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ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

サッカー審判員の判定における「羅生門」(後編)

(前編のつづき)さて、イエローカードを提示したファルについてインストラクターの方からも「講習生」である4級審判員の方々からも「レッド」がふさわしかったと示され、自分の判断の正しさを感じながらも周囲の「違和感」があったことは素直に受け止めようとしていました。

 

と、その時一人のコーチと思われる方が私に近づいてきました。その方は、私がまさにイエローカードを提示した選手のチームのコーチの方でした。そして少し遠慮がちにおっしゃれらました。

 

「先ほどのイエローカードなんですけど、出された子に確認したら自分がファウルされたのにイエローカードだされたと言っているんです。その子の心のケアのためにもどうだったかをお聞きしたくて・・・」

 

がびーん!

 

その方の様子と言葉からすると:

 

1)自分も(その子が)ファウルしたようには見えなかった

2)主審はそもそも相手チームの選手のファウルとすべきだった

 

ということが瞬時にうかがい知れました。

 

この状況は前編でお話した、審判員の判定と周囲の認識の組み合わせの④のパターンになる(まあ私自身は②の組み合わせと思っている)わけですけど、同じ組み合わせである私の判定とインストラクターおよび4級審判員の方々の認識とは真逆なわけです。

 

このとき大袈裟にいえば私を襲った「恐怖」は二つ。

 

1)そもそもこの方が私のところに確かめに来てくれたからよかったものの、そのまま会場を去っていたら・・・・。

2)判定ミスをしたと思われている主審が判定理由など説明しても納得してもらえたかどうか。このときは多くの「目撃者」がいたのでよかったのですけど・・・。

 

というものです。

 

くどくなるのを承知で書くと、各人の事象に対する判定・認識は:

 

主審       : 無謀なファウルとして警告に相当。

インストラクター : 過剰な力によるファウルとして退場に相当。

4級審判員の方々 : 過剰な力によるファウルとして退場に相当。

ファウルをした選手: 自分のファウルではない

その選手のコーチ : 主審の誤審である

 

というものです。

 

このギャップこそが我々審判員にとってのプレッシャーとなる要因であることは間違いないでしょう。

 

さて私はそのコーチの方に「ファウルがなかったどころか、今しがたインストラクターの方やここにいる審判員の皆さんからあれはイエローではなく、レッドにすべきだったと言われたばかりなんですよ」とお伝えしました。そのコーチの方はそれを聞いて最初は意外という様子でしたけど反論したりそれ以上驚く様子もなく納得して引き揚げていかれました。ということでホッとした私は・・・とはなりません。だって肝心の選手自身が「ファウルされたのに警告された」と思っているわけなんですから。しかし今さら私が直接説明に行くわけにもいかず・・・なわけです。

 

なぜこのような、認識の違いが生まれたのか?私なりに振りかってみると、まずファウルを犯した選手のコーチの方々からはちょうど死角になって事象がよく見えなかったのではと推測します。

 

そのファウルの状況自体についてあまり詳しく書いてなかったですね。状況としてはペナルティエリアに近づいたところで、ボールを中心にかなりプレーヤーが密集しながらボールを奪い合っていたところ、自陣ゴールに向かって正対した守備側選手がボールの間に体をいれてボールをキープしようとしたところに背後から攻撃側選手がドーンとぶつかるようにチャレンジ(幾分プッシング気味に)して倒してしまったいうものです。

 

ちょうど、そのファウルした選手のベンチ方向からだと私の背中で視界が遮られ、逆にインストラクターの方やその他の審判員の方々からは角度がついてよく事象が見えたのではと思います。

 

この事象が発生した時私はファウルを目の前で目撃していますので近すぎるというかポジションとしても反省すべきだったように思います。ただそのことで誰よりもよく事象が見えたし、その時の選手の意図もはっきりと感じ取ることができたと思いました。その結果が私はイエローでありフィールドの外で中央やや反対側のハーフエリア寄りから見ていたインストラクターの方たちとの認識の差になったようにも思います。ただ、「多数決」で言えば私の「負け」。いずれにしても警告か退場かの判定で違和感が起こることは避けなければならず、私の判定に説得力が足りなかったことは素直に受け入れる必要がありますね。

 

と、言いながら一番気になるのはファウルをした選手自身の認識です。ここが最大の学びで私がカードを提示する前に彼を落ち着かせ、きっちりと提示理由を説明したかということです。4種の場合は特に(で4種だけでなく)他の選手にもはっきりと分かる形でカードの提示の理由を(なぜそれがダメなのかを具体的に)伝えそれ以上のファウルや反則、不正行為などが起こることを防止することが大切です。

 

私自身も余裕なくふるまっていたかもです。うーん直接選手と話したい・・・と思っていたら、さきほどのコーチの方がわざわざ戻ってこられて「どうやら気持ちが動揺して混乱していたようで話を伝えたらカードを出されたことにも納得してました」とのことでした。

 

私もその選手が「ウソ」をついたのではなく、やはりその年齢における精神状態とか動揺なんかもあったのかなと思いました。だからこそ、審判員の配慮が求められるともあらためて思い知った次第です。

 

それにしても、そのように非常に丁寧なコーチの方だったことと、その日はインストラクターの方という権威、そして他の審判員の方々という証言者がいらっしゃったので「救われ」ましたけどもしコーチの方が疑問を持たれたまま会場を去っていたら、証言者の方々がいなかったら・・・霊媒師の方がいるわけではないので(わかるかな~)真実は「藪の中」に・・・うーんこれぞ、サッカー審判員の「ほんとにあった怖い話」になるとこでした。(よろしければこちらの記事もどうぞ→「 「去年マリエンバートで」-サッカー審判員の記憶と記録の狭間 」

 

では、I'll be back.