ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

ボールパーソンの役割とリスペクト。 そしてヘイトのない世界へ。

こちらの記事にたいして貴重な情報を頂きましたので以下そのままご紹介させていただきます → 「ボールボーイ(パーソン)に乱暴な行為をしたら・・・。

 

2種・3種指導員 さんから頂いたコメントです  。

 

「はじめまして。
いつも楽しく読ませて頂いております。
私は2級審判員で中学生と高校生の指導を行っております。
Jリーグや日本A代表のボールパーソンも数度対応しましたが、ボールパーソンは選手にボールを渡す担当が決まっているのです。
よって、その他のボールパーソンはボールを拾っては、選手に渡す担当にボールを送る様な割振りになってます。
よって今回のボールパーソンは、ボールを拾うだけの担当で、言いつけ通りに対応しようとしたが、選手が詰め寄ってきたのでボールを渡してしまったものと推察してます。
本事件以降、会場関係者からは「誰が渡しても良い」とボールパーソンには告げられていると聞いてます。
本事実を知って頂き、今回のポールパーソンを非難するサッカーファンや関係者には改心頂きたいものです。」

 

で、わたしの返信です。

「2種・3種指導員さん、大変貴重なコメントを頂きありがとうございます!

なるほどそういう役割分担があったのですね。私自身も勉強になったことはもちろんこの事実を出来るだけ多くの方に知ってもらいたいと思います。そもそも自分の無知を棚に上げて一時の感情で大勢の大人がよってたかってサッカーを愛する一人の少年を叩くなんてことは絶対に「許さん!」です。

自戒もこめてこの事実をすべてのサッカーに関わる人たちに知ってもらえるようにお役に立てればと思います。」

 

 いま一度、議論を呼んだこの「事件」を考えてみるにつけ、冷静さが必要だったなと今さらながら思います。サポートするチームへの思いの強さも理解できます。一方でサッカーの試合は多くの人に支えられている事実を決して忘れてはならないとも思います。

 

もしボールパーソンへの態度や言動について「今思えばよくなかったな・・・」と心当たりある選手はぜひ自省していただければと思います。そしてボールパーソンだけでなく、選手だけでなく、私たち審判員も含めすべてのサッカーに関わる人たちが今一度「リスペクト」の気持ちを強くしてもらいたいと思う次第です。

 

今や現実の世界をは多くの「ヘイト」や「差別」に溢れているように見えます。リスペクトという基本原則を蔑ろにしたそれらの言動を一番毅然とした姿勢で許していないのがサッカーのフィールドでありスタジアムであるという事実。このことはこらからも変わらず守っていかねばなりません。

 

では、I'll be back.

サッカー審判員が桃太郎侍になる時。

  先日BSプレミアムを見ていたらビートたけしさんの番組の再放送があり「殺陣師」のお仕事を紹介していました。時代劇には欠かせない立ち回りシーン。歴代のスターが紹介されておりましたけど、私がかって最も衝撃を受けて虜になった立ち回りは勝新こと勝新太郎さんの動き。いや~さすが不世出の天才。スピード、キレ、そして踊るが如くの立ち回りにはシビレます。

 

なんでもかんでもサッカー審判と無理やり結びつけるわけではないですけど勝新のような動きで主審なんかやったらカッコいいだろうな~。脱線ついでに言うと座頭市が主審やったら・・・音と気配だけでファウルを見極めて笛吹いて・・・カッコ良過ぎ~・・・ってナンノコッチャ。

 

ところで、この回にはゲストとして高橋英樹さんが出ていました。で、高橋さんと言えばやはりあの「桃太郎侍」です。勧善懲悪の時代劇の筆頭ですな。もはや偉大なるワンパターンゆえのカタルシスの大きさでは「水戸黄門」や「遠山の金さん」に並びますよね(なんか時代劇評論になってきたな・・・)。

 

で、「桃太郎侍」のセリフと言えばあの悪党たちを成敗するクライマックスシーンでの「ひとぉ~つ、人の世の生き血を啜り。ふたぁ~つ、不埒な悪行三昧ぃ。みっつ醜い浮世の鬼を 退治てくれよう 桃太郎」が有名ですけど、その前のシーンでもお決まりのあのセリフがありますよね。

 

それが「許さん!」です。

 

