ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

「サッカー審判員の笛の吹き方教えます」詐欺!?(後編)

さて本日はU-10の公式戦で主審を務めました。実はこの試合で笛でのちょっとした「失敗」がありました。それは後ほど。

 

さて前回の続きです。

 

① まずボリューム豊かかつ鋭い音を出す

② 状況に応じて吹き方を変える

 

ということでしたよね。で、①と②の間が飛んでいる気がしたわけですけど、それは何かというと大きな音がでるようになったら、ちょっと強弱のつけ方もマスターした方がいいのでは?という考えです。

 

これ理にかなっているよう思われますけど、①が完全にマスター出来ていない状態でやろうとすると結局は弱くかすれた笛の音しか出せなくなったりします。まずこれから笛の音を改善しようと思われている方は、最初はあまり難しく考えずに力強い音をいつでも完璧に出せることを目指しましょう。

 

そしたらステップ②です。

 

さて笛を吹くべき状況は様々です。おさらいすると:

 

競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン

主審のシグナル

笛の使い方
次の場合には、笛を吹くことが必要である。
●前、後半の、また得点後のキックオフのとき
●次の理由でプレーを停止するとき
フリーキックまたはペナルティーキック
─試合の一時的な中断、または中止
─プレー時間がすべて終わった、前、後半の終了時
●次の場合にプレーを再開するとき
─規定の距離を下げたときのフリーキック
ペナルティーキック
●次の理由でプレーが停止された後にプレーを再開するとき
─不正行為に対するイエローカードやレッドカードの提示
─負傷者の発生
─交代

 

となります。では、例えば私はどのようにして状況に合わせて笛を吹いているかというと:

 

●前後半のキックオフ : ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」の冒頭2小節のフルートの独奏をイメージして長く息を吐くようにそして、すべてのフィールド周辺の空気を震わせるように

 

●得点後のキックオフ: ラベルの「ピアノ協奏曲ト長調」の第1楽章冒頭のムチの1打のように空気を切り裂くように「ピシィ!」と

 

●悪質なファウル(カード対象レベルではない): ストラヴィンスキーの「春の祭典」の入り乱れる変拍子の嵐をイメージしてスタッカートで

 

というような感じです。

 

・・・・というのは、大ウソでございます。

 

大ウソではございますけど、音楽と同じで音の長さ、強弱、リズム、数、色などの組み合わせになるのは確かです。上記の曲はどれも私が好きな曲です。冗談で書きましたけど、笛を吹く審判員の方がある曲想を浮かべながら感情を喚起しながら音を出すのはあながち間違った方法ではないのかもしれません。

 

で私の場合セレモニー的な場合(前後半開始時など)はJリーグ、海外のリーグの審判員の方々が吹いている音の状態とその時の仕草を観て自分がマネしたいと思う人の吹き方を実践しています。

 

でその他の状況の場合も含め結局は、前編でコメントいただいたように「そこにどれだけ(主審の)感情を乗せて吹けるか」に尽きると思います。

 

3級審判員を目指しての実技研修時にコーナーキックのケースでインプレーになる前のゴール前での小競り合いをマネジメントするという実戦形式の練習がありました。この時にインストラクターの方に対して選手に注意するために笛を吹いて介入する場合の「笛の吹き方を教えて欲しい」との質問が研修生からありました。

 

インストラクターの方はその答えとして2種類の笛の吹き方の「お手本」を即座にそして見事に実演されるや、「どちらも笛の吹き方として間違いではないし、これ以外の吹き方もあります。日本人はすぐに具体的な方法まで質問してお手本をマネしようとするけど、笛の吹き方は人によって異なってあたりまえ。皆さんなりの吹き方でいいんですよ」と海外での研修も多いであろうそのインストラクターの方はアドバイスしてくれました。

 

というわけで:

①だれか憧れ審判員の方の笛の吹き方のマネをしてみる。

②試合中は気持ちがこもれば自然と状況に応じて笛の吹き方を変化させられる。

とうことになるかと思います。

 

冗談半分で出した音楽の話で言うと、指揮者の方は多分基本的な指揮棒の振り方を指導者から会得しながらも、「この曲は自分はこのように解釈しているんだ」という確信のもと指揮をしていると思います。

 

サッカー主審も同じで「自分は今の事象やプレーをこう解釈したんだ」と確信があればその状況にあった笛を吹けると思うわけです。

 

実は本日のU10の試合で明らかな得点シーンがあり自分はゴールを決めた選手と並走する位置にいてゴール前までつめていたので直ぐに迷わずゴールの笛を吹いた(注:大会要項にて得点時は笛を吹くことになっています)のですけど、このときA1だった同期のKさんとアイコンタクトしてKさんがハーフウェーラインへ走り出す前に笛を吹いたのでした。で、瞬間自分もそのタイミングが早すぎることに気付きながらも吹いたので多分かすれたような笛の音になったのです(試合後、Kさんからも「笛のタイミング早すぎるよ~」の指摘ありました。反省)

 

このように心に迷いがあるとすぐに笛に直結してしまうんですね。

 

先日、ブロードキャスターで長年活躍されているピーターバラカンさんのトークショーをライブで見る機会がありました。このトークの中でバラカンさんは「声というのはウソがつけない。その人の気持ちや状態がすぐ表れる。」という趣旨のことを述べられてました。だからラジオはごまかしがきかないってことです。審判員の笛も全く同じではないでしょうか。

 

先日やはりU18の試合でご一緒させていただいた主審の方がイエローカード提示する結果となったファウルの時に吹かれた笛。「全員プレー停止っー!」っていう気持ちが一瞬にして会場全体に伝わる笛でした。

 

そしてレベルが異なりますけど、これまた自分が先日主審を務めた試合でユニフォームをあからさまに引っ張っている選手への笛。「こらこらそりゃだめよー!」ってリズムでした。「あれ?自分もこんな笛吹けるんだ」と思いました。確信をもった見極めになった(ならざるえない)結果ですね。

 

というわけで、新鮮味はなかったかもしれませんけど、これが笛の吹き方についてのお話でした。

 

普段は笛を吹く練習は出来ない(カラオケボックスしかない?)環境だと思いますのでここは練習試合でも公式戦でもより多くの試合で笛を吹くことをお勧めします。

 

では、I'll be back.