ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

主審のポジショニング - 次の争点にあなたはいる!(後編)

さて、前回の続きです。

 

ではまず「争点」とは何かを定義します。

(う~ん大袈裟)

 

争点 =

● 攻撃側と守備側競技者の各々1名以上による相手競技者の自由をお互い奪い合う行為。

● 奪い合う自由の対象は次の三つ。

● 1)ボールのコントロール 2)競技者の位置取り 3)競技者の動き

 

ということです。

 

うん?そんなの当たり前じゃん、って御もっともです。

書いてしまうと当たり前なんですけど、これを審判員として試合中に意識して監視できているかどうかはまた別のこと。

 

例えばコーナーキック。コーナーアークに置かれたボールを見ている主審のあなた。

例えばゴールキック。蹴られて空中高くにあるボールの軌道をみている主審のあなた。

 

以前にも書いたように(こちら → 「ボールの落下地点を監視せよ!」)そこには争点はないですよ。

 

コーナーアークに置かれたボールを守備側競技者はコントロールすることはできません。誰も届かない空中にあるボールに触れることのできる競技者はいません。つまりボールの有無は「争点」の必須要素ではありません。ボールがなくても「自由をお互い奪い合う行為」は成立します。

 

そして単なる競いあいではなく「自由を奪う」としたのも審判員にとって監視する対象が何であるかを明確にするためです。

 

相手競技者の「自由を奪う」のはある一線を越えなければサッカー競技にとっては正当かつ魅力的な行為です。相手競技者がそこにいる時(完全にフリーでない状況)「自由を奪う」=「相手の思い通りにさせない」=「自分の意図通りにプレーする」ことを全競技者が試合全体を通じて競い合っていることでサッカーを観る楽しさが保障されるわけですよね。

 

そしてこの「自由を奪う行為」が競技規則で規定されている一線をこえたときに正当な行為が不当な行為と成ります。今まで書いてきた言葉でいえば「ずるいプレー」となる、もしくは「危険なプレー」となるということですね。

 

というわけで主審はボールを追いかける、ボールがあるところのプレーだけを意識して動くのではなく常に「次の争点」を意識してポジションを変えていくことがとても大切です。そしてどのような「自由を奪う行為」が起こり得るのか心の中で自在に映像化できる必要もあります。(自由を奪いあう行為のパターン認識の豊富さ=争点監視における引き出しの多さ)

 

と、いつもながら前提である言葉(争点)の定義で長くなってしまいました。

 

今回は「プレーを監視するのに適切なポジショニング」を実践するためには何を意識し、そしてどのように動くべきか?でしたね。

 

「何を意識するべきか」はずばり上記の「争点」が対象となるわけです。でこれを主審の動き、位置取りで考える時のキーワードとして前回挙げたのが次の二つです。

 

●始点と終点

●将棋の駒

 

この二点目の「将棋の駒」は前回の記事で競技者の動きを飛車(正確には成り飛車でしょうか)に例えたりしました。で、前回中編を書いたあとに、かつーさんのブログでこんな記事を発見(こちら → 「村井チェアマン×渡辺二冠対談」)

 

いやーなんたるシンクロニシティ。主審の動きを将棋の駒に例えようというのはまったくの思いつきだったわけですけど、書き辛くなりました(苦笑)。でも、どうせ思いつきなんでめげないで書いてみますね(汗笑)。

 

ちなみにこのかつーさんのブログで紹介されたサッカーキング対談のゲストの渡辺二冠がご子息のサッカーチームの運営を通じて主審を務められてのご感想:

 

「動き回りながらだと、「今はこっちのチームがこっちへ攻めているんだな」ということが整理できなくて、顔とユニフォームの色が一致するまでに10分くらいかかりました。さらに、GKはユニフォームの色が違うから、「このGKの味方はこっちだよな?」というのがまた、わけがわからなくなる要素で(笑)。」

 


にはちょっと救われた?気分です。私も未だ「あれ、どっちのチームがどっちに攻めているんだっけ?」に試合中悩まされて指し違えることがあります(恥)。記憶力の欠如なのか空間認識能力の低さなのか落ち込んでおりましたけど、一流の棋士の方が主審されても起こり得るのですね。(だからって許されることではありませんけど)

 

さて閑話休題

 

さきに「将棋の駒」というキーワードについて書くと、フィールド全体を将棋盤に見立てて自分が今どこの升目にいるべきか?を考えて動きましょうってことです。で、どこにいるべきかを決めるのは:

1)監視すべき争点は今どこか。

2)次の争点はどこか(予想)

というわけです。

で、争点の動きにあわせて決してボーっと立ち止まらず「成り飛車」のように(そして時には「成り角」のように)前後左右斜め前後ろに動きましょうということです。

 

