ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

サッカー審判員のリストラ

気付けば前回の記事から1か月以上経ちました。先々月に体調管理ができておらず珍しく発熱したこともあり、実戦の数も少なめに抑えておりました。それでも数少ない試合を通じていつになく考えらさせられることが多かったです。

 

今まで色々なことについて書いてきたものの次の問いには答えが出せずにいます。

 

① 自分のような下手な審判員は何をなすべきか?

② とうにシニアと呼ばれ始める時期は通過して今後審判員としてどのようにあるべきか?

 

①についていえば何をもって「下手」というかは追々書くとして、やはりこの問題は避けて通れないし、単なる精神論や経験の積み重ねだけでは解決(改善)できないように思えるわけです。

 

下手、上手いで言えばサッカー審判員は以下の4種類に分類できるかもしれません。

 

 1)モチベーションも高くサッカー審判員としても上手い

 2)モチベーションは低いけどサッカー審判員として上手い。

 3)モチベーションは高いけどサッカー審判員として下手。

 4)モチベーションも低くサッカー審判員として下手。

 

上級への昇級を目指し続けるなら1)であるべきです。では4)のような場合サッカー審判員になってはダメだとしたら・・・単純に審判員の人数が足りなくなってしまうでしょう(特に4種以下のカテゴリーにおいて)。2)は才能に恵まれているということですね。年齢が若ければ若いほど将来へ向けてのポテンシャル人材と言えるかもしれません。でも2)の人達は加齢するほど4)に向かっていくことになるようにも思います。さて私自身はどこに属しているかと言えば3)であったはずですけど・・・このままいくと4)になってしまう恐れがあります。モチベーションとは好きとか楽しいという感情であると言えます。ただ「下手の横好き」という趣味の範疇とは異なり、大なり小なりのプレーシャーと他者からの評価が常について回るサッカー審判員は「下手な」ままですとやがてモチベーションも低下していく・・・まさに今の私のように。

 

記事を書くことは蘊蓄を語るのと同義です。「(他人に)蘊蓄は聴かせるけど(自分は)下手な審判員である」というのでは説得力にも欠けます。蘊蓄を語ることで上手くなることは決してありません。それを数年続けても同じことです。何かについて上手くなるには具体的な気付きと行動が必要です。そして上達は徐々にゆっくりとではなく急激な上昇曲線となって現れるものです。その曲線の上昇率はすべての物事の習得と同じように若い人ほど高いように思います。

 

いくら競技規則について語っても(ちなみに私は規則至上の原理主義者ではあ~りません。メチャクチャ大雑把なことは記事を読んで頂けると分かると思います)自分が経験から得たことを語っても(明らかに審判員としての「場数」も足りません)それがサッカー審判員として下手な私が上手くなっていくことには繋がりません。それでも語るとしたら・・・それは上記②に繋がっていくことになるのかもしれません。

 

で①の問いにもどるわけです。「何をなすべきか?」これに対する答えは禅問答のようですけど「何か」をやることでしか得られないではと思うわけです。なので、これから数か月(もしくは1年)で「上手くなりたい!」ので「何か」やってそれについて書きます。

 

でも「今さら」っていう気持ちも正直あります。弱気にもなります。

 

そこで②について。サッカー審判員でもサラリーマンでもJリーグプレーヤーでも加齢を重ねると実労働の年数はどんどん少なくなります。これは誰にとっても避けられません。また体力や気力も落ちてきます。その逆に変なプライドや虚栄心は大きくなっていく人が多いようにも思います(まさに私自身!)。そうすると「下手」(=「仕事が出来ない」)なのに「威張る」(=職位や権限や勤務期間にすがる)という周りに悪影響を与える存在になっていくのかもしれません。

 

なのでどんな組織においても若手により多くの機会を与えお金も時間も投資することは間違っていないと言えます。いやそうしないと組織は衰退していくことでしょう。サッカー審判員もそうです。より若い人(高校生や大学生)のモチベーションが高まるシステムにすべきですし若い人たちがより上級へ早めに移行できるようにサポートすべきでしょう。

 

その上での、自分自身が「リストラ対象」であるという前提での、②の問いかけです。

 

またまた長くなりましたけど、これから書くことがサッカー審判員として「上手く」なりたいすべての方々にとって爪の先ほどの気づきになればいいな~と思ってます・・・なんて、これまた虚栄心ですね。素直になれなくて・・・まずは自分が上手くなりたいのです!

