ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

試合を。プロデュース。もしくは。いきなりステージ。(後編)

さて第四の審判員です。

 

皆さんがこの記事に興味を待たれるとしたら「今度、第四の審判員やるのだけど何やったらいいの?具体的にどのようにやったらいいの?」っていう動機からかもしれませんね。もちろん、その疑問にお答えすべく具体的かつ実践的なことを記したいと思います。ただやはり第四の審判員も「経験と意識」がものを言います。つまり「やってみて分かる。やる気になって分かる。」ってことです。

 

さてここで第四の審判員に以下のような様々な定義を与えてみたいと思います。

 

a) 何をやっていいのか(やっているのか)分からない人

b) 傍観者・部外者

c) 審判員のひとり

d) 怒られ役

e) マネージャー

f) 小姑

g) 総合プロデューサー

h) 主審や副審になる人

 

a)~c)の場合:

もしあなたが経験も意識もないまま第四の審判員を務めようとしたらa)の人となるでしょう。また交代の手続きやアディショナルタイムの表示やボールの交換以外は椅子に座ったまま試合を観ていたら b)の人としてインストラクターからお叱りのお言葉を頂戴することとなるでしょう。c)であるなら審判チームの打ち合わせにも参加しますし、審判服を着用していなければなりませんし、キックオフ前の挨拶にも参加します。でも実際は4種の試合などでは大会運営本部のスタッフと第四の審判員の境目は曖昧なのではないでしょうか?

 

d)~f)の場合:

協会で割り当てられた試合で第四の審判員を務める場合(で、ほとんど全ての場合第四の審判員がいる試合とは自分より上級もしくは経験やスキルが上の方と審判チームを組む状況でしょう)自分の経験や意識が足りない場合主審や副審の方から未熟さを指摘され怒られることがあるかもしれません。そういう意味でもd)の場合は貴重な機会となるので学びも多いです。e)はある意味そんな自分の役割を意識してフィールドの中を走る競技者としての審判員を支える存在ともいえるでしょう(第四の審判員=走らない人、ただしh)の場合を除いて)。f)は逆に自分より「格上」の方が第四の審判員となった場合、まるでインストラクターから主審や副審ぶりを観察されているかのごとく「ご指導」を頂くケースのこと(これはこれで、貴重な学びの機会)。

 

g)やh)の場合:

g)は理想の第四の審判員像を表しているつもりです。審判員チームはもちろん、運営本部スタッフ、選手、チーム役員と連動しながら円滑な試合運営を行う、またはすべての関係者のパフォーマンスを最大限引き出す役割ということです。なので俯瞰的視野を持ちながら全体を把握するのと同時に、細かな動きや流れに常に意識を向けておく必要があります。舞台の上の「役者」をサポートしながら各スタッフをある意味「指揮」する立場でもあるわけです。h)はそんな「裏方」が代役で舞台の上に突如立つということです。まさに前編でご紹介した第4の審判員のジョナサン・モスさんが 主審のロバート・マドレーさんと交代したように。

 

さてでは経験的実践的な第四の審判員の「やるべきこと」についてです。

総合プロデューサーという立場を意識しながら読んでみて下さい。

 

発揮すべき二つの力=察知力と抑止力

 

前提要件=事前の役割確認および情報把握

 

頻度の高い任務:

1)交代の手続き

2)ボール交換

3)フィールド外のコントロール

4)アディショナルタイムの表示伝達

5)記録

 

まず最初にお断りしておきますと、これから書くことはすべて私の経験と思い付きをまとめたもので体系化された第四の審判員の役割とかではないということです。「もれなくダブりなく」とまではなっておりません。悪しからず。

 

さてまず冒頭に書いた「力」については最後に触れさせていただきます。で、「前提要件」について簡単に。

 

ここでいう前提要件とは第四の審判員として試合で実務にとりかかるまえにやっておくべきことということです。試合前のマッチコーディネーションミーティング(MCM)がある場合はここで関係者と確認を行います。それでもMCMに全関係者が出席しているわけでもないですし、そもそもMCMがない試合の方が多かったりしますのでその場合は第四の審判員自らが運営本部スタッフとの役割分担や「やって欲しいこと&やって欲しくないこと」を明確に伝えておきます。これらについては次の「頻度の高い任務」で詳しく書きますね。

 

2点目の前提要件である「情報把握」は言うまでもなく大会要項の確認を中心とした知っておくべきことの把握です。で、必ず必要なことはチームリスト(登録メンバー表)に記載されている競技者(先発メンバー)と交代要員(サブ)の確認と転記です。まずメンバー表に「おかしな」ところがないか大まかにチェックします。登録された交代要員の数は最大数まで記載されているのに先発メンバーは10名になっているとか、GKが二人先発メンバーになっているとか(逆にGKが登録されてないとか)、同じ番号の選手が二人いるとか等などです。

 

個人情報に紐づいた背番号制はネガティブな文脈で語られることが多いですけど、サッカーにおいてはまさに番号が個人を特定する大切な情報であり手段なわけなのでこの番号を如何に正確かつスムーズにインプットしたりアウトプットしたり出来るのかが第四の審判員の実務の巧拙に関わってきます。

 

ではいよいよ「頻度の高い実務」について。

 

1)交代の手続き:

第四の審判員として試合中に一番注目されるのは「交代の手続き」を行っている時になるでしょう。ここではまず「致命的な」間違いを起こさないことに留意。例えば競技会規定に定められている交代の数を超えて交代を行ってしまったとか、絶対にフィールドに入れてはならない選手(=再出場が認めれていない試合での交代して退いた競技者。または退場させられた競技者。もしくはチームリストに記載されていない競技者。)を入れてしまったなどです。ではここから交代の手続きを時系列に箇条書きします。

 

 ①察知する=試合中は常に両ベンチの動きに注意を払い続け交代の「兆候」を察知する。交代の準備に入った選手はベンチから出る前に特定(推測)できるので番号を目視し提出されたチームリストにある交代要員の番号と事前に仮の照らし合わせを行う。

 ②照会する=交代の要請が行われたら事前の役割分担に沿って選手の確認を行う。例えば写真付き選手証と交代しようとする選手との照会を本部が行う(ために選手を本部に誘導する)。第四の審判員はINする競技者とOUTする競技者(の番号)が記された交代カードにある情報(番号)とチームリストにある番号とを照らし合わせる。そして選手のユニフォームにある番号と交代カードの番号を最終確認する。

 ③チェックする=用具の確認。これが終わっていないのに主審に交代のシグナルを送ってはならない。

 ④表示する=実はこの交代ボードの表示が一番手間がかかりプレッシャーがかかったりするのであります。通常我々が担当する試合で使用する交代ボードは手動式で1~9の数字を作成するものです。黄色など1色でしか数字を表示できないのでこの場合OUTになる競技者の番号のみを表示することになります(コレヲ、マチガエルト、コウタイガススマナクナル)。この番号表示の準備に手間取っていると第四の審判員が交代を遅らせているとなりかねないので手早くやる必要があるわけです。交代が片方のチームから一人だけならまだしも、同時に複数の選手の交代が要請されたり、両方のチームから交代が要請されたら・・・パニックになってはなりませんね。