そう、悪党の悪行三昧の被害にあった人々を見た桃太郎侍怒髪天を衝く、まさにあの特撮映画の傑作「大魔神」の中で大魔神が民衆を虐げている悪人たちに怒り柔和な埴輪の表情から恐ろしい形相に変わる瞬間のように、浪人侍が鬼退治の怒れるターミネーターに変わる瞬間なのです。まさにこの「許さん!」が決して見逃すことが出来ない事が行われたという認定であり基準となっているのです。

 

というわけで?ここからが審判のお話。そうこの「許さん!」っていう基準が審判員にも必要って話なんです。

 

この「許さん!」には語感通り、極めて強い意志が込められています。

 

例えばフリーキックでの再開時にボールは静止していなければならないわけですけど、「ちょっとぐらい動いていてもいいかな~」ということを許してはダメです。これはいわゆる「マイクロマネジメント」になりますけど試合全体のマネジメントに影響を及ぼす重要なマイクロマネジメントだと思います。逆に悪いマイクロマネジメントとは目的が置き去りにされて、マネジメント自体が手段から目的になっているような状態を指します。でも、今回の「許さん!」はこのような「いい」マイクロマネジメントを指してはいません。今回の「許さん!」はあなたのサッカー観、いや人生観にかかわるといっても過言ではないでしょう。子育てや育成なんかにも通じるものでしょう。

 

つまり目的を置き去りにしたままの過度の干渉や指示(=悪いマイクロマネジメント)は避けながらも「子供がXXXの言動をしたら絶対にそのままにしない」というあなたの方針や信念に基づいた「許さん!」と同義なのです。

 

それは選手やベンチ役員による異議すれすれの言動に対して柔軟かつ毅然と硬軟両方のアプローチを使い分けながらも、「この言動は絶対許さん!」という基準を持つということです。

 

例えば選手たちと和気あいあいとしたコミュニケーションを続けていたとしても「これを言ったら許さん!」という基準です。ベンチ役員がつい冗談で言った人の尊厳を傷つける、もしくは暴力行為を喚起させる言葉、これもあなたの基準で「許さん!」なら曖昧にしてはだめなのです。

 

プレーにおいても「許さん!」があるはずです。ボールを全くプレーする気がないことが明らかで、空中にいる不安定な状態の競技者へのトリッピングや全力で走っている選手の後方からのタックル等々、これらは限りなくカードの対象の可能性が高いプレーでもあります。そしてなにより危険なプレーかつ悪意のプレーです。この中でもさらにこれだけは絶対やってはダメというプレーそれが、「許さん!」です。

 

でも今回の「許さん!」はあなたのサッカーに対する価値観や信念と密接に結びついている審判員としての基準なのです。たとえ周りの空気に抗っても貫き通すべき基準なのです。

 

たとえ軽口でもたとえ冗談のような仕草でも:

 

●差別

●暴力

●生命への冒涜

 

を示唆したり意味したら「許さん!」というのが私の基準です。つまり退場もしくは退席ということですね。

 

とまあ、偉そうにいったもののこれを一貫して実行することはまさに審判員としての戦いでもあります。桃太郎侍への道は簡単ではないのです。

 

では、許さん・・・じゃなく

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サッカー審判やって凹んだら」2!

サッカー審判やって凹んだら」っていう記事を今から3年半ほど前に書きました。

 

あれから私も進化して・・・とはなってないのですね。それどころかいつも書くように下手になっているのでは~と毎回審判業務終わる度に落ち込む次第です。なので、上記の記事を読みなおし自分で自分を励ます状態です。

 

さてこの「凹む」という状態、副審を担当したときよりも主審担当のときのほうが凹む頻度も凹みの深さも大きいように思います。

 

それは主審と副審の:

 

1)職権

2)任務範囲

3)注目度

 

の違いからくるものだと思います。

 

1)についていえば副審は判断はできても決定は主審の権限です。

2)は言わずもがな主審の担当範囲は副審より広いですね。ある意味全てを担当するのが主審なので「一人審判」も成り立つわけです。

3)も言わずもがなですね。とにかく選手、ベンチ、観客の視線は(時には非難は)フィールドの中にただ一人いる審判員としての主審に集中して注がれます。

 

これ逆に考えると副審を担当することの多い自分としてはある意味最終的な責任は主審がとるのだから「気楽に」試合に臨めるということにもなりかねません。

 

正直に言うと、そのような面も否定できません。

 

しかしこれでは審判員としての進歩はなくなりますね。「ノーリスク、ノーゲイン」です。より責任やプレッシャーがかかる位置に身をおいてこそ人は成長できるという真理なわけです。