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

サッカー主審の居場所 再び(ちょっと辛口) 2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その⑧

フランス代表対クロアチア代表の決勝戦。結果、シャンゼリゼ通りをパレードしたのは

フランス代表でした(まあ、クロアチア代表がパリに凱旋するわけないか)。

 

さてこの試合の主審は…イケメン、アルゼンチンのピターナ主審です。さてピターナ主審この試合で見事なポジショニングと判定を連発・・・とはいかなかったというのが私の正直な印象です。まず本大会におけるピターナ主審のポジションの取り方についてはこちらの記事をご覧ください → 「 サッカー主審の居場所 2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その⑥ 」。

 

やはり、ピターナさん位置取りがよくなかった。パスサッカーのクロアチア代表の邪魔にさえなっていたような・・・。でも、今回注目したのはあのフランス代表の1点目の起点となったクロアチア代表ブロゾビッチ選手によるフランス代表グリーズマン選手に対するファウルです。これには色々な見方が出来ると思いますけど、スロー再生画面を見る限りグリーズマン選手のワザあり、と言わざる得ないプレーだと思います。つまり「ファウルをもらいにいっている」もしくは「ファウルに見せかけている=シミュレーション」というわけです。

 

ここでのファウルはいわゆるトリッピングということですけど、身体的接触の有無でのファウルか否かという判断は間違っています。つまり「つまずかせる、または、つまずかせようとする」という行為が不用意に、無謀に、または、過剰な力でなされたのかどうかが見極めのポイントです。なので接触が不用意以上だったのか?接触がなくてもその行為(や意図)が不用意以上だったのかが判定の基準となります。

 

ただこれはファウルを犯した競技者だけを監視することになるので、一方で被ファウル競技者の動きや意図も見極める必要があります。なので主審はトリッピングが起こったなら(またその他のファウルでも):

 

① 不用意だったのか?無謀だったのか?過剰な力だったのか?

② 相手競技者の足や体に意図せず(もしくは逆にワザと)接触して(接触しそうになって)つまずいたのか?

③ 意図しない(=相手競技者の動きとは関係なく)「自爆」だった(自分で転んだ)のか?

④ シミュレーションだったのか?

 

を瞬時に見極め笛を吹く吹かないを決めなければなりません。

 

今回のブロゾビッチ選手によるグリーズマン選手に対する「トリッピング」は限りなく④に近いように思えます。ブロゾビッチ選手をボールを持った自分に十分に引き付けておいてまさにブロゾビッチ選手がボールを奪おうとして足を出そうとした瞬間にボールを前に出し、ブロゾビッチ選手の足が出た瞬間に後ろにむかって両足を引くように倒れている・・・はっきりいってスーパープレーです。グリーズマン選手恐るべし。

 

これはピターナ主審でなくとも笛吹きますね。でもFIFAワールドカップの決勝戦に選ばれた主審だからな~。グリーズマン選手の上をいく見極めをして欲しかった。カギはやはりポジションと予想です。この時もなんか微妙な距離と角度だったような。そもそもペナルティエリアに近い位置でグリーズマン選手がボールを持った時の意図を十分意識して監視していたのか・・・それが予想するということであります。

 

で、まあ後はフランス代表の2点目となったPKを与えたペリシッチ選手のハンドボールですね。これをまたVARに頼ったピターナさん。あの角度とボールの速度では難しかった?う~ん、そんなことは・・・。我々の場合ですとVARになんか無いですから副審との確認や隠れシグナル(ペナルティエリア内での守備側競技者の反則には通常副審はフラッグアップなどしない、つまり判断はすべて主審の情報だけで行うので)を使い多角監視を図るしかないです。

 

ここでの最大の監視ポイントはボールが腕に当たったのか?ボールに向かって腕が動いたのか?・・・などではなく腕の位置の「不自然さ」にあります。そこに主審が「未必の故意」を感じることが出来るのかどうかが判定の分かれ目になるのです。ピターナ主審、だから動体視力の問題ではないのですよ。

 

このハンドボールを見極められなかったピターナさんが決勝の主審って・・・。と毒づきながら、それでも実際は難しいよな~と納得してしまうのが「審判仲間」という同族なわけです。今後のサッカー審判員のあり方を最後まで考えさせられた今回のFIFAワールドカップでした。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