 ⑤シグナルを送る=④の表示がすでに主審に対する交代のシグナルとなります。交代ボードを持って交代する選手を連れてハーフウェーラインのA1の動きの妨げにならない位置でアウトオブプレーになるのを待ちます。この時重要なことは「交代はなによりも優先される」の原則に沿っていかなるアウトオブプレーの状況でも第四の審判員は交代ボードを掲げます(もしくは主審に声をかける)。「ここはクイックリスタートになりそうだな」と忖度して交代のシグナルを出すことを留保してはなりません。

 ⑥入れ替える=OUTの選手の番号を表示する前後から実際に交代が行われるまでの間にOUTになる選手がフィールドのどこにいるかが把握できていれば上出来です。必ずしもフィールドの中にいない(負傷などですでに出ているケースもある)かもしれませんし、必ずしも本部側のハーフーウェーライン付近からOUTの選手がフィールドの外に出るとは限りません。とにかく複数のパターンを念頭に置くべきですね(私自身、主審の承認を得て反対側のタッチラインから外に出た選手に気付かず、フィールドの中に入ろうとした選手に「待て」の指示を出したこともあります)。いずれにしろ状況の正確かつ素早い把握と主審との連係プレーが大切なわけです。

 

 ⑦区別する=交代して終わりではなく交代して退いた選手がビブスなどを着用しているのか確認をします。そのままユニフォーム姿のままでいるなら注意を与えすぐに着用させます。

 

 上記が大きな交代の流れです。とにもかくにも察知するということが大切で、この任務などに限ると酒席でグラスのビールが少なくなったら注ぐとか、飲み物がなくなったらオーダーするとかの気配り上手の人が第四の審判員には適任だな~と毎度思ってしまいます。ちなみに私は全く気が利かない輩です。

 

2)ボール交換:

たとえマルチボールシステムでもボールは常に主審の管理下にあります。なのでボールの交換は常に主審の承認によって行われ交換の管理は第四の審判員によって行われます。マルチシステムではない無い場合がほとんどだと思いますので交換するボールは必ず第四の審判員以外のスタッフが勝手にフィールドに入れたり、近くでスローインになった場合に選手が勝手に交換用のボールを使わないようにコントロール化に置く必要があります(つまりは自分の手が届く範囲かつ他の人が手を出しにくいところに置いておくということです)。お気づきのように本部スタッフにはあくまでボールの交換は第四の審判員が行うことを事前に周知徹底しておきます。またボール交換の理由は欠陥が生じたからというようなことは稀で大抵はボールがすぐには取りに行けないところに行ってしまったことがほとんどですよね。だから第四の審判員はたとえ自分に近いタッチラインからボールがフィールドの外に出ても自分でボールを取りに行こうとしてはいけません。主審がボール交換のサインをしても交換用のボールから離れていては交換が出来なくなるからです(なので本部スタッフには第四の審判員は「玉拾い」はしないことを事前にこれまた周知しておきます)。

 

このボール交換も察知力です。ボーっとしていると第四の審判員が時間を浪費することになります。かと言って主審のサインがないのにベンチからの声でボールを交換するようなことを行ってはだめです。負けている側のチームは早めのリスタートを望んでいますのでボールがフィールドから離れたところでまで行ってしまった場合、時間帯によっては第四の審判員は交換用のボールを手にしていつでも主審のサインによってボールを供給できるようにポーズを作っておくこともベンチのフラストレーションを和らげることになることもあると思います。あとで書きますけどいわゆる「ベンチコントロール」というのは、言葉だけで行うのではないのですね。

 

3)フィールド外のコントロール

フィールドの内外にかかわらず試合に影響を及ぼすものすべては常に主審の管理・監視下にあります。その中で第四の審判員は特に「外」の管理をサポートします。

 

この「外」の管理対象を分かりやすく三つに分けます。

 i) テクニカルエリア内の戦術的指示者

 ii) テクニカルエリア内の交代要員およびチーム役員

 iii) アップエリア内の交代要員

 

まずテクニカルエリアとはベンチ(座席部分)も含む空間の総称であることを理解した上で原則的に交代時、アップ時、主審の承認時以外は交代要員およびチーム役員は常にこのテクニカルエリア内に留まっていなければならない存在であることを肝に銘じて下さい。逆に言えば第四の審判員はこのエリアの外に登録メンバーが勝手に出ないように管理する必要があるわけですね。では、管理対象について順番に何を管理するべきなのかを書きます。

 i) テクニカルエリア内の戦術的指示者:

 競技規則にあるように「その都度ただ一人の役員のみが戦略的指示を伝えることができる」わけなので二人以上の役員が指示を伝える状況は放置してはなりません。一番常に注意すべきは二人以上が立ち上がっている状況を作らないことです。重要なことは二人以上が立ち上がる前に「抑止」することです。試合中は常にテクニカルエリアに向けて:

1)目線を向ける→2)近づく→3)仕草(例えば手のひらを向けて「やめて下さい」の意思を伝える)4)言葉で注意→5)主審を呼ぶ(まあ、異議や暴言でない限りはいきなり5)とはなりませんけど)

の順番でいい意味でのプレッシャーをかけるのです。とにかく「ただ一人」の原則を守らせている状況を維持することで「規律」ある行動をベンチ役員にある程度守らせることができるわけなので、ここで手を抜かないようにしてください。ここでのキーワードはいきなり対峙して不要な軋轢を生まないように「友好的に抑止する」ということです。

 

異議以上に起こりえるのはこの指示者の人数とテクニカルエリアの外に出てしまうということなので、エリアの外に出ての指示とならないように第四の審判員は目を光らせていて下さいね。特にエリアはマーカーコーンで示されている場合には境界が目に見えていないので仮想のラインを念頭に戦略的指示者がわずかでも足を踏み出したなら1)~4)のステップでエリアの中に留まるようにマネジメントします。この点は試合中継続して規律を守ってもらうためには非常に重要で「まあ、いいか」ってことを繰り返していると抑止力を完全に失ってしまいます。

 

一方で柔軟性も失わないようにマネジメントしてみてください。チームによっては戦略的指示者は自陣でのコーナーキックの場合など担当(例えばGKコーチなど)が異なっていて、その場合一時的に二人の指示者が立ち上がっている状況が生まれます。この時今まで指示を出していた役員がベンチに戻ろうとしているなら着席するまで見守ります。この瞬間だけを捉えていきなり口頭で注意を浴びせると不要な反発を生んだり、肝心なときに(異議スレスレの発言時など)4)のステップに進んでも効力半減となりかねません。これも察知力のひとつかと思います。