 

ただこのようなカッコいいことでは決してなく、私のレベルで凹む原因の多くは「差し違え」や「ファウルの見落とし」など極めてレベルの低い自分の技術のなさにあります。ただここが重要なのですけど、それは技術もありますけど多くの場合はメンタルに起因します。つまり:

 

1)責任をとる覚悟が出来ていないのでつい「無難に」収めようとする。

2)結局は自分が決定(判断)すべき時でも副審(主審)まかせになる。

3)または選手の様子をみて決めようとしてかえって信頼を失うジャッジングを行う。

 

というよな状況です。

 

これはいけません。やはりメンタルって重要です。

 

企業経営で言えば主審は経営トップで副審はそれ以外の社員に例えることもできるかと思います。トップは社員から様々な判断材料を受け取りながら、最後には決定しなければなりません。一方で社員もそれぞれの立場で判断することで、よりよい決定がなされるように経営トップにシグナルを伝える必要があります。なので上下関係はあるかもしれませんけど、それぞれの立場でリスクをとりチャレンジすることで(革新であろうと現状維持であろうと)責任を果たします。

 

主審と副審も同じですね。

 

「責任回避」せず正面から向き合います!

 

では、I'll be back.

 

 

 

試合中に熱中症になりかけたら。

先々週末の筋肉疲労も抜けないまま、週末もすべて審判業務とあいなりました。

 

で、特に厳しい気象条件だったのが日曜日でした。この日は勝手に曇りになるかなと思いながらも日焼け止めも塗り、塩飴、メープルシロップ入りミネラルウォーター、塩味のカシューナッツも持参し試合前から準備万全だったのですけど・・・それは突然やってきました。

 

午前中だというのにすでに気温は30℃越え。日差しは紫外線が針のように注いでいるかのような状態。WBGTは・・・。実は筆者WBGTの基準値とか意味をよく理解していなかったのです。もうこの時点で準備万全とは言えませんね。ひらたく言うと甘くみていたわけです。

 

まずは筆者の下手な説明より環境省のこちらのサイトをご覧ください → 

環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは?

 

まずは:

 

WBGT=28℃=厳重警戒=熱中症患者が著しく増加する境目

 

と覚えておいてください。

 

そして:

 

28~31℃ 厳重警戒
(激しい運動は中止)
WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。
体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。

 

31℃以上 運動は原則中止

WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。
特に子どもの場合は中止すべき。

 

 

となります。

 

そのうえで、こちらの日本サッカー協会の通達をご覧ください → 熱中症対策ガイドライン 

 

ここで特に注目したいのが以下の文章。

 

「屋根の無い人工芝ピッチで試合を行う場合は、天然芝等に比べて WBGT 値の上昇が見込まれるため、上記の値から-3℃した値を基準とする。 」

 

つまり仮にWBGTが28℃であってもそれは31℃に匹敵するので「WBGT=31℃以上となる時刻に、試合を始めない。(キックオフ時刻を設定しない。)」ということになることを意味するわけです。

 

さてWBGT計測器なんて常に用意されているわけでもないですし、そもそもその意味を理解していなかった反省すべき審判員である私としては後で思えばかなり危険な状況で45分ハーフ90分ゲームの副審を務めたわけです。当然走るペース配分は最終ラインおよびボールの動き次第。このような気象条件のときに限って守備側の最終ラインの上げ下げが頻繁に行われたのです。そうやって裏に抜ける攻撃側の動きとも相まってスプリントを繰り返した結果、だいたい前半30分過ぎだったでしょうか・・・以前記事にしたような状況の予兆を自分の体に感じたわけです。つまり体温が異常に上がったように(身体、特に頭部が熱く)感じ始めたかと思うと、「ちょっと寒いかも」というアノ感じです。そうちょうどインフルエンザになって高熱が出始める時の悪寒のようなアノ感じです。

(以前の記事はこちら →「 サッカー審判員の「無知」が選手の生命を危険にさらす(後編)。 」)

 

やばいな~と感じながらも、あと15分+アディショナルタイムを乗り切れば休める。なんの根拠もないまま頭の中では後半ハーフに向けてハーフタイムのインターバルでリカバリーするためのある「秘策」が思い浮かんでました。

 

さてその「秘策」とは?ここからはあくまで個人の経験としての対策であって医学的根拠をもとにした推奨されるべき熱中症の対応策でないことを念頭にお読みくださいませ。

 