いわゆるハイキックの見極めについて 2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その⑦

いきなりですけど競技規則第12条 ファウルと不正行為の以下の条文を抜粋。

 

2. 間接フリーキック

競技者が次のことを行った場合、間接フリーキックが与えられる:

●危険な方法でプレーする。

(中略)

危険な方法でのプレー

危険な方法でプレーするとは、ボールをプレーしようとするとき、(自分を含む)競技者 を負傷させることになるすべての行為であり、近くにいる相手競技者が負傷を恐れてプ レーできないようにすることも含む。

主審が相手競技者に対して危険でないと判断した場合、シザーズキック、バイシクルキッ クは行うことができる。

 

今回のお題は「ハイキック」の判定についてです。巷でも議論のあった7月12日に行われた準決勝のクロアチア代表対イングランド代表の試合でのペリシッチ選手のゴールについてです。ご覧になっていない方はNHKの2018FIFAワールドカップのサイトにある動画をご覧ください。後半23分(68分)の映像です。→

ライブ・見逃し|2018 FIFA ワールドカップ|NHKスポーツオンライン

 

さてこのゴールまず左サイドのラキティッチ選手からサイドを変える右サイドのブルサリコ選手へのパスが起点となり、そのブルサリコ選手からペナルティエリア中央ゴールエリアに近いところへ絶妙のアシストパスが入ります。そのパスをイングランド代表DFのウォーカー選手がヘディングでクリアしようとするのですけど、その頭をちょうど跨ぐようにペリシッチ選手が背後から詰めて左足のアウトステップでボールをキックしてゴールにボールを突き刺しました。

 

上記の文章だけ読むと完全にペリシッチ選手の「ハイキック」の反則でイングランド代表に間接フリーキックが与えられる事象だと思います。

 

ではゴールを認めた、トルコのCAKIR Cuneyt主審の誤審でしょうか?いえいえ、私は以下の理由でチャクル主審の判定は正しかったと思います。ただ、自分が主審を担当していてあのプレーに対して確信を持ってノーファウルと判定出来たかと言えば・・・自信ないですね。

 

では「ハイキック」に対する判定で考慮すべき四つのポイントです(もちろん判定根拠は身体的接触がなければ冒頭の競技規則の条文に求められるべきですね)。

 

①ボールの高さ

②ボールへの優先権

③相手競技者への影響

④危険な方法の有無

 

まず①。例えば腰を基準としたときにそれより低い位置にあるボールに対してヘディングでプレーしようとすることは危険な方法でのプレー(=自らを負傷させる恐れがある行為)と認定されることがあります。この場合いくら相手競技者のキックが頭と同じ高さやそれより上にあっても「ハイキック」とはなりません。どちらの反則かを取り違えないようにするためにもボールの高さの見極めは必須ですね。

 

さて、今回の場合ボールの高さはどうでしょうか?まずゴール前でボールをクリアしようとしたイングランド代表のウォーカー選手はダイビングヘッドを行っています。その高さはヘディングでの競りで頻繁に見られる飛び上がらないと相手競技者より先にボールに触れることができない、というような高さではないです。では低すぎる、つまりヘディングでのプレーは危険であるというような高さであるかといえばそうでもないです。なので今回のウォーカー選手のヘディングでのプレーは反則にはなりません。ペリシッチ選手の左足はそのウォーカー選手の頭上スレスレを右から左に動いているのです。

 

次に②。今回のペリシッチ選手のキックの判定で最も重要なポイントのように思われます。再生画像を見る限るペリシッチ選手は見事にウォーカー選手より先にボールをプレーすることに成功しています。スルスルと背後から近づき動く獲物を一発で仕留めたという感じです。仮にウォーカー選手の頭とペリシッチ選手の左足が同時にボールに触れる状況であれば、笛を吹かざる得ないと思います。

 

③について。これは一言でいうなら競技規則にある「近くにいる相手競技者が負傷を恐れてプ レーできないようにすること」ということです。つまりハイキックやその他の危険な方法でのプレーで相手競技者がビビってプレー出来なかった、プレーの勢いが弱まった、プレーの精度が低くなったという抑止の影響があったかどうかがポイントです。さて今回の場合、ヘディングしようとするウォーカー選手はペリシッチ選手のプレーでその動きを抑止された様子は見られません。ペリシッチ選手が背後からプレーしたので視界にも入ってなかったですし、ボールに集中していたことも大きかったと思います。

 