 

ii) テクニカルエリア内の交代要員およびチーム役員:

交代要員はビブスを着ていますか?交代要員が戦略的指示を出していませんか?医療担当のチーム役員が主審の承認を受けてもないのにテクニカルエリアの外に出ていませんか?そして試合中は常に言動に注意を払い、主審に伝えるべき言動があった場合には誰が具体的にどのような発言や行動をしたのかを記録(記憶)します。この場合あくまでもファクト(事実)であって解釈と混同しないようにします。

 

iii) アップエリア内の交代要員

交代要員は大会規定で指定されているエリア内で規定された方法(=ボール使用の可否)でのみウォーミングアップすることを許されています。このアップエリアもマーカーコーンで示されていることが多く常に監視しておく必要があります。そして重要な任務としては交代要員はウォーミングアップをするためだけにテクニカルエリアの外に出ることを許されているわけでから、アップエリアからの応援、観戦は許されません。これらの事象があれば即刻ベンチ役員に止めさせるように指示します。この辺は第四の審判員のポジションから離れていて直接マネジメントすることが難しい場合もあるのでA1との連携プレーも大切かと思います。

 

さて監視対象ではないのですけど、「フィールド外のコントロール」の重要な項目としてぜひとも本部スタッフの動きにも注意してください。例えば担架は主審の承認があった場合にのみフィールドに入れます。医療担当役員の入場を認めた(シグナルを出した)だけなのに担架スタッフが自分たちで判断してフィールドに入るということがないように主審のシグナルを正確に本部スタッフに伝達する指揮者を務めることも第四の審判員には求められるのです。

 

4)アディショナルタイムの表示伝達:

 ①主審と事前にシグナルを確認(この時アディショナルがない、もしくは1分未満の場合のシグナルも忘れず確認する)。

 ②終了2分前頃(例えば45分ハーフなら43分ごろ)ハーフウェーラインに近づき主審からシグナルを受ける(=シグナルを同じシグナルで送り返してタイムを確認する)。

 ③その後すかさず主審からシグナルされた時間を表示したボードを用意しハーフウェーラインに近づき正面腰の高さでボードを表示し主審と表示時間に間違いないか最終確認する。

 ④45分近くになったらハーフウェーラインに近づき位置し45分と同時に表示ボードを掲げる。

 ⑤この時交代の要請と重なったら、もちろん交代を優先する。交代手続き完了後に口頭でチーム役員にアディショナルタイムを伝える(原則負けているチームから)。

 

5)記録:

必ず普段の記録用紙とは別に「第四の審判員 記録用紙」を持参しすべての記録をとります。用紙はネットで検索すればダウンロードできます。記録用紙とは別に競技者、交代要員、チーム役員の言動を記録するための用紙もあっていいと思います。また交代カードがバラバラにならないようにクリップなども使用して管理するようにします。

雨天時には防水対策を怠ると後々困ってしまうので色々と工夫してみて下さい。

 

以上が「頻度の高い任務」となります。もちろんこれで全てではありません。

 

ここまでお読みいただけたなら冒頭の「発揮すべき二つの力=察知力と抑止力」については特に説明しなくてもお分かりいただけるかなと思います。

 

今回の記事で少なくとも第四の審判員は座っているだけの人でないことはお分かりいただけたかと思います。というか、ある意味気を抜く暇はありません。そんな役割の中で第四の審判員を務める醍醐味は自分より格上の審判員の方の審判ぶりを審判チーム内にいながらより俯瞰的な広い視野で観察できることや、通常なら審判を務められないより上のレベルの試合を担当できることでもあります。そして次回、第四の審判員になったら自分が主審になった気持ちですべてのプレーをジャッジしてみてください。実際本部前で起こりそうなファウルやタッチラインジャッジのアシストを求められる場合もあります。

また主審の代役でいきなりステージ、ということになれば今までの主審の判定との整合性(一貫性)も求められるという難題にも直面します。ジョナサン・モスさんのようにいきなり主審となったら審判業務のフルメニューですね。

 

如何でしょうか?第四の審判員のイメージが変わりましたか?ぜひとも私が気づいていないことや経験していないことなど多くのアドバイスを頂ければ幸いです。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合を。プロデュース。もしくは。いきなりステージ。(前編)

今週末も審判業務に従事。笛を吹かなきゃいけないところで吹けなかったことで反省。「苦手」なファウルっていうのがあるんですね。次回以降この辺のことを記事にしたいと思います。

 

さて、先日偶然録画で観たプレミアリーグのストークVSレスターシティ戦で珍しいことがありました。岡崎選手がシュートできずキーパーのレイトチャージ(ただしボールはすでにアウトオブプレーか?)となるスライディングタックルを足に受け痛んでいたら主審が痛そうに立ち上がっている岡崎選手になにやらしきりに話しかけています。「痛んでるフリするなよ。」って言っているのかと思いきや、実はなぜか主審のロバート・マドレーさんの方がこの時足を痛めてしまっていたようなんです。

 

で、第4の審判員のジョナサン・モスさんと交代。このとき映像を見ているとマドレー主審からモス審判員へ笛が受け渡されているように見えました。試合中に笛の音色を変えないというのは原則なのでその辺を配慮したプロセスかも知れませんね。

 

さていきなり主審となったモスさん、最初の内は判定に戸惑いがあるようにも見受けられました。いきなりの交代だもんな~。

 

さてこのような交代が起こる確率は低いかもしれませんけど第4の審判員はあらゆる状況に対応できるように常に準備しておく必要があります。やはり経験がものを言うのは事実ではありますけど、そんなに頻度高く第4の審判員を務める機会もないと思いますのでいくつか参考にしていただきたいことを次回書いてみたいと思います。

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

ファウル = 「ズルい&危ないプレー」のズルい方について

 前回から1か月以上経ってしまいました。最近は割と密度濃く実践の日々が続き、週末は忙しくしておりました。

 

そんな中久しぶりに自チームに帯同して4種での試合の副審を務め他チームの方の主審(3級の方も4級の方もいらっしゃいました)ぶりを偉そうに観察させて頂く機会がありました。試合終了後にはこれまた偉そうに気付いた点をコメントさせて頂いたりして・・・ほんと偉そうに・・・です。

 

コメントさせて頂いたことのなかでカードを出すべきファウルで出せていなかったプレーが二つあり、そのうちの一つは私がファウルサポートさせて頂いたのでカード(警告)のシグナルを出したのですけど・・・主審の方は出さずじまいでした。う~ん試合前にシグナルの打ち合わせしてなかったからな~と思いつつ(3級以上の方なら打ち合わせなしにわかるシグナルなんですけど)、ふと試合後考えてみると主審は出さなかったのではなく、「出せなかった」のではと思い至った次第です。つまりカードを携帯してなかったのでは、ということです(ドウモヨウスガ、オカシイト、オモッタ)。

 