この時有効なのがやはりバックステップやサイドステップですね。特にペナルティエリア周辺では、短時間に争点が細かく移動します。また逆に争点が大きく移動する(=守備側が大きく前線にボールを送り逆襲になる等)こともあります。

 

そして特にゴール前では争点は必ずしも一つではなく複数のこともあります。

 

ですのでペナルティエリア周辺では特にこの「前後左右斜め前後ろ」の動きを意識しないで止まって争点を監視していると主審自体が次の争点のど真ん中に位置しているってなことにもなりかねません。

 

また展開が大きく変化することを予見して、次の争点に向かって(飛車や角の駒のように升目を幾つも飛び越して)素早く走り出すことも意識しましょう。

 

この時、将棋の駒だけでなく風見鶏のように身体の向きを変えながら争点に正対するもしくは次の争点に向けての動きだしのし易さを確保することにもトライしてみましょう。

 

これはセンターサークル周辺に位置しているときも同様です。

 

ただセンターサークル付近のポジショニングはホント難しいですよね。わたしも苦手なエリアとなっております。このセンターサークル周辺こそ「次の争点」を早く見極めて適切に動きだしできる態勢を整えつつ「今の争点」を監視していることが求められるんですね。

 

このときも「将棋の駒」&「風見鶏」です。(ただ風で動くんじゃないですからね~常に意図をもって動きましょうね。蛇足でした。)

 

さて次に「始点と終点」について。

 

これはボールの出し手と受け手の位置を見極めて、次の争点はどこかを予想して監視するのに適切なポジションをとろうってことです。

 

例えば、スローインの場合。ファウルスローの監視はもちろん重要なので、出し手(スローインする競技者)の動作を見ながらそのスローされたボールの受け手周辺が一番監視すべき争点となるわけですのでそこに意識を集中します。

 

このとき、受け手周辺はボールがスローされる前から「相手の自由を奪う行為」が繰り広げられていますし、ボールが落下する直後はまさに熾烈な「自由の奪い合い」になるわけです(=今の争点であると同時に次の争点でもある)。

 

ですので主審は争点を監視するのにもっとも適切なポジションにいる必要があります。そして次の(次の)争点に移動することも考えた位置にすべきです。

 

これは大雑把な方向でいえば始点と終点の延長線上ということになります。

(もちろん、これはプレーの展開のひとつの可能性にしか過ぎないわけですけど)

*追記:「延長線上」って言っても線上にいたら串刺しになるのでダメですからね。延長線を思い描きながらその方向にいつでも動きだせる態勢で争点を延長線と平行な位置(横)からみるイメージです。

 

で、主審が決して位置してならないのは始点と終点を直線で結んだ線上ということになります。つまりボールの軌道上ですね。邪魔になりますし次の争点を串刺しに見てしまうことにもなります。当たり前・・・ですけどこれがスローインゴールキックと違いボールも競技者も動いている状況だと難しい。

 

例えば本日のJ1第21節の大宮アルディージャ vs サガン鳥栖での今村義明主審の動き。

 

今村主審、全般的な動きは安定しておりますけど(偉そうに失礼!)本日、鳥栖の横パスの軌道にいるシーンが何回か見られました。

 

鳥栖の選手が大きく真横に出したボールにあわや接触って場面も。また横パスの軌道にいることを自覚されて止まって邪魔にならないようにしていたかのような(あくまで私の印象です)場面さえありました。

 

ちょっと横道にそれますけど、よくパスの邪魔になりそうだったらその場に止まっていなさいとその昔アドバイスされたことがありました。これある意味正しいようで止めておいたほうがいいと思います。例えばすれ違うのがやっとの幅の歩道で向こうから歩いてきた人と自分が全く同じ側に避けたら・・・確かにこの場合、向こう側から歩いて来た人の目的は前に進むことで必ず右を通るとか左を通るってことではありません。のでその場に止まっている方が、何度もお互いに同じ側に避け合うなんてことにはならないでしょう。一方、ボールをパスするのは確かに受け手の味方競技者にボールを渡したいわけなので、これも上記の歩道での避け合いと状況は同じようではありますけど、「ボールをまさに主審が位置している線上を転がして通したい」等のパスの軌道の必然性もあるわけです。特にスルーパスとか。ですので止まっているとパスコースを完全に妨害してしまいます。あと込みあった駅構内の往来と同じく、衝突するのを避けるために止まると逆に後ろから追突されたりとか・・・やはり素早い判断でプレーの邪魔にならないように動きたいものです。

 

でもJリーグの主審でもボールの軌道にいつの間にか位置しているってことです。やはり言うは易し・・・(こちらもどうぞ → 「「ゼロ・グラビティ」にみるサッカー主審の抗い難い運命とは? 」)。

 

と、今回も散文的にだらだらと書いてしまいました。もっと実践例を増やして行きたいと考えつつも多少夏バテなこの頃(情けない)。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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