さて最後に④についてです。「危険な方法の有無」の観点で言えばペリシッチ選手の左足でのキックは正当な高さでのヘディングプレーを行おうとしているウォーカー選手の頭上を跨ぐかのように動いている、しかもギリギリ接触するかしないかの位置関係なのでやはりペリシッチ選手のプレーは危険な方法だったとも言えます。ただ一方でかなり高いレベルで危険を回避できているプレーとも言えます。

 

とまあ、このように①~④のポイントを振り返ってみると「あれ?やはりペリシッチ選手のプレーは反則だったか?」と思わざる得ない部分も多々ありますね。それでもなぜノーファウルとしたチャクル主審の判定は正しかったと言えるのかは、やはり②の優先権に尽きると思います。ペリシッチ選手のプレーは本当に素晴らしく、いわゆる制空権を確保できています。制空権という言葉の定義を「ある空域で敵に妨害されることなく,自由な作戦行動を可能とすること。」とすればまさにペリシッチ選手のプレーがそれであると断言できます。それは同時に「敵を妨害していない行動」とも言えます。そして高いレベルでギリギリの競り合いを行っていた当該試合では相手に対する負傷の危険を回避し同時にボールをコントロールするというペリシッチ選手の卓越したプレーの精度に応えチャクル主審はサッカーの魅力を最大限に引き出す判定を行ったのではないでしょうか?

(このゴールが認められなかったら今夜これから行われるフランス代表対クロアチア代表の決勝戦も実現しなかったかもしれない、とても大きな判定だったことは確かです)

 

さて、このように書いたもののやはり自分が担当した試合だと笛吹くだろうな~。ともあれ自動的にハイキック=反則としないように研鑽を積み、試合経験を積み重ねましょう。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

サッカー主審の居場所 2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その⑥

ベスト4に向けての戦いも見応えたっぷりでした。

 

さてウルグアイ代表対フランス代表の主審はアルゼンチンのPITANA Nestoさん。

注目したいのがピターナさんのポジションの取り方。特にペナルティエリアに近い、いゆるバイタルエリアおよびセンターサークル付近の位置取りです。

 

ピターナ主審この付近でプレーに巻き込まれてしまっているんですね。

 

つまりパスしたボールに:

 

当たる

またぐ(股下を通らせる)

よける

 

という行動を取っています。完全にパスコースに入ってしまっているんですね。

 

ピターナ主審の動きには三つの特徴があります。

 

①サイドステップをほとんど使わない

②(周辺の選手の位置を確認するために)首を回しながら見たりしない。

③ボールを保持している選手に(距離を置きながらも)静止しその様子を見ている(≒パスコースに入っている。)

 

①はバイタルエリアで争点から目を離さずポジションを調整するには重要なテクニックです。

②は次のプレーを予想するためにはこれまた重要なテクニック。

③ボールを保持している選手に相手競技者のプレッシャーがないならボールは争点ではないので・・・監視目標が違うと思います。

 

ワールドカップの決勝トーナメントの主審を務める方には釈迦に説法となりますけど、ウルグアイ代表対フランス代表の試合を観る限り結果は「悪い位置取り」だったと言わざる得ません。

 

なによりもボールに当たると主審としては「やってしまった~」と心で叫んでいるはず。また、当たらなくても避けたり股の間を通しても背後から「邪魔だよ!」と選手に叱責を受けます(コレガ ジョシ ノシアイ ダッタリスルト イエデ シカレルノヲオモイダシテ ヨケイニ イバショノナサヲ カンジル)。まあ、このような場合は素直に選手に謝りましょう、試合中に。で、主審のポジションって難しいなあ~という毎度の結論になってしまいます。

 

でも、最後に一言。通常経験の浅い4級審判員の方々の位置取りを見るとあまりにも争点から遠過ぎることが多いです。つまり走っていない動いていないんですね。以前にも書きましたけど、プレーに巻き込まれるくらい近づいてください。位置取りの良しあしなんて、まずは走って動いてから考えるべきことですから。

 

では、I'll be back.