さてこのようなカードの対象となるファウルは見落としがなされない、つまりプレーとして明らかに「無謀」であり「過剰な力」ということが誰から見ても明らかな場合がほとんどですね(「ラフプレー」以外の「反スポ」等必ずしもすべてのプレーがそうでないにしても)。

 

一方で主審がしっかりと見極めないと事象として周囲からは分かり辛いファウルがあります。こちらは得てして「ズルい」という性格を帯びています。

 

「ズルい」プレーの定義は以前書いたように思いますけど、再度書くと「フェアな競り合いの魅力を失わせるようなプレー」です。まあ、ずいぶん感覚的な定義です。もちろん競技規則にはこのような定義はありませんので、「不用意に」行われた、もしくは相手を押さえているなどファウルの要件に照らし合わせて判断するという建前ではあります。でも毎度のことながら「不用意に」だけではあまりに不明瞭なので、ひとつの判断基準としての「ズルさ」を持ち出しているわけです。

 

このズルいプレーを体系的にまとめるのは私の力量と経験値では無理なので以下に最近の事象から思いつくまま挙げておきますね。

 

①ズルいのその1

まずはゴールキックとかスローインとかの競り合いの時。ボールが落下してくる前に、後ろとか横とかさりげなく相手選手を押して、競り合い自体をさせないよういしてませんか、それ。それはズルい。このようなプレーは「つい、つい」というより間違いなく確信犯です。ピー。このプレーは上空にある、もしくは落下してくるボールを目で追っているようじゃ分かりませんよ。

 

②ズルいのその2

FWの選手とDFの選手の競り合い。FWの選手が相手のユニフォームをもしくは肩をグッとつかんで素早く身体を入れ替えてませんか、それ。それズルいですよ。ゴールに近づいているFWの選手がそれを行ってシュート決めて主審の笛が鳴らなかったら大問題。このような場合は主審は両方の選手の手の動きが見極められるようなポジションをとるべきです。真後ろからでは串刺しになって隠れて動かそうとしているズルい手が見えません。

 

③ズルいのその3

FWの選手、クサビとなってDFの選手を背中にしてボールを受けてキープ。なんの問題もないようでいて・・・これまた後ろ手でDFの選手の身体を押さえているもしくはユニフォームを掴んでいませんか、それ。これまた常習犯の疑い濃厚です。ただこの場合は、攻撃側守備側両選手の動きを見極めて笛を吹く必要があります。どちらが最初にズルいプレーを始めたのか見極めないと、不満を生む判定になってしまいますから。

 

あれ?もっとあったような・・・「ズルい」プレー。記憶力が・・・。とにかく実践の中で引き出しを増やすことが大切かと(ゴマカシテイル)。

 

今度の試合では「ズルさ」の観点で判定を行ってみて下さい。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

「すっぽ抜けた」スローイン。その再開方法。

2年以上前にスローインの違反(「反則」ではない。実はここが重要なポイントです!)に関連して以下の競技規則について書いた記事を再び載せておきます(その記事はこちら → 『 「世界は我が表象である」けれど、勝手流はダメ~よダメダメ。 』)

(関係ない話が本題に入る前にいつもようにダラダラと続きます。ご容赦くださいませ。)

 

第15 条 スローイン
進め方 ― 違反
ボールがフィールドに入る前にグラウンドに触れた場合、スローインが正しい進め方で行われたのであれば、再び同じ地点から同じチームにより行われる。スローインが正しい進め方で行われなかった場合、相手チームがスローインを再び行う。

 

以上は当時の2014/2015年版の競技規則の表記で「競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン」に載っています。2017/2018年版では以下の表記に変わっておりますのでご一読さい。

 

第15条 スローイン

1.進め方

 

ボールは、フィールドに入ったときにインプレーとなる。ボールがフィールドに入る前にグラウンドに触れた場合、同じ地点から同じチームによるスローインが再び行われる。スローインが正しく行われなかった場合、相手チームがスローインを行う。

 

要は「フィールドに入る」=「インプレーになる」なんですけど、「インプレーになるならないにかかわらず手順が誤っていたら相手チームのスローインで再開」というわけです。

 

2017/2018年版の和訳の方が優れていると思いますけど、案外見落とされている規則ではないかと思います。

 

では、I'll be back.

 

 

 

会場入りしてからキックオフまでの準備についての一考察

自チームの帯同にしろ協会から割当てにしろ審判員を務める場合は主審、副審が試合前に対面し挨拶をする、というのが通過儀礼のように思います(この時初対面なのか顔見知りなのかで会話内容やお互いの接触態度も違うでしょう)。

 

さて、この対面するタイミングはケースによってかなり異なるのが普通。4種の帯同ですとまさにキックオフの15~10分前(直前なんてこともあるでしょうね)、協会の割当てですと2~1.5時間前とかずいぶん状況が違う。

 

こういう異なる状況の中で試合前の打ち合わせとか準備とかの項目を挙げてみても、実際に出来る打ち合わせや準備は常に同じというわけにはいきませんよね。ましてや各審判員の経験値や技術レベルやモチベーションが異なる場合、それに応じた打ち合わせなり準備プロセスを経ないと現実的でなくなります。

 

そもそも「サッカー審判員は試合前になんの打ち合わせをすべきなのか?」と思って調べたり質問したりするのはその必要性を感じたからであって、打ち合わせしてもしなくても同じであれば「何をすべきか?」なんて疑問も生まれないかもです。しかし一方でインストラクターの方々から「審判員同士(チーム)でどのような打ち合わせ(準備)をしましたか?」と尋ねられて「ああ、打ち合わせって必要なんだな~」と思いつつもそれはなぜか?ということが分からないまま「打ち合わせってなにするの?」って疑問をもたれている方もいるかもです。かくいう私も3級審判員になってなければ打ち合わせ(準備)なんて行っていなかったでしょうね。

 

今回、試合前の審判団の打ち合わせ&準備の必要性は:

 

「審判員のパフォーマンスを最大限発揮するため(=試合を円滑にすすめ選手のパフォーマンスを最大限発揮できる環境を整える)」

 

である、とだけ書いておきましょう。

 

これ以上は皆さまが実際に経験を積まれてその必要性を身をもって知る以外はないので、具体的な打ち合わせや準備項目を挙げたとしても状況によってそれらの内容も異なるので今回は触れずに記事を終了します・・・ではあんまりなので多少思いついたことを書いてみますね。

 

まず打ち合わせも含め準備と定義しましょう。準備をすれば「バタバタしたり不安になったりしない」ということかと思います。つまり審判員によるミスや確認不足による「事故」を未然に防ぎ余裕をもって審判業務にあたれるというわけです。

 