さて15分間の休息に入ってすぐに行ったことは2本の冷えた飲料を自販機で購入することでした。一方はミネラルウォーターそしてもう一方は「グリーン ダ・カ・ラ」。

 

まずは「グリーン ダ・カ・ラ」で水分、塩分、その他ミネラル補給です。市販の飲料の中では一番添加物が少なく、甘すぎず、塩分やカリウムなどのバランスがとれた優れものの飲料だと思います(念のためメーカーの回し者ではございません)。

 

で、次にミネラルウォーターの出番。これを自販機で買ってすぐに脳内を巡回している血液の温度をさげるべく(もしくは頭部の熱を冷ますために)冷えたボトルを首筋に当てたわけです。特に有効なのが首の横から前方に向かって斜めにペットボトルをあてて(多分)頚静脈付近(と思われる個所)を冷やすことです。このためなら別にミネラルウォーターでなくても冷えたペットボトル飲料ならなんでもいいのですけど(例えば「 グリーン ダ・カ・ラ」で首筋冷やしてから飲むとかなら飲料1本買えば事足りる)水のいいところはそのまま頭にかけることが出来る点です。

 

これでイメージとしては脳内に行く血液を冷やすことで熱のこもった頭部を冷却しているつもりだったのですけど(実際は頚静脈というのは脳内からの血流が心臓に戻っている血管なのですね)、まさにイメージどおりこもっていた熱が取れたのです。そうやって不思議にも後半ハーフの方がバテないで走れたというわけであります。

 

あと試合中もタッチライン付近に置いてある両チームの飲料をアウトオブプレーの時に飲むようにしました。このようにすれば試合中も水分補給は出来ます。出来ますけど上記のように熱が体にこもり始め、いわゆる熱中症のステージ2に進み始めると水分補給だけではその勢いを止めることが難しくなる可能性があります。なので試合中に熱中症になりかけたら中断を求める勇気も大事。またよく冷やした水をかけた帽子をかぶる勇気も大事。

 

とまあ、結果的に今回も何事もなかったのでいい経験になりましたけど、やはり熱中症はナメてはいけません。それは忘れたころに突然やってくるのです。サッカー審判員としては安全な試合運営、選手の健康の確保そして安心していいコンディションで選手に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことが任務となりますけど、その任務を遂行するためにはまず自身の安全を確保しなければならないというわけです。

 

ということで熱中症の予防対策対応メモ。

 

<試合前>

体調管理。とくに担当週における十分な睡眠および栄養補給。体調不良なら割当てを受けない。

必要に応じてアップ時からこまめな水分&栄養補給。

アップで熱のこもった身体の冷えたペットボトルを使った冷却。

<試合中>

アウトオブプレー時での水分補給。

時間軸と状況に応じたペース配分。

帽子の使用。

<ハーフタイム>

冷えたペットボトルを使った身体冷却。

水分&ミネラル補給。

帽子の使用。

<試合後>

十分な休息および栄養補給。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

サッカー審判員のコンタクト

前回の記事(「 サッカー主審の「動体視力」の本当の意味 」)でコンタクトレンズを使用したことの効能を書きましたけど、重要なことを書き落としてました。

 

それは主審 ⇔ 副審でのアイコンタクトがクリアになったことです。実はこれが一番悩みの種だったのです。各選手の動きや他の審判のシグナルは見えてもお互いの目と目がしっかり合わせることができないと(ぼんやり見えているだけでは)短い時間内で信頼関係を築くことが難しくなります。言葉やシグナルと同じくらい、いや会話できる状況は限られる試合中の審判同士ではこの目によるコミュニケーションが口ほどにものを言います・・・っていう真理なんですね。

 

アイコンタクトが重要になる状況についてはこちらの過去記事をご参照ください。→ 「 サッカー審判 「スゴイミニ」とは?  - 後編 」

あとこちらの記事も合わせてどうぞ。→ 「 主審と副審の「未知との遭遇」 」

 

シグナルビープとか電子通信システムなんてものを使用する試合を担当することはない私としてはこの主審と副審のアイコンタクトを引き続き実戦での課題とし、繰り返しチャレンジしてみます。

 

では、I'll be back.