ベルギー代表対日本代表戦「真のマン・オブ・ザ・マッチ」2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その⑤

ハリルホジッチ監督が不可解なタイミングで解任された時点で(理由の如何は問わず)正直、今回の日本代表を素直に応援できない自分がいたのですけど、昨日のベルギー戦は素晴らしいものでした。それは日本代表の健闘はもちろんベルギー代表の強さに対するものでもあります。FIFA World Cupツイッターアカウント曰く「この試合のマン・オブ・ザ・マッチを選ぶのは難しい」。ここは贔屓目で日本代表全員を「マン・オブ・ザ・マッチ」に選びたい!と思う次第です。

 

でも、この試合の真のマン・オブ・ザ・マッチはセネガルのDIEDHIOU Malang 主審にあげたい!試合前から「しがらみ」の中プレッシャーもあって臨んだはずですけど、本当にこの素晴らしい試合を素晴らしい判定とマネジメントで支えていたと思います。彼の「活躍」(=審判員が本当に活躍すると目立たないのです)なくしてこの試合を心から楽しむことは出来なかったと言っても言い過ぎではないと思います。

 

なによりも後半のアディショナルタイムにおけるベルギー代表の素晴らしいカウンターアタックの時のディディウさんの走りを見よ!これぞ永久保存版です。ボールの行方よりそちらに見とれてしまった・・・。

 

「日本にとって不利な判定があるかも・・・」なんて類の記事を書いた記者さんや一瞬でもそう思った方たちはディディウ主審に直接謝罪して(苦笑)あらためて敬意を表して下さい!

 

サッカー審判員というのは自(国)チームの状態がどうであれ「サッカーの魅力を最大限引き出すように、試合環境を整備し、円滑な運営をする」というミッションに背くことは出来ない生き物なのです。

 

では,I'll be back.

「主審も色々」2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その④

さていよいよ決勝トーナメント開始。いきなり大一番のフランス代表対アルゼンチン代表の試合。4-3でフランス代表が勝ちましたけど、勢いや総合力共にフランス代表が点差以上に上回っていたように思います。今後の展開が楽しみ。それにしてもチームに世界的スーパースターがいるとチーム作りも難しいよな~とあらためて思いました。

 

さてこの試合の主審はイランのFAGHANI Alirezaさん。ファガニーさん流石ですわ。安心して観ていられます。もちろんVARとの通信は行っていたのでしょうけど、「安易に」テクノロジーに頼っていません。アウトオブプレー時も含めて笛を吹きすぎ?カード出し過ぎ?いえいえ、難しい試合をよく仕切っていました。選手がもみ合っていたら直ぐ介入。なかなかの剛腕ぶりも(笑)。*介入のスタイルは主審によって様々。必ずしも腕力は必要ありません(笑)。それよりも選手同士のもみ合いが起こりそうになったら副審や第四の審判員に「何をして欲しいのか」事前に伝えておきましょう。

 

さてファガニーさんとは逆に正直「なんでこの人ワールドカップ本大会の主審に選ばれたのかな~?」と自分のことはさておき思ってしまう主審の方々がいらっしゃるのも事実です。以下、言いたい放題。

 

①MATEU Antonio主審(スペイン)

フランス代表もいたグループCのデンマーク代表対オーストラリア代表の試合の主審ぶりを見る限り、この方のファウル判定基準はよく分かりません。後半交代で登場した、フランス代表エムバぺ選手と同じ、19歳の有望株ダニエル・アルザニ選手に対する後ろからのチャージ。ノーファウルとのことですけど・・・うーん最低でもファウル。どう考えてもイエローカードの対象なんですけど・・・。デンマーク代表デラネイ選手が左手でアルザ二選手の肩を掴んでさらに折り曲げた肘をアルザ二選手の背中に付けて押しているように見えるんですけど・・・。リーガエスパニョーラチャンピオンズリーグではたとえ後方からでもこの程度のホールディングやプッシングには耐えて倒れている場合ではない!ってことでしょうか「重鎮」マテウ主審にとっては・・・。まあアルザニ選手、早く欧州移籍してください。

 

②CACERES Enrique主審(パラグアイ

 

カセレスさん決して下手な方ではないと思いますけど・・・。例の引き分けとなったイラン代表対ポルトガル代表の試合での判定、特にまさに前回の記事「 『君は笛を吹けるか?ペナルティーキックの判定』2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その③ 」にあるようなPK判定が・・・ヒドカッタ。後半立ち上がりのクリスティアーノ・ロナウド選手に対するペナルティエリア内でのイラン代表サイード・エザトラヒ選手のチャージをノーファウルと判定・・・で直後VARのアドバイスでPK判定に。カセレス主審、目の前の事象です。国際審判員でも目の前であまりに明らかなファウルが起こると笛吹けないんですね・・・。親近感を覚えました。イクラ ナンデモ コレハ マズイ。

 

で、決定打が後半終了間際のポルトガル代表セドリック選手のハンドリング。VARとの交信に物凄く時間も掛かっているので試合のリズムも狂いますね。そして何よりこれ目の前ですよカセレス主審!あなた観客席でも見てましたか(苦笑)。すぐに笛吹いて欲しかったなあ~。もうテクノロジーの達人の称号をカセレスさんには献上です!