繰り返しになりますけど経験を積めば何の(なぜ)準備をすべきかも分かってきますし準備自体もスムーズに行えるようになります。ただ実際は3級審判員同士もしくは2級の方と組む場合でも、とても綿密に準備される主審の方と割とざっくりと準備される方の大まかに二通りの方がいらしゃいます(通常会場入りしてからの準備は主審のリーダーシップのもと行います)。なのでいずれの場合(たとえ自分が副審担当でも)ひとつの目安として以下の3点を押さえておきましょう。

 

①キックオフから逆算した時間割の作成

②審判員同士、運営本部、ベンチ役員、選手との確認

③フィールドの点検、ユニフォームの確認、試合球の準備、チームリストの確認&審判記録用紙への記入

 

細かく言えば多々、準備項目はあるのですけどまずは上記3点を常に念頭に準備に臨んでみてください。

 

ではまずは①から。

 

キックオフの時間を知らないなんて審判員の方はいないはずなので、その時間を起点としてスケジュールを分単位で設定します。例えば:

 

1)会場入り:2~1.5時間前

2)運営役員の方々への挨拶 : 会場入り直後

3)マッチミーティング:70~60分前

4)審判団の打ち合わせ:マッチミーティング直後(もしくはその前)またはキックオフ30分前

5)スタメン選手集合:7~5分前

 

というような感じです。

 

3)のマッチミーティングの時間は審判員ではなく運営本部により会場入り前から設定されているはずです。なので逆にこのマッチミーティングがない場合には運営本部やベンチ役員と確認するタイミングを審判団で設定しておきましょうということです。

 

で②は上記の時間割で言えば3)のマッチミーティングおよび4)で行いさらに5)でのメンバーチェック、用具チェック時において確認のためのコミュニケーションを図ります。

 

マッチミーティングを行う試合は4種などではほとんどないと思います。そこで何を行うかは一度御経験いただくのが何よりです。ただ、ひとつ言えることは「知ったかぶり&分かったつもり」をしないということです。大会規定、適用すべき競技規則のバージョン、ベンチ入り人数、交代要員の数と実際の交代回数、飲水タイムもしくはクーリングブレークの有無や方法、ウォームアップの場所やボール使用可否、退場や退席の場合の「移動エリア」の確認等々です。あとユニフォームの色の重なりなど少しでも不安要因があるのであれば審判団の要望を明確に伝えましょう。

 

次に③です。ここでのキーワードは「早め早め」です。これらの準備が選手集合直前とか集合してからになると全く余裕がなくなり審判団、チーム役員、選手、運営本部全ての立場の関係者の大きなストレスにもなります。できれば3)のマッチミーティングと同じタイミング(逆算時間)で試合球の気圧確認と調整、メンバー表の確認と記録用紙への記入、そしてユニフォームの確認と必要に応じてのサブユニフォームへの切り替え要請等は完了しておきましょう。

 

審判団の打ち合わせ内容は多々ありますけど、自分の実感としてゴール時やオフサイドの判定やシグナルについてなど通り一遍の確認はしていたのに肝心の確認が抜け落ちていて試合中に密かに焦る・・・なんてことがたまにあります。例えばアディショナルタイムの主審からのシグナル方法とかベンチへの伝達方法または交代時の選手確認および用具チェックの分担とか(すべての試合に第4審判員や手馴れた運営本部の方々がいるわけではない!)等です。なので自分が副審の場合でも主審を「たてつつ」自分が主審を担当する気持ちで上手くリーダーシップを発揮してみて下さい。

 

やはり最終的には経験の中で蓄積していくしかないですね。まあ、よりよく蓄積していく(=知見を網羅的に体系づけしていく)ためのちょっとしたヒントになればと思い書いてみました。ぜひ皆様の準備の方法やお考えを共有いただければ幸いです。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールになってもキッカーにキックのやり直しの機会を与えてはならないケース(ただし「例外」あり)。

 久しく記事更新から遠ざかっておりましたけど、その間実践に励んでおりました。やはり夏場とくに今年のようにさらに過酷になったと思える湿度と気温の中での審判業務だと疲労が中々抜けきりません(単に歳ということか)。

 

さてそうこうしているうちに2016/17の競技規則改正を全てカバーする間もなく2017/18の競技規則改正がやってまいりました。改正点を全て記事化していたら、またまたあっという間に1年が過ぎてしまいそうです。

 

なので自分が気になった点というか直接得点結果に影響がある項目をまずは取り上げます。改正点を明確にするために3年分の競技規則の同項目を併記しようと思いましたけど・・・長ったらしい&余計に分かり辛くなりそうなのでやめ。実は改正点と言えど規則そのものは何も変わっていないので要約すると:

 

「ペナルティー(マークからの)キック時に警告に値する(=不正な)フェイントを行ったキッカーには、ゴールもしくはノーゴールの結果にかかわらずキックをやり直しさせる機会を与えない」

 

というものです。

 

これは2015/16版でも2016/17版でも2017/18版でも変わっていない規則なのです。ただ表記のされ方が大幅に変わり以上の規則がより明確にされた点に大きな意義があると思います。

 

つまり、2015/16版でも「競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン」においてキッカーが不正なフェイントを行った場合には反スポーツ的行為で警告されなければならないことは明確でした。一方でゴール結果との関係が明記されていなかったため(逆に言えば大半の再開方法はゴール結果とどちらの競技者の違反なのかの関係で説明されていたため)本当はいかなるキック結果の場合でも、即間接フリーキックでの再開となるべきなのにキッカーに再びキックの機会を与えるという間違った規則適用が起こる恐れがありました。

 

2016/17版では「ボールがゴールに入ったがどうかにかかわらず」という文言と共に:

●後方にけられる

●特定された以外の味方競技者がキックを行った

●不正なフェイントを行った

場合には間接フリーキックで再開されることが明確になりました。

またキックの結果による再開方法や処置の「要約表」も大変分かりやすくなりました。

(そもそも「例外」が複数存在するにもかかわらず、すべてを「ゴール」「ノーゴール」の結果とどちらの競技者の違反なのかで要約しようとしたのには無理があったような・・・。)

 

2017/18版において明確化という方向で同規則はさらに「進化」しました。それはペナルティーマークからのキックの場合においてキッカーが不正なフェイント等の反則を犯した場合について「キックは失敗として記録」と明記されたことです。(等と書いたのは例えば「大声を出してゴールキーパーを威嚇する・声で惑わせる」のように「助走完了後のフェイント」以外の反スポーツ的行為も含まれると解釈出来るからです。)

 

ペナルティーマークからのキックの場合、間接フリーキックでの再開というオプションはないため、規則を曖昧に理解しているとキックの結果がゴールであればキッカーにやり直しの機会を与える恐れがあったのではないのでしょうか?(私自身、このようなケースに直面したらイエローカードの提示は出来ても、やり直しの機会を与えていたかもです。)

 

というわけで:

 

サッカー競技規則 2017/18 

第10条 

3.ペナルティーマークからのキック

ペナルティーマークからのキックの進行中

● 主審がキックを行うよう合図した後に犯した反則でキッカーが罰せられる場合、そのキックは失敗として記録され、キッカーは警告される。

 