サッカー主審の「動体視力」の本当の意味

「 サッカー審判員の身体「矯正」 」でお伝えしながらも審判業務が雨などでキャンセルとなり「コンタクトレンズ・デビュー」がなかなか果たせなかったのですけど、GW中にようやくその機会が訪れました。
 「 サッカー審判員の身体「矯正」 」でお伝えしながらも審判業務が雨などでキャンセルとなり「コンタクトレンズ・デビュー」がなかなか果たせなかったのですけど、GW中にようやくその機会が訪れました。

 

晴天にも恵まれ文字通り視界良好。いや~その効果は絶大です、って審判ぶりが上手くなったかどうかは別にしてはっきりと見えるというのは自信にもつながります。特に選手番号が離れていてもくっきりと見えると個々の選手の区別も容易で、いいこと尽くしです。シニアの審判仲間とも愚痴ったのですけどナイターなんかの場合は乱視+老眼の身には厳しい視認環境でした。もっと早くコンタクト作ればよかったな~(ただ装着はまだ手馴れてなくて時間+無駄にしたレンズがモッタイナイ状態です)。

 

さてデビュー戦では主審+副審を務めました。主審の時、ホールディングに対して2回ほど笛を吹きました。この時も体を押さえ付けた瞬間がはっきりと見えて、「スッキリ」?という感じです。

 

で、今回意識してチャレンジしたことは、よりよいポジションを求めての動きです。自分のことを棚に上げて他人の棚卸となりますけど、4級の方々を見ていて気になったことがいくつかあります。それは:

 

1)ボール(プレー)から遠い。

2)動き出しが遅い。

3)静止している。

 

の三つです。

 

今回特に自分も意識したのは「止まっている状態を作らない」ということです。もちろん人間は動いていない状況の方が安定した視力を得られます。ただプレーは常に動いているので主審が静止していることは必ずベストな視野や視角から(そしてもちろん視覚距離から)ズレが起こり得ることを意味します。なので最初のうちは1秒たりとも静止した状態を作らない(=常に動く)ことを実践してみてください。

 

もちろんそれは闇雲に走り回っているということではなく:

 

①ジョグ

②ウォーキング

③サイドステップ

 

を必ず織り交ぜるようにしてください。これで1段も2段もステップアップできますよ。もちろん「何を見るか」の目的が明確になっていることが1番重要であり動くことは主審にとっては目的ではなく手段に過ぎません。ただ、あまり最初は難しく考えず「常に動く」ことの実践です(そのスタミナは必須ですよ!)。

 

ちなみに動くときの意識付けとして重要なのが「角度」です。これ自分も課題なんですけど、プレーを監視するためのよりよい角度を求めて動くことです。競技者の重なりや串刺しになることでの死角をなるべく作らない(100%は無理でも)ようにしてみてください。

 

さて、ここで書かれていることを確かめるためにもJリーグなどでの主審の方々の動きをじっくり観察してみてください。とても参考になりますよ。

 

そしたら、あとはお互い実戦で切磋琢磨です。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

ボールボーイ(パーソン)に乱暴な行為をしたら・・・。

まずはこちらの公式動画をご覧ください。

 

千葉が高橋と指宿のゴールで徳島を下す【ハイライト:明治安田J2 第10節 千葉vs徳島:Jリーグ.jp

 

今回の場合実際の事象を正確にご理解いただくために、文章では事細かに再現いたしません。さて、この事象を目にした場合、もしあなたが主審ならどのような判断と対処をしますか?

 

「え~っと、どうしょうかなイエロー以上は確定のような、待てよ・・・カードの対象になるのか?この場合・・・う~ん口頭で注意もあり・・・?」なんてよもや迷ったりしないですよね。

 

実は偉そうに書いていますけど、私もこんな場面に主審として出くわしたら咄嗟に判断できないで「反スポ・・・かな?ということはイエロー・・・。」なんてやりそうです。いわゆる「困ったときの反スポーツ的行為」ってやつ?ですね。確かに反スポは広範囲な不正行為を網羅しておりますけど、それに対する懲戒処置は警告なわけです。では再度公式動画をご覧ください。これが警告で妥当な行為なのか。つまり徳島ヴォルティスの馬渡選手に試合に続けて参加することを認めていい行為なのか・・・?と考えれば、それはあり得ないですね。

 

正直に言ってこれを咄嗟に判断できない遠因は選手間での乱暴な行為ではないということもあるかもしれません。つまり競技者以外にこのような行為を犯すことに出くわすケースは、多くない(というか私は経験なしです)ということです。「選手が競技者以外に・・・えっーと」なんて考えるようでは審判失格。ここで、やはり役立つのは競技規則の文言をちゃんと咀嚼して覚えておくということではないでしょうか。

