ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

身体の接触がなくても直接フリーキックとなるファウルそして「許されざる者」

金曜日にあったハリルジャパンの初陣、日本代表 vs. チュニジア代表。

 

この試合で気付いたこと。それはイエローカードが出た二つのファウルについてです。

 

まず最初のファウルはチュニジアのDFアブデヌ―ル選手が前半24分に清武選手にスライディングタックルした場面。

 

このファウル、スローモーション再生を一回見た限りでは接触がなかったようにも見えます。主審のウィリアムズさんは多分接触を認めて笛を吹いたのではと思います。で、実際はどうだったかは再度、再生画面を見ないと何とも言えませんけど、では接触がなければファウルなしでしょうか?

 

この場面であてはまるかどうかは微妙ですけど、直接フリーキックとなるファウルには三つの「~しようとする」の規定がありますよね。

 

第12 条 ファウルと不正行為

ファウルと不正行為は、次のように罰せられる。


直接フリーキック
競技者が次の7 項目の反則のいずれかを不用意に、無謀にまたは過剰な力で犯したと主審が判断した場合、直接フリーキックが相手チームに与えられる。
●相手競技者をける、またはけろうとする
●相手競技者をつまずかせる、またはつまずかせようとする
●相手競技者に飛びかかる。
●相手競技者をチャージする。
●相手競技者を打つ、または打とうとする
●相手競技者を押す。
●相手競技者にタックルする。

(下線筆者)

 

この「~しようとする」には身体の接触が伴うものと伴わないものの2種類があると言えます。

 

「けろうとする」「つまずかせようとする」「打とうとする」という相手競技者の行為で、ひるんだり、避けようとしたり、バランスを崩したり(結果として転んだり)してプレーに影響が出れば身体的接触がなくてもファウルとすべきです(もちろんその行為が不用意以上と認められる場合)。

 

で、この清武選手がうけたファウルをスロー再生画面で見た瞬間に「つまづかせようとする」というこの規定を思い出しました。審判員としてその行為が:

 

1)「~にしようとした」結果なのか

2) シュミレーションなのか

3)「自滅」しただけなのか

 

のうちのどれに該当するのか、両プレーヤーの意図を瞬時に見極め判断を下す必要があります。

 

今後PKになった場面でも、選手が倒された場合に再生画面で身体的接触がなくても上記の規定を思い出して事象を検証してみてください。ファウルの見方の引き出しが増えるかもです。

 

さて、このファウル、マッチレポートによれば警告の理由は「反スポーツ的行為」となってます。清武選手がファウルを受けた時のボールの位置とか考えると、次の攻撃の大きなチャンスの展開を妨げたというより反スポのひとつであるラフプレー(=ファウルを無謀に行う)であるように思います。

 

さて、二つ目に注目したファウル。こちらも警告の対象となった後半8分のプレー。

 

武藤選手が反撃のドリブルで前に抜けようとした瞬間にチュニジアのMFモンセル選手にタックルを受け倒されたシーンです。これも同じく反スポがイエローカード提示の理由となっています。

 

私はこのファウルについては直感的に「相手の大きなチャンスとなる攻撃のじゃまをする、または阻止するという戦術的な目的でファウルを犯す」に該当すると思いました。この場合何が「大きなチャンス」にあたるかがこの理由の適用の基準にもなります。

 

「決定的な得点の機会」と異なり、「反則とゴールとの距離」や「守備側競技者の位置と数」が判断基準となるというよりまさに「相手のゴールに向かって、攻撃をしかけられる展開の可能性が高いかどうか(たとえそれを守備側競技者に阻止されシュートまで行けなくても)」という曖昧で申し訳ないのですけど、このような定義をしているわけです。もちろん上記の「守備側競技者の位置や数」が全く関係ないというわけではありません。

 

この時、ではなぜ直感的に私が少なくともイエローを提示すべしと即座に判断したかというと武藤選手が完全にモンテル選手を振り切っていて(=モンテル選手がボールに向かって武藤選手より先にプレーできる可能性がない)モンテル選手が正当なプレーで武藤選手の動きを止めることはほぼ不可能な状態にあったからです。

 

すでに振り切られた状態の選手が相手選手に対していかなる形や強さであれど、その動きを阻止しようとする、または阻止することはサッカー競技において受け入れらない「ずるくて危険な行為」です。これぞまさしく「反スポーツ的行為」。

 

たとえ、それが足をちょっと出してつまずかせたとしてもユース以下の試合で行われたら(そして多分成人でも)迷わず警告を与えます。この場合は「大きなチャンスのじゃまや阻止」にあたる、あたらないということにかかわらず、また守備側競技者の位置や数にかかわらず、それ以上に、自分を振り切った相手のプレーに対して全く敬意を払っていない(もちろんそんな余裕は試合中には無いことは承知で)この行為が「許されざるもの」と思うからです。

 

以上、私流の二つのファウルに対する解釈と思いついたことです。視点は一つだけではないので皆さんなりに考えてみられるきっかけになれば幸いです。

 

では、I'll be back.