という表記は歓迎すべきものであります。

 

上記規則をちゃんと理解しておけば堂々とカード提示後、ノーゴールとの判定が出来ますね。いや~めでたしめでたし・・・と、ことが簡単には収まらないのが世の常。それは上記の規則の後に次のような文言が続いているからです。

 

  ゴールキーパーとキッカーの両方が同時に反則を犯した場合:

・   キックが失敗した、あるいは、セーブされた場合、そのキックはやり直しとなり、 両方の競技者は、警告される。

・   ボールがゴールに入った場合、得点は認められず、そのキックは失敗として記録 され、キッカーは、警告される。

 

同じくペナルティキックについても:

 

第14条 ペナルティキック

(中略)

競技者がより重大な反則(例えば不正なフェイント)を犯した場合を除き、両チームの競 技者が反則を犯した場合、キックが再び行われる。ただし、ゴールキーパーとキッカーが 同時に反則を犯した場合:

●ボールがゴールに入らなかった場合、キックをやり直し、両方の競技者は警告される。

●ボールがゴールに入った場合、得点は認められず、キッカーは警告され、守備側チー ムの間接フリーキックでプレーを再開する。

 

と新たに文言が加えられています。

 

そうなんです、これは最初に書いた今回の要点である「ペナルティー(マークからの)キック時に警告に値する(=不正な)フェイントを行ったキッカーには、ゴールもしくはノーゴールの結果にかかわらずキックをやり直しさせる機会を与えない」のまさに「例外」なんですね。不正なフェイントを行ったから無条件に再キックの機会を与えないというわけではないということです。う~ん、ややこしい。

 

では解説。上記のポイントは「同時反則」という条件にあります。ご存知のように同時に反則が起こった場合には「より重いものを罰する」という原則が適用されますので、例えば:

 

キッカーが不正なフェイントを行ったと同時に守備側競技者がインプレーになる前にペナルティーエリア内に侵入した場合には(ゴール、ノーゴールの結果にかかわらず)キッカーを警告したのちに間接フリーキックでの再開

 

となります。

 

この原則でいけば同じ重大さの反則が同時に起こればゴール、ノーゴールの結果にかかわらずキックはやり直しになります。つまり:

 

① ゴールキーパーがインプレーになる前にゴールライン上を飛び出したのと同時にキッカーが不正なフェイントを行いノーゴールになった場合、両競技者は反スポーツ的行為で警告され、キックはやり直しとなる。

 

一方で:

 

② ゴールキーパーがインプレーになる前にゴールライン上を飛び出したのと同時にキッカーが不正なフェイントを行いゴールになった場合、キッカーのみが反スポーツ的行為で警告され、キックのやり直しは行わない。

 

ということなわけです。

 

さてさて、これらの規則を「例外」と書いたのはあくまで不正なフェイントがキッカーによって行われたという視点からのことで、実は競技規則の原則とは一貫性が保たれているのです。

 

つまり①は同じ重さの反則が同時に起こったのでゴール、ノーゴールの結果に関わらずキックはやり直しになります。で、②は結局は「不正なフェイントの場合にはキックのやり直しは行わない」と同じことであり、実はこれも「より重い反則を罰する」の原則に基づいている条項なのです。

 

②の解釈が多少ややこしい。つまりゴールキーパーは反則は犯しているものの、ゴールになっているので「警告の対象になる反則」にはなっていない。一方不正なフェイントは常にその行為自体で警告の対象なのでキッカーは「より重い反則を罰する」の原則から警告されペナルティーキックの場合は間接フリーキックでの再開、ペナルティーマークからのキックの場合は失敗として記録されるわけです。

 

この条項を曖昧に理解していると主審は「火傷」しますね。例えばキッカーが不正なフェイントを行ったと同時にゴールーキーパーがインプレーになる前にゴールラインを離れたので、その事象をもってキックされたボールが大きくゴールを逸れたにもかかわらずキックのやり直しを命じるのは規則の適用を誤っていることになります。そもそも助走を終了したのち一度ボールを蹴るフリをして、キックした場合にはゴールキーパーがフェイントにつられてインプレーになる前にゴールラインを離れることが大いに考えられます。その事象をもってしてボールをセーブしたゴールキーパーも反則を犯したと判定することは公平性に欠けています。競技規則を理解しつつも、結局は何が選手もベンチ役員も納得できる判定であるかを常に意識すべきかと思います。

 

「策士策に溺れる」であってはなりませんね。

 

そもそも上記のようにペナルティー(マークからの)キック時に警告となる反則が同時に起こることは稀です。なので本当に上記の規則を適用すべき「例外」事象なのかを正確に見極めないと選手にもベンチ役員にも「?」な判定になります。一方で稀であっても起こるべくして起こったら毅然と迷いなく判定を下す必要があります。

 

というわけで、今一度皆さま自身で2017/18競技規則を紐解いていただきご意見等頂けますと嬉しい限りでございます。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私論カテゴリー別サッカー審判法 傾向と対策

先月、今月と実戦の機会が多くあり、やはりあーだこーだと理屈をこねたり言葉を連ねるより1回の笛、1回の旗の経験から得られるものは多ございますと再認識した次第。

 

とは言いつつも今回も、またまた理屈をこね言葉を連ねてみます。

 

さてファウルをどうやって見極めるのか、そもそも何を監視すべきかという問題が常に審判員にはつきまとう(というかそれこそ頭では分かっているけど出来ないという問題な)わけです。

 

ここでまずひとつのヒントとして審判員の立場から見たカテゴリー別の(ファウルに限らず)傾向を書き出してみたいと思います。でもこれはあくまで私の限られた試合経験の中でのインプレッションに過ぎません。ですので皆さんなりのカテゴリー別の印象を思い出されながら「ちょっと違うなあ~」とか気楽にご批評ください。逆に言えば様々なカテゴリーを経験することは引き出しも増え、気付きも多く、自信にもつながるということです。*ここでいう「カテゴリー」とは競技種別のことです。

 

まず4種。

U12とかU10とかU8とかカテゴライズされますけど分かりやすく学年で言えば小学生ということになります。成長曲線の傾斜が一番急なカテゴリーなので(=1~2年差で体力やスキルや知識や精神力がかなり異なる年代である)独断と偏見で3つに区分します。

 

1.小学校1~2年生

1年間で子供は競技者としてずいぶんと成長するにもかかわらず、ここではその差を無視して乱暴にひとくくりにしています。この学年は普段あまり運動されないお父さんお母さん審判の方々にも体力的に「優しい」カテゴリーです。それなら審判デビューはこの年代からかというと、実はあまりお勧めできません。なぜなら「え~そんなことするの」という予期しない展開や行動を子供たちがとり、競技規則をよく理解していないと適切な対応が出来なくなる可能性があるからです。また子供たちが勝手な解釈や判断でリスタートの方法や判定結果を間違えたりすることもあるので、手短な分かりやすい言葉で指示を出して細かくマネジメントすることも時には求められます。 オフサイドラインは「線」にはならず、誰が最後から2番目の選手なのか目の前の映像を素直に捉えることも求められます。上級審判員でも勉強になるカテゴリーです。