 

公式発表はまだのようですけど、今回の馬渡選手の退場理由は「乱暴な行為を犯す」となります。

 

この「乱暴」っていう言葉が曲者でどの程度なら乱暴かって話にも成りえます。なので具体的に咀嚼しておく必要があります。とまた偉そうに語ってますけど今回のケースがあるまではわたしも次の競技規則にある文言をちゃんと読んで覚えておりませんでした。

 

乱暴な行為

乱暴な行為とは、身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールに挑んでいない ときに相手競技者に対して、あるいは、味方競技者、チーム役員、審判員、観客またはその他の者に対して過剰な力を用いたり粗暴な行為を行う、または、行おうとすることで ある。 加えて、競技者がボールに挑んでいないとき、意図的に相手競技者やその他の者に対し て頭や顔を手や腕で打つ場合、その力が微小なものでない限り、乱暴な行為を犯したこ とになる。

(下線筆者)

 

このように競技規則上では:

ボールパーソン=その他の者

馬渡選手の行為 = 粗暴な行為 (ちなみに英語では乱暴な行為はviolent conduct、粗暴な行為は brutality となります)

ということですね。

 

この「その他の者」とか「粗暴な行為」って言葉を覚えているだけで事象に対して的確かつ迅速な判断が出来るように思います。ただその場に突然出くわしたら・・・。

 

ちなみに競技規則英語版にあるbrutality って言葉を辞書にあるような「残忍な行為」とか「蛮行」って日本語ではなく「粗暴な行為」とした日本語訳はナイス!でございます。

 

言葉ってやはり重要だよな~と思っていたら複数の報道では馬渡選手の退場理由が「非紳士的行為」って書かれていますけど、競技規則にはそのような文言も退場理由もございません。(例えば女性の試合を考えただけで、この言葉の奇妙さに気付くはず)。蛇足ながら紳士的って言葉は「紳士らしく、上品で礼儀正しいさま。また、相手との相互信頼を前提にして行為すること。」と辞書では定義されていますけど、徳島ヴォルティスの馬渡選手の行為は「そのようなふるまいではなかった」の範疇をはるかに超えた不正行為です。

 

今回の場合、馬渡選手はボールをボールパーソンの方に投げ返している(突き返している)ようなので以下の競技規則も頭に浮かびます。

 

物(またはボール)を投げる反則

ボールがインプレー中、競技者、交代要員、交代して退いた競技者が物(ボールを含む) を相手競技者やその他の者に対して投げつけた場合、主審はプレーを停止し、次の処置 を取らなければならない:

•  無謀な場合:反スポーツ的行為として警告する。

•  過剰な力を用いた場合:乱暴な行為として退場を命じる。

 

この条文に引っ張られて考え過ぎない・・・というか、一連の事象を見極めて判断して的確な懲戒処置をとる必要がありますね。

 

それにしても馬渡選手、乱暴な行為を犯したあと主審に対してボールパーソン(の方向と思われる)を指さしながら何か言っているようですけど、プロとして感情をコントロール出来なかった自らの非を即座に認めて欲しかったですね(コノヨウナ ソブリハ カッコワルイ ミットモナイ)。

 

あと徳島ヴォルティスのサポーターが試合後にボールパーソンに水をかけるという事態も発生したようで、残念としかいいようがありません。主審が試合前の点検でフィールドに入ったときから試合終了後にフィールドを離れる前にこのような行為が競技者、交代要員、または交代して退いた競技者によって行われたら即レッドですね(ベンチ役員なら退席)。

 

いずれにしても後味悪し。ボールパーソンが遅延したなんて言い分で馬渡選手の行為が情状酌量になるものでもないです。鈍感なオッサンの私でも好きなサッカーでこのような目に遭ったらトラウマになります。十分なケアが彼に与えられることが審判員としての私からのお願いでもあります。

 

では、I'll be back.

 

追記:自分で「言葉ってやはり重要だよな~」といいながら最初記事中で「ボールボーイ」という表記を(違和感持ちながら)使っておりました。自省と共に「ボールパーソン」という表記に訂正させて頂きます。また徳島ヴォルティスの公式謝罪文によると試合後別のボールパーソンに向けてスタンドからかけられたのは「アルコールと思われる液体」とのことです。