 

③SIKAZWE Janny主審(ザンビア

 

シカズウェさん、緊張していたのかな~。いやいや大舞台の経験も豊富なベテランがそんなわけは・・・。でもこの方シグナルが遅い。自信なそうに見える。私みたい・・・。日本代表対ポーランド代表の試合を観る限りボールがタッチラインを割った直後のシグナル、けっして微妙な判定でもないのにけっこう選手の様子をみて方向を決めているような感じです(*微妙なラストタッチの場合この「選手たちの様子を見て決める」判定はテクニックのひとつとも言えますけどけっこう「落とし穴」も多いのでご注意を)。レフェリーサイドでも同じ。コーナーキックゴールキックの判定も自分に近いサイドなのに副審を頼っている(ように見える)。3級審判員の我々でもインストラクターの方から注意されてはならない動作の様な・・・。慎重になりすぎたのかな~?

 (*ちなみに主審に近い場所での微妙なラストタッチの判定を争点にはるかに遠い副審に求めて決定すると・・・ベンチの不信を買いかねません。)

 

さてさて、以上言いたい放題でしたけど、俺に笛を吹かせろよと思われた日本の国際審判員の方も多いのでは・・・とまたまた言いたい放題すべて私論でござます。こんなところを見るのも楽しいワールドカップでございます。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は笛を吹けるか?ペナルティーキックの判定」2018FIFA ワールドカップロシア大会 雑報その③

さて先ほどまで行われていた韓国代表とスウェーデン代表の試合。

 

このままスコアレスドローかと思っていたら、またビデオ判定によるペナルティーキックとなりスウェーデン代表が先制点を入れました。

 

それにしても、今大会に入ってもう見慣れたといっても言い過ぎではない主審の両手の動き(モニター画面の四角を表すあのシグナルです)とペナルティーマーク方向を指し示すシグナル。第一戦の段階でこのペースだと今後も増えていくでしょうねヴィデオ判定によるPK。逆に言えば今まで多くのペナルティーエリア内のファウルがノーファウルと判定されていたとも言えます。

 

ペナルティーエリア内の守備側選手によるファウルは笛を吹けばPKとなる重大な判定となるので正直簡単には笛を吹けないという側面があることは否定できません。でも吹けないとダメなんですけど、これだけの数の判定においてヴィデオに頼らざる得ないってことは、やはり難しいんです。というわけでファウルだったのに笛が鳴らない場合は大別して三つ:

 

1)そもそも事象が見えなかった

2)事象は見えたもののノーファウルに見えた

3)(ファウルを見たが)吹けなかった

 

となりますね。

 

1)はあってはならいことですけど・・・やはりポジションの悪さや複数の争点の見落としが原因で起こることです。

2)はまさにこの試合での韓国代表のスライディングタックルの判定です。主審は正当なタックルと当初みてプレーを続けさせます。しかし・・・。

3)はこのレベルの審判の方々にはありえませんね。でも私なんかですと・・・これが正直にいうとあるんです。特にあまりにも眼前で明らかなファウルの時に逆に吹けなかったりします・・・反省。

 

この試合の主審はエルサルバドルのAGUILAR Joel さん。アギラールさんの肩を持つわけではないのですけどスライディングタックルの見極めは難しいです。ボールとプレーの距離、プレーの優先度、ボールに向かっている足およびスペアフットの動きや位置関係などなど多くのポイントを一瞬で見分けなければならいので・・・しかもヴィデオにように事象を拡大して見たり繰り返し見たり出来ないですしね。

 

さて元に戻ると今回で世界的認知となったヴィデオ判定により、「やはり今までも主審によるペナルティーエリア内のファウルの見落としはあったんだなー」とのイメージが出来てしまうのは避けられないですね。判定の精度は向上して、一方で審判に対する信頼度は・・・永遠の課題のような・・・。

 

では、I'll be back.

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