 

2.小学校3~4年生

主審や副審などお父さんお母さん審判員がデビューされるにはちょうどいいカテゴリーのように思います。ただ久しく担当していないので、この辺の私の感覚はズレているかもしれませんけど・・・。ちなみにこのカテゴリーまでなら副審はほぼ全てサイドステップでフィールドに向かって正対したままオフサイドラインをキープできるようにしましょう。

 

3.小学校5~6年生

Jリーガーのふるまいも真似ます。異議だって言います。個々人の主張がプレーにも言動にも明確に表れます。主審として下手なポジションなんかとろうものなら「邪魔だよ!」なんて言われます。ファウルをとれていないとハーフタイムにベンチへ引き上げる選手から「XX番のファウル見ててくださいよ」なんて言われます。ベンチも黙ってないです(チームの「社風」によりますけど)。卒業が間近な場合「思いも」増しますのでひとつひとつの決定に対して応援団のボルテージも上がります。ただ体力的にはハーフは通常20分の試合時間40分なので、スタミナ切れなんて許されません。副審もよほどのトップスピードでない限りできるだけフィールドに正対してサイドステップ。競技者、ベンチ役員、観客からの精神的なプレッシャーも、このカテゴリーでは涼しい表情で受け止めましょう。一方で体格、体力、気力とも小学生の中で一番充実する時期なのでラフプレーなどによる警告また過剰な力や著しく不正なファウルによる退場も常に視野に入れておきましょう。

 

4種全般に言えることですけど、戦術理解や技術の未熟さからプレーの展開が予測できない部分があり、審判としての動きやポジションの取り方が3種以上のカテゴリーより逆に難しいということがあり得ます。この辺は主審のトレーニングとしては適切な負荷がかかり、いいかもしれませんけど。

 

次に3種。

 

これも細分化できないわけではないのですけど、ざっくり言うと中学生、U15ということです。このあたりからチームの指導方針(もしくは技術)、戦術、カラー等々によってかなりチーム間の実力差や個性が顕著になってきます。逆を言えば審判員としては上記のような各チームの傾向を事前にインプットしておくことはジャッジングやマネジメントの助けにもなるということです。

中学の3年間もまた成長率の著しいステージでもあるので例えばU13ですとリーグや試合の都合上、一人審判員なんてシステムもあったりします(これは避けたいですね)。3年生になると体力的にも技術的にももう小学生の延長ではありません(場合によっては飛び級で上のカテゴリーでプレーする選手もいますよね)。ただ一般的には中学生と高校生の間には高い段差があり、やっはり競技者としての体力的精神的タフさは高校生になってグッと鍛えられるように思います。

 

さて4種と比較した場合の違いはまず試合時間とフィールドの広さに現れます。

 

U15の試合時間は35分ハーフの70分とか40分ハーフの80分が標準だと思います。普段どのカテゴリーを中心に審判業務を行っているのかでこの試合時間を「長い」と思うか「短い」と思うかの体感が変わってくると思います。またフィールドの広さで言えば大会によっては2種や1種の試合で使用するスタジアムや競技場をそのまま使用することもあるわけで、審判員としての走行距離や監視すべき範囲は4種と比べて大きく広がります。

 

さてチームごとの実力から見てみると、技術、戦術レベルの高いチームであれば明確な意図や連携意識で正確なボール回しを行なってきます。主審はプレーの展開の予測がし易く、滑らかな動きと適切な距離でのポジションがとりやすくなります(ただし適切な監視角度を常に保てるかは主審の技術に負うところが大きいですね)。副審も明確なラインキープが可能となり、ラインの上げ下げのタイミングや意図も明確で動きのリズムが掴みやすいと思います。

 

一方でスピードは4種とは明らかに違ってきますので、走力やスタミナは求めらます。副審はゴールキック時にゴールエリア内に確実にボールが静止した状態で置かれたことを確認後すばやく最終ラインに戻っていく必要があります。GKによるパントキック時も同じくペナルティーエリアの外に出てボールを手で扱っていないかを確認しキックされたのと同時に最終ラインまでダッシュで戻ります(動きとしては4種の審判時と何ら変わりありません)。裏スペースの抜け出しにも遅れることなく(かと言って最終ラインより前のめりにならないように)スプリントをかける必要があります。これらの動作を正確に繰り返す体力と集中力がより求められるということです。

 

ファウルで注意すべき点は、実力差があるチーム間での対戦の場合、片方のチーム(実力がより下位のチーム)が厳しいコンタクトで守備を行なうケースでは無謀以上になりやすいということです。つまりある意味「身を呈して」チャレンジしないと相手チームの攻撃を止められない状況ですので、しっかりとるべきファウルをとらないと試合が荒れます。この点は次の2種でも書きます。

 

試合前のプロセスや交代の手続きなども、公式戦やリーグ戦では多くの場合4種の試合よりも「厳格」になります。第四の審判員として経験を積むことでも、より広範かつ深く審判任務を理解する助けになります。Jリーグのユースの試合を担当できる機会もこのカテゴリーから増えるでしょう。

 

さて、次は2種。

 

U18もしくは高校生ですね。3級審判員の場合、このカテゴリーで出来るだけ多くの経験を積むことで体力、気力、精神力、技術が最も鍛えられるように思います。さらに上級を目指す方々の研鑽の場として不可欠なカテゴリーだと思います。

 

上位のチームではスピードもJのチームに限りなく近づきますのでその中で90分間審判員としてフル稼働することは自信にも繋がるでしょう(というか最初はついていくのが精いっぱいかもしれません)。ボール回しも上位、下位チームに限らず意図やチーム戦術がより明確になるのでプレーの予測もさらにつきやすくなるかもしれません。一方で展開のスピードは3種より大幅に早くなるので、主審の場合置き去りにされて適切な角度からゴール前の攻防を監視できなくならないよう集中力をさらに高め、早め早めの動き出しが求められます。主審の場合静止している状態はほぼないと考え、スプリント、ジョグ、ウオーク、サイドステップ、バックステップ、ルックアラウンド(=首を左右に振りながら争点以外の競技者の動きやポジションを目視すること)の動作を状況に応じて組み合わせます。

 

2種では都道府県によって過去の戦績や昨年度のリーグ戦の結果によって1部、2部、3部(さらに4部もある場合もあるでしょう)と分かれているので、より上位(強豪)チームと下位チームの差が明確に分かるようになっていると思います。さらに同じ部の中でも成績上位と下位のチームでは実力差が顕著な場合があります。逆に下位の部に属するチームが上位の部のチームにトーナメント戦に勝つ場合もあり、一概に実力のヒエラルキーが固定されているとも言えません(それがサッカーという競技を面白くしているところでもあります)。

