ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

「サッカーと音楽」シリーズ 第二回 ~ 「おせっかい」?それとも「恐れ知らずの愚か者」?(前編)

さてリヴァプールといえばLiverpool FCリヴァプールFCというわけで、その熱烈なサポーター(いわゆるKOPですね)の応援歌といえば”You'll never walk alone"ですね。

 

というわけで、今回の一曲はこの曲かといえば、この曲が使われているあの曲です。と・・・焦らす間に「あれね。」と思い浮かんだ方は・・・立派なブリティッシュロックオヤジです(女性でもこう呼んで差し支えないでしょう!?)。

 

そうです、今回ご紹介するサッカーにちなんだ曲とはPink Floydピンク・フロイドの1971年11月にリリースされたアルバム「おせっかい (Meddle)」の3曲目「Fearlessフィアレス」です!

 

音楽好きな筆者にとって古今東西のアーティストの中でもやはりピンク・フロイドは別格の存在です。とは言ってもバンドのリーダーとも言えるロジャー・ウォーターズが脱退した(認めていない?)1987年以降のピンクフロイドが作った楽曲は別物に聞こえ、90年代以降のアルバムともなると聴いてもいない有様です。

 

で、今回取り上げる「フィアレス」が入っているアルバム「おせっかい」(この日本タイトル名はいいですねえ)は筆者が高校生の時に(もちろんリアルタイムではありませんけど)ピンク・フロイドと出会ったときに一番最初に好きになったアルバムです。確か一番初めに聞いたアルバムは「狂気 (Dark Side of the Moon)」だったはずで何時もつるんでいた友人から借りたカセットテープで聴いたわけですけど、あまりピンとこなかった(もちろん今ではご多分に漏れず愛聴盤であります)。なぜ、「おせっかい」を好きになったか当時からうまく説明できず、もちろんB面をすべて使った大曲(傑作)「Echoesエコーズ」をはじめとした各曲の素晴らしさにあるわけですけど、なんかこのアルバムのもつ独特な響きそして雰囲気に魅入られたって感じがします。そうこのアルバムは独特の響きと雰囲気を持っていて、のちのちピンク・フロイド的な音楽といえばこのアルバムをさすともいえるほど、このバンドの音楽的特徴を一番わかりやすい形で表しているアルバムといえるのではないでしょうか(ただしA面の楽曲だけで判断すると必ずしもそうとは言い切れないんですけど)。

 

うーん、またもやサッカーの話題どころか「フィアレス」という曲自体にも辿り着けていませんね。長い前置きになっているような気がしますけど・・・このまま続けます(確信犯)。

 

さて、独特の響きと雰囲気を持つアルバムであると「おせっかい」について書きましたけど、それはこのアルバムの主役ともいえる大作(傑作)「エコーズ」の力とも言えます。実際、この「エコーズ」におけるフロイドの各メンバーの演奏や創作は各人の個性が一番よく出ていると思います。なんせ「狂気」以降はますますロジャー・ウォーターズのリーダーシップ(わがまま?)にけん引されてロジャー色が強くなるのですから、ある意味ロジャー・ウォーターズデヴィッド・ギルモア、リック・ライト、ニック・メイスンの4人が対等かつ有機的に音を紡ぎだしていた最後のアルバムかもしれません。

(昔お仕事で一緒になった方でフロイドファンの方がいて、一番好きなアルバムに「おせっかい」を挙げていました。「狂気」以降はあまりお好きではないとのこと。結構このようなオールドファンの方は多かったりします。で、若いファンの方には煙たがられたりします・・・(- -;) )

 

私自身は「おせっかい」が最初に好きになったアルバムで今でも特別な愛聴盤ではありますけど、ロジャーが提示する世界観が好きなので当然「狂気」以降のフロイド教の信者でもあります、はい。

 

さて、ここまで来たらもっと脱線して(どこが本線かはまだ不明)書くとB面の「エコーズ」の魅力は音の響きの素晴らしさにあるかと思います。それはヴォーカルの入る前半と後半の部分(もちろんここも良いわけですけど)ではなく「間奏」部分のニックのドラムとロジャーのベース(これはデヴィッド・ギルモアによるプレーかもしれません。というのは演奏技術がバンドメンバーの誰よりも上のデヴィッドはロジャーの代わりにベースを弾くことも多々あったので)による単純なリズムが延々と繰り返されそこにデヴィッドのギターそして後々あまり聴くことの出来ないリックのクールなプレイ(ほんと単純だけどカッコいい)-リズミックな高音を中心としたキーボード(たぶんハモンドオルガン)の響き。そして後半のボーカルパートに向けてのクレッシェンドで盛り上がっていく部分のニックの叩くシンバルの音。演奏技術のなさが逆に功を奏して?延々と単調に8ビートを刻むこのシンバルの響きもいいです。で、もちろんデイッド・ギルモアのギターはこれまた絶品。あれ、リーダーは何処に・・・?この曲で演奏するロジャーの姿は見えずですけど彼の歌詞はこの曲の世界観を見事に表現しております。ただ曲の構造は「神秘」「原子心母」というアルバムの大曲と同じで、これぞピンク・フロイドフォーマットなので、ロジャーはこの辺の構成については中心になって構築したはずですし、なによりも冒頭にリックが作った潜水艦のソナー音のようなエコーが効いたピアノの音からして(この音がこのアルバムのすべてを表現しているともいえるでしょう)、音の響きを研ぎ澄ますことに彼が最大限神経を集中させたことは間違いないでしょう。まさにエコーズ(反響)ですな。

