ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

熱い試合にこそ冷静なゲームコントロールを。

J1昇格のかかった、国立競技場で行われたJ2プレーオフ決勝戦。見事徳島ヴォルティスが守り抜き京都サンガF.C.を破って四国初のJ1チームとなりました!

(2-0で勝利したにもかかわらず、京都サンガF.Cが始終攻撃のペースを握り徳島のゴールに迫ってましたので、セットプレーと縦へのパスへのワンチャンスをものにした徳島が2点を守り抜いた、の表現がふさわしいでしょう)

 

今日はカマタマ―レ讃岐もJFLとJ2の入れ替え戦の2試合目でガイナーレ鳥取を1-0で下しJ2昇格を決めました。四国勢のダブル昇格!

 

来年は四国が熱くなりそうですね。こうやって地域に根差したプロスポーツとしてJリーグ全体がますます発展していって欲しいものです。

 

さて徳島ヴォルティス京都サンガF.C.の試合で気付いたこと。それは村上伸次主審のゲームコントロール。小学生の試合でも応用できるとても参考になる次の2点。

 

まず1点目。これはゲームコントロールというより少年の試合でもよくある再開方法についてです。で、多くの場合主審を担当される方が、しばしば誤った再開方法にしてしまっているんですね。

 

前半の33分に徳島の選手の一人がフィールド内で倒れたままで、そのままプレーは続行。最後は京都のGKオ スンフン選手がボールを手で保持。そこで、村上主審は笛を吹いて試合を止めました。

 

この場合、試合再開は方法は次のどれでしょう?

① プレーが止まった状態、すなわちGKがボールを保持した状態で再開。

② プレーが止まった時にボールがあった場所からの間接フリーキックで再開。

③ プレーが止まった時にボールがあった場所でのドロップボールで再開。

 

 

 

第8条プレーの開始および再開

 

ドロップボールの定義
ドロップボールは、ボールが依然インプレー中で、主審が競技規則のどこにも規定されていない理由によって、一時的にプレーを停止したときに、プレーを再開する方法である。


進め方
主審は、プレーを停止したときにボールがあった場所でボールをドロップする。ただし、ゴールエリア内でプレーが停止された場合、ドロップボールは、プレーを停止したときにボールがあった地点に最も近いゴールラインに平行なゴールエリアのライン上で行う。


ボールがグラウンドに触れたときにプレーが再開される。

 

京都のGKオ スンフン選手がボールを保持していた時は当然インプレー中で村上主審が笛を吹いてプレーを停止した時、アウトオブプレーになったわけです。インプレー中にとめたのでドロップボールで再開が正解です。

 

これ小学生の試合なんかで、そのままパントキックさせている場面にしばしばでくわします。正しくはドロップボールです。

 

この徳島と京都の試合の場合、村上主審はGKのオ スンフン選手の真横でボールをドロップしてました。徳島の選手はハーフウエーラインの向かって下がりながらポジションをとって、(倒れた徳島の選手の状況を確認するために試合は停止されたわけですから)当然ながら誰もドロップボールには参加しません。

 

で、これが小学生の試合なんかですとプレーを止める原因を作ったチームの選手がドロップボールに参加しようと近づいてきたりするんですね。

 

競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン

第8条 プレーの開始および再開


ドロップボール
(ゴールキーパーを含む)すべての競技者がドロップボールに参加することができる。ドロップボールに参加が必要な最小、最大競技者数は定められていない。主審は、誰がドロップボールに参加してよいのかどうかの決定を行うことはできない。

(下線筆者)

 

とまあ、ガイドラインには書かれていても、例えば徳島の選手がペナルティエリア内で、もしくはゴールエリアのライン上にドロップされたボールを争っていたら変ですよね。

 

小学生には「ボール譲ってあげようね」とか「キーパーがボールもっていたよね」と言って、わざわざ参加する必要のないことを示唆(強制ではない)します。でも示唆でありながらうまく参加しないように誘導しないと、不公平なことになります。で、これは立派なゲームコントロールのひとつというわけです。

 

ところで、ゴールエリア内にボールがある時に主審がドロップボールで再開になる状況でプレーを停止した時、ドロップボールは「プレーを停止したときにボールがあった地点に最も近いゴールラインに平行なゴールエリアのライン上で」行います。

 

で、今日はどうだったかというと、村上主審はライン上ではドロップしてなかったような・・・これは画像を再確認してみないとプレーが停止された時GKのオ スンフン選手がゴールエリア内で保持していたのか外だったのかはわかりません。

 

いずれにしてもわざわざライン上でドロップすることにあまり意味があるとは思えない状況なので、そのままオ スンフン選手が立っていた横でボールをドロップしていたようにも思います(我々4級、3級の審判員ではここは競技規則に忠実に行った方が無難でしょう)。

 

次に2点目で、これはまさにゲームコントロールにかかわることで地味~なことですけどとても大切なことでもあります。

 

それは後半28分、そろそろ2点を守り抜き徳島ヴォルティスが逃げ切りを意識し始めた時間帯だったかもしれません。徳島のスローインで再開の場面ですが、徳島の選手が誰もスローインに行こうとしません。当然、「時間稼ぎ」したいわけですね。

 

この時、村上主審は即、ボールが出たタッチラインに向かってダッシュ。徳島の選手に早くスローインを行うように促します。

 

このような状況は小学生の試合でもあると思います。口頭にしろジェスチャーにしろ早めに促すことがまず大切です。でも口頭で促しているにかかわらず、なかなか再開しない場合、成り行きを主審もついつい「静観」してしまうということがあり得ます。

 

ここで労を惜しまない、村上主審の即行動ぶりが試合を引き締めます。ビハインドしているチームの不満をそれ以上大きくしない、選手のプレーを見たがっている観客のために無駄な時間帯をつくらない、回避できる警告はできるだけ事前に回避する、等々「プレーの再開を遅らせない」というとても大切なゲームコントロールのポイントです。

 

以上2点、本日の熱い試合を見ながら再認識した冷静なゲームコントロールでした。

常にゲームコントロールを意識して試合を進めましょう。

 

では、I'll be back.