 

さてここで3種の時にも書いた上位チームと下位チームが試合を行う場合の注意点があります。下位チームが厳しいコンタクトプレーでとにかく激しく守備やボール奪取を狙うとファウルの多発が予想されます。特に足元にあるボールやパスされたボールを奪おうとタックルなどを仕掛けようとして、かわされた場合にそのかわされるスピードについて行けずレイトチャージ(いわゆるアフター)になる可能性が高まります。つまりすでにボールは回され足元にないのに相手競技者にチャージやタックルをしてしまうということです。またすでに相手競技者がボールを前に出してかわしているのにもかかわらずトリップなどで止めようとしてしまう等のファウルにも警戒する必要があります。感覚的に言えば真面目で団結しているチームほどこのようなレイトファウルを犯す率が高いようにも思えます。これらの「アフター」を主審が認識していないと競技者だけでなくベンチの不満も高まります。

 

さて高校生は一見大人になっているように見えて精神的には不安定な側面もあります。つまりキレやすい側面もあるし、そのパワーにもあふれているということです。それはいい悪いということではなく、成長の過程では必要な記憶力を高めたり感受性を磨いたりする結果本人にもコントロール出来ない精神状態になることもあるということです。我々も含めすべての人が通過するプロセスです。ですので審判員はそのことを念頭にコミュニケーションをとることが求められます。常に各競技者の表情や仕草を観察しその精神状態を見極めることが必要になります。ファウルを受けてもしくは自滅してもしくはアクシデントで傷んだ選手に声をかけることも重要ですよね。これらはもちろん2種に限った話ではないですけど、最初のうちはこのことが分からず警察や風紀委員のようにファウルを「取り締まる」審判員になったりするのですよねえ。いずれにしてもコミュニケーションの技術の鍛錬にもうってつけのカテゴリーです。

 

試合前のプロセス(=メンバー表の確認、選手登録証との照合、マッチミーティングにおける確認合意などキックオフまでの手続き)を把握理解するにもこのカテゴリーは丁度いいと思います。

 

そしてなにより3級審判員としては間もなくJリーグや世界で活躍する選手たちと一緒にフィールドを駆け回ることの出来る楽しみと夢があるではあ~りませんか!まあ、話は尽きませんのであらためて。

 

 

で、1種です。

 

大学生とか社会人ということになりますけど、年齢制限がないということなので高校生が社会人リーグの選手として出場することもあります。

 

さてこのカテゴリーの特徴は審判員としての精神力、メンタルタフネスを鍛えて頂けるということでしょうか(苦笑)。私自信、それほど多い経験はありませんので偉そうなことは言えませんけど、2種におけるコミュニケーション技術だけでは太刀打ち出来ないこともあります。実力や個々のチームカラーによってかなり異なりますけど、審判員としては試合前の情報収集やそれに基づいた審判チームとしての協働体制もさらに重要になると思います。

 

フィールドに入る前のことで言えばしっかりと選手登録証との照合を行わないと極めて稀ですけど無登録の選手を出場させてしまうことにもなりかねません。累積の懲戒罰の確認も必要です。本来出場させてはならない競技者を出場させたら試合成立の根本から崩れてしまいます。また用具や装身具の有無のチェックではピアス、ネックレスの確認はマスト。ピアスをテープで覆って出場することを認めてはダメです。外してもらいます。サッカーやるならピアスはNG。

 

リスペクトって言葉が重く響くカテゴリーですよねえ。

 

さて、最後にシニアです。

 

このカテゴリーでプレイされる方はやはりいい意味で大人です。たしかに試合中はよく口も動きます(苦笑)。ひとつひとつのプレーや判定にもこだわられます。趣味でやられていたとしてもそこはやはり勝負事ですから。でも試合が終わると審判員を労っていただく言葉を頂くことが多く、下手なジャッジングの時にはこちらが恥ずかしくなってしまいます。

 

とにかくケガや事故なく無事にサッカーを楽しんで終わること、そのための環境づくりに審判員は最大の注意を払う必要があります。ケガをされたり気分が悪くなっているようであれば速やかに退出してもらう配慮も大切ですね。それにしても皆さんお元気です!こちらも勇気づけられます。

 

さてここまで各カテゴリー別に自分の雑感を書いてきましたけど、ファウルの観点で言うとすべてのカテゴリーにおいて共通している「傾向と対策」があります。それはファウル=「狡くて危険な行為」と定義した場合最優先すべきは危険なファウルを見落とさないということです。これは競技規則にある危険なプレーという狭義の意味ではなく、文字通り負傷に繋がるような危ないすべてのプレーと言うことです。これらのプレーが行われているのに審判員が流している、もしくは気づいていないとなると競技者はもちろんベンチの不満も溜まりに溜まり爆発することもあります。これは例えばあなたが歩いていて猛スピードの自転車が自分の体に接触しそうになったとか車を運転していたら急に別の車が割り込んできて衝突しそうになった、とかのように人は自身や仲間家族に身体的危害や危険が及ぶと一気に感情が高まり相手に怒りをぶつけてしまう、ということと同じ状況だと思います。ここで的確な対応ができないとサッカー審判員の目的である「サッカーの魅力を最大限に引き出すよう、試合環境を整備し、円滑な運営をする」ことに大きく支障をきたします。私も未熟ものとしてこれを肝に銘じて日々修行です。

 

終わりにJFAのサイトにある種別の定義チャートを下記に載せておきます。

 

サッカー 種別 フットサル
年齢を制限しない選手により構成されるチーム
JリーグJFL・社会人連盟・大学連盟・高専連盟など
第1種 年齢を制限しない選手により構成されるチーム
Fリーグ・フットサル連盟・その他
18歳未満の選手で構成されるチーム(高校在学中含む)
高体連・クラブユース連盟・その他
第2種 18歳未満の選手で構成されるチーム(高校在学中含む)
フットサル連盟・その他
15歳未満の選手で構成されるチーム(中学校在学中含む)
中体連・クラブユース連盟・その他
第3種 15歳未満の選手で構成されるチーム(中学校在学中含む)
フットサル連盟・その他
12歳未満の選手で構成されるチーム(小学校在学中含む) 第4種 12歳未満の選手で構成されるチーム(小学校在学中含む)
フットサル連盟・その他
12歳以上の女性選手のみで構成されるチーム
Lリーグ・一般・大学・高校・クラブ(高校)・中学・クラブ(中学)
女子 ※ フットサルには「女子」「シニア」の種別はありません
※ 年齢は登録年度開始日の前日(3月31日)現在、ただしシニアについては、登録年度最終日(3月31日)現在の年齢
40歳以上の選手で構成されるチーム シニア

 

 では、I'll be back.