にこの事象を目にしたら絶対反則とはしません。でもその根拠を競技規則の条文に求めるとしたら・・・120%の自信が持てない・・・アマイ!

 

お父さん審判員の方は「足の裏」がグラウンドについていなければならないと理解されていたわけですね。スローインは立って投げなければならない・・・という理解からするとバレリーナーのように爪先立って投げるとは考えられないのも確か。では競技規則です。先々週、届いたばかりの2018/19版から抜粋。

 

スローイン

(中略)

1. 進め方

ボールを入れるとき、スローワーは:

 

●競技のフィールドに面して立って、

●両足ともその一部をタッチライン上またはタッチラインの外のグラウンドにつけ、

● ボールが競技のフィールドを出た地点から、頭の後方から頭上を通して両手を用いて ボールを投げなければならない。

 

ちなみに今回の2018/19版より「立って」という言葉が追記されましたね。座ったり、膝立ちでは反則ということです。でも「膝立ち」だって「立って」んじゃないのという声が出るかも?知れません。なので次に英文の規則を抜粋します。

 

The Throw-in

(中略)

1. Procedure At the moment of delivering the ball, the thrower must

: • stand facing the field of play

•  have part of each foot on the touchline or on the ground outside the touchline

•  throw the ball with both hands from behind and over the head from the point where it left the field of play

 

これで分かるように「足」とは「foot」なんですね。「小学館プログレッシブ英和中辞典第2版」で確認してみるとfootとは「「足(くるぶしから下の部分)」と定義されています。なのでスローインのときに爪先立っていてもOKってことですね。で膝立ちはアウトです。

 

さらについでに書くと:

 

●ボールが味方競技者によって意図的にゴールキーパーにキックされる。

 

といういわゆるバックパスの反則の場合キックとはどのような定義になるか再確認してみましょう。上記の条文の英文は以下の通り。

 

 •it has been deliberately kicked to the goalkeeper by a team-mate

 

でこの場合のキーワードはやはり「kick」です。キックボクシングとかK1とかですと飛び膝蹴りなんて技がありますけどkickの定義を(英英辞典が手元にないので)オンラインのThe Cambridge Dictionaryで確認してみると「to hit someone or something with the foot, or to move the feet and legs suddenly and violently: 」とあります。なのでボールを蹴る場合は「foot」(「leg」ではない)=「足」でということになるので、仮に意図的に脛、膝、太腿で味方競技者がバックパスしてゴールキーパーペナルティエリア内で手を使ってボールを触れても反則にはなりません。脛なんかの場合揉めそうですけど、そもそも「意図的に」脛でボールを蹴ることの難しさを考えるとプレーが意図的なのかどうかの見極めも重要ですね。

 

ということで今週の復習でした。今回の競技規則解釈は広く知られて皆さんすでにご存じだったと思います。でも、今回の重要な学びは「理解しているつもりでも、いざある事象に初めて出会うと戸惑って(時には競技規則の適用を間違って)しまう」ということです。

 

理解➡経験➡再確認のプロセスを繰り返しましょう。

 

では、I'll be back.