ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

サッカー主審と副審の「関係性」とは?(関係ではあ~りません)

最近、審判務めて経験したことはあらためてここに書くとして、ちょっと先日感じたことを。

 

ある少年の公式戦を観戦していたときのこと。主審の方は以前、実技研修でご指導いただいたインストラクターの方。副審を務めていた方たちも協会から派遣されていたようです。

 

で、こんなことがありました。主審サイドでのタッチライン上のボールを選手が片足でキープしてラインぎりぎりをドリブルで突破しようとしたその瞬間、主審の笛が鳴り響きました。

 

どうも主審の方はフィールド内から斜め横の角度でご覧になってボールの全体がタッチラインを越えたと判定されたようです。でも実際はボールはオンライン。なぜはっきりと断定できるかというと、そのフィールドは人工芝でラインもしっかりと太く(多分12cmほど)マーキングされ、しかも私が見ていた場所は俯瞰で見ることのできる二階の観客席(しかもボールは観客席に近いサイド)だったのです。

 

もちろんいっしょに観ていたコーチ陣も「出てないよ~」のコメント。で決定的なのがそのラインを反対側ハーフから監視しているA2の副審の方が首を左右に振られていて、明らかに主審の判定を否定するかのジェスチャーなんですね。

 

不幸中の幸いにも(?)大きな異議はベンチからも選手からも起こらず皆、素直に主審の判定に従いスローインで再開です。まあ、笛が吹かれてアウトオブプレーになったわけですから主審が間違いに気付いた時点で「ごめん!間違えた!」と言ってドロップボールにするか、そのままスローインの判定とするしかないですよね。

 

「ごめん!間違えた!」は主審として言えないのでここは気付いても毅然としてスローインを指示するしかないです。で、今回のポイントはしっかりとボールの全体がラインを越えたかを見極めて判定しましょう・・・ではなくて主審と副審の「関係性」です。

 

この「関係性」という言葉、「関係」をただ難しく言っているわけではありません。しっかりした概念のもと使い分けてますので、ここで特別に(?)説明します。

 

といってもいたって簡単な概念です。例えば街で、あなたが奥さんと二人で歩いていて向こうから、あなたの上司が偶然あるいてきたとしましょう。この時、あなたは上司にあいさつし、奥さんから「どなた?」と訊かれたら答は:

 

関係 = 上司と部下

 

ということになります。これはあなたの奥さんとの関係も同じ図でいえば:

 

関係 = 妻と夫

 

とうことになりますね。

 

では「関係性」とは?

 

関係性は、「社会的なもしくは形式的な関係を越えてお互いをどのように認識し(位置づけ)どのような態度で接しているか」ということです。

 

ですから、社会的には上司と部下であっても関係性は色々なパターンが考えられます。例えば:

 

関係性 = 師弟、親友、恋人、ご主人様と奴隷、半沢と支店長、ダメオヤジと恐妻

 

等々です。

 

今回、タッチラインをボール全体が越えたと主審が判断したとき、主審と副審の関係は、依然:

 

関係 = 主審と副審

 

のままです。

 

ただ関係性はどうでしょう?

 

競技規則 第5条 主審

 

職権と任務
主審は、
●競技規則を施行する。
副審および第4 の審判員がいる場合はそれらの審判員と協力して試合をコントロール
する。(下線筆者)

 主審の決定
プレーに関する事実についての主審の決定は、得点となったかどうか、また試合結果を含め最終である。
プレーを再開する前、または試合を終結する前であれば、主審は、その直前の決定が正しくないことに気づいたとき、または主審の裁量によって副審または第4 の審判員の助言を採用したときのみ、決定を変えることができる。(下線筆者)

 

この競技規則第5条を読む限りは主審と副審の関係性は:

 

関係性 = 暴君と家臣

 

ではなさそうです。

 

ただ、今回のタッチライン判定の瞬間の主審と副審の関係性は私が理想とすべきものではありませんでした。この瞬間私には:

 

関係性 = 嫁と小姑

 

のように見えました(ちょっと分かり難いでしょうか?)

 

もちろん、判定の正確さでは副審の方に軍配があがります。でも敵味方の関係性では決してないのでここはリーダーとアシスタントの関係性でリーダのミスを巧くカバーして欲しかった。

 

例えばここは主審の威信を守ること第一で(判定への不満は残るとしても)何事もなかったかのようにフラッグシグナルを合わせるとか、事前に決めておいたシークレットサインでコミュニケーションとるとかして、明らかに周りから見て主審と副審の判断にずれがあることを感じさせないことが重要だと思います。

 

大切なことは常に主審と副審がチームとして動く、考えるということです。

 

ビジネスの交渉の場で急に自分だけ違うこと言い始める人が自分たちのサイドにいたら、相手の思うつぼですよね。たとえその人が言うことのほうが正しくても相手から見ると「意思統一できてないな。そこを攻めるか」とか「意思統一できてないな。交渉相手として信頼に欠けるな」とかなるはずです。

 

もちろん選手と審判の関係性は交渉の相手ということではないですから、ここで言いたいことはうまく丸めこもうというようなことではなく、選手の異議をエスカレートさせる環境を審判団がつくらない、選手に信頼されるように審判団が振る舞うというようなことでしょうか。

 

私が考える主審と副審の理想の関係性は:

 

関係性 = デキる上司とデキる部下

 

です。

 

「デキる」の定義はここではあえて書きません。デキる上司は部下の優れた意見を取り込み部下の長所を引きだしながら仕事を進めます。デキる部下は上司の期待することを正確に把握し建設的に進言しながら仕事を進めます。部下の意見に耳を貸さないデキる上司はいません。上司の期待をあいまいにしたままで仕事をすすめるデキる部下はいません(逆にいえば期待の曖昧な上司には上手にプレッシャーをかけます)

 

ということで私が考える主審と副審の「関係性」を書いてみました。皆さんも考えてみてください。答はひつではないはずです。(「働く妻とそれを支える主夫」とか)

 

ところで、今回のタッチラインの判定のケースではある意味強引にスローインとすることにしました。でも試合の流れや結果に大きく影響を及ぼす判定の場合は競技規則に従って「主審の裁量によって副審または第4 の審判員の助言を採用」して「プレーを再開する前」に「決定を変える」ようにしましょう。

 

 では、I'll be back.