 

この曲が与えた影響力は大きく、ピンク・フロイドはあまりカバーをされることのないバンドですけど、その音の響きは時を超えて若いアーテイストの感性を揺さぶったようです。例えば、たまに無性に聴きたくなるアレックス・パターソン率いるジ・オーブの1992年の作品「U.F.ORB」とか・・・まあ、「プログレッシブ・ハウス」なんて呼ばれていたようですし。もっと適格な呼び方は「アンビエント・ハウス」か。アレックスはブライアン・イーノ(この方もわたしには別格です)を敬愛していたようです。

 

極めつけは直接「おせっかい」の音を引用(サンプリング)している、これまた1992年リリースされたスイスのバンド「The Young Godsザ・ヤング・ゴッズ」による快作アルバム「T.V.SKY」です。8曲目の「Summer Eyesサマー・アイズ」・・・これまんま「エコーズ」です(苦笑)。でもパクリとかじゃなく、抜群のセンスで再構築してフロイドに敬意を表しています。やはり彼らもエコーズの「間奏」部分に魅入られたか・・・(サンプラーを駆使して構築した曲作りながら彼らはとても才能溢れるアーティストなので以後のアルバムも含めぜひお聴きを!国内盤出なくなったのはなぜ・・・?)。

 

 どうせここまで来たんだから?「エコーズ」についての私論を。

 

この「エコーズ」だけでなく、A面の4曲目「San Tropezサン・トロペ」も含め、南仏の田舎の海岸の雰囲気を感じます(って行ったことはないですけど)。まあ、「サン・トロペ」なんてもろ、南仏の地名なわけです(Saint-Tropezが仏語での正しい綴りか)。で、「エコーズ」自体も歌詞が描く情景そして音、特にピンク・フロイドお得意の美しいカオス(ノイズ)状態のクライマックスにむけての中間部のサイケデリックトリップ的音響(リックの弾くムーグシンセサイザー?デヴィッドのエフェクターもしくはエコーユニットを通したギター?カモメの鳴くようなノート)がさっきまで太陽の光が燦々と降り注ぐ真昼でありながら急に闇になったかのような海の風景を強く浮かびあがらせます。

 

その南仏つながりというわけではないですけど、ドビュッシーが作ったピアノ作品「前奏曲第一巻」の10曲目「沈める寺」を聴いていた時に、まさに「エコーズ」の響きを思い出してしまいました。この「沈める寺」はフランスのブルターニュ地方に伝わるイスという海辺の都市についての伝説にドビュッシーがインスパイアーされ作曲したたそうです。曲が出来てからタイトルを付けたのでは?・・・という風には考え難いほど、ここでのドビュシーの音の配分は素晴らしく冒頭から間もなく奏でられる最大の盛り上がりでは海に沈んだ寺(教会)が海上に浮かび上がり教会の鐘が鳴り響く幻想的な情景が感動的に描き出されています。そしてその後また海に沈んでいく様子も見事に音で表現されています。ここでもやはりエコーズ(反響、響き)がテーマのように思われます。簡単そうに聴こえて譜面を見ると難しいドビュッシー。この盛り上がり部分での音の残響のさせ方、特に低音部の効果的な使い方はいつ聞いてもシビれます(もはや一人宴会状態でごめんなさい)!

 

そうなんですね。音の響きの探求がテーマと思われるところが「エコーズ」と「沈める寺」が共通性を感じさせてくれるところでもあり、素直にそれぞれの曲の構成を見てもピンク・フロイドドビュッシーのこの「沈める寺」をモチーフに作曲したのではと思わせる相似性があります。「エコーズ」もすべての音が海底に戻っていくかのようなエンディングですし、何より冒頭のピアノの音は「同じ曲?」と思わざる得ないほどの似かたです。ただ実際はピンク・フロイドがこの曲を参考に「エコーズ」を作り出したかと言えば、それも考えにくく、そのことはこの曲の作曲方法がドビュッシーがとったであろうアプローチとは大きく異なることからも言えると思います(これは後程)。

 

さて、ここでようやくリヴァプールFCサポーターが歌う”You'll never walk alone"が登場します。「おせっかい」のA面3曲目として収録されている「フィアレス」には本拠地アンフィールドでこの”You'll never walk alone"を歌うサポーターの歌声、歓声、口笛などが使われています。あとで詳しく書きますけど曲の中に曲があるという構造なんですね。で、このリヴァプールFCのサポータが歌う”You'll never walk alone"も大きな「響き(エコーズ)」なんですね。力強いシュプレヒコールを挙げる群衆の響きというのが最初の印象です。

 

エコーズ、沈める寺、フィアレスそして”You'll never walk alone"と「響き」の連なりがテーマのように思われる楽曲。実はピンク・フロイドは単純にこの響きが欲しくて”You'll never walk alone"をサンプリング(当時はサンプラーなどないのでこの言葉は適当ではないんですけど)した!・・・・のではないですね。

 

さてもうかなりの方々が最後まで読むのを辞められたと思いますけど、このまま次回は「なぜピンク・フロイド」は”You'll never walk alone"を自作に引用したのか、しかもリヴァプールFCサポーターがアンフィールドで歌う声を使ったのか?に迫ります!!そして、その謎ときによってリヴァプールFCサポーターの歌声はそして「フィアレス」のメッセージは40年以上の時を経てまもなくクライマックスを迎える岡崎選手所属のレスター・シティへのメッセージにもなっていることが明らかになります!!!

 

中編に続く。

 

では、I'll be back.