ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

ボールがオフサイドラインになっている場合の判定 「忖度」してはならない!

自分も以前から(未熟さゆえ)「難しいなあ~」と思っていた判定の例が、かつーさんの記事にありました(こちらです →  「2017UCL準々決勝2ndレグ R.マドリー対B.ミュンヘン 」)。

 

一番最後のオフサイドの反則「誤審」のケースとなったクリロナ選手のハットトリックのプレーです。

 

このように攻撃側選手が最終ラインを置き去りにしてボールをドリブルしながらゴールに向かう場合、副審がキープすべきオフサイドラインはボールとなります。なのでボールより味方攻撃側選手の手と腕以外の体の一部が相手ゴールに近いと、その選手はオフサイドポジションに位置していることになります(ちなみに攻撃側選手の髪型が極端に前方に突き出たリーゼントの場合、それは体の一部とみなされるのかどうか?ということが現在FIFAでも議論になっています・・・なわけないか。失礼)。

 

さて、このケースの場合のオフサイド判定の難しさの要因は以下の四つに大別されるかと思います。

 

①走力

②視角

③錯誤

④雰囲気

 

ここからは(というか常にそうですけど)あくまで4種を主に担当する未熟審判員の視座からの要因としてお読みください。

 

ではまず①。かつーさんも書かれているようにトップスピードになった攻撃側選手に副審が追いつけない状態ですね。4種の試合では追いつけないなんていうことは決してあってはならないでしょうし、上のカテゴリーでも副審に求められるのは「即加速、即停止」。早瀬左近の乗るポルシェカレラRSRターボの並みのパフォーマンスが要求されます。

 

②は見る角度ということなんですけど、当然ながらドリブルでゴールに向かって駆け上がる攻撃側選手と並走するにはサイドステップでは無理なので視線だけをフィールド側に向けた状態で全力疾走となります。正確にラインを目測する精度はフィールドと正対している場合と比べると劣ってしまいます。

 

③は「事象と認識のギャップ」です。ヘンな言い方ですけどこれ侮れません。競技規則上では理解出来ていても突然最終ラインが守備側競技者からボールになった場合にラインの修正が脳内で出来ないままオンサイド、オフサイドの判断をしてしまうことがあるわけです。

 

そんなことあるの?と思われるかもしれませんけど、例えばクリロナ選手の場合のような分かりやすい状況とは異なりゴールエリア内での混戦から1m程度ゴールに向かって攻撃側選手がドリブルで抜け出た状況を想像してみてください。この時最終ラインが守備側の2番目の選手からボールに「入れ替わったら」・・・。もっとパズルのような状況はゴールキーパーが最終ラインより前方に出ているとか同レベルとかになっていたら・・・。これを一瞬で判断する必要があるわけです。

 

話をかつーさんの記事にあるクリロナ選手のケースに戻します。このケースでは映像を見る限りクリロナ選手はボールの最終ラインより相手ゴールに近い・・・つまりオフサイドポジションにいます。

 

さてこの時注意が必要です。それはくどいようですけど監視すべきオフサイドラインはドリブルしている攻撃側選手ではなくボールだということです。「へっ?そんなの同じでしょ」と思われる方もいらしゃるかも知れません。ところがドリブルしているボールがその選手の足元よりかなり相手ゴールに近い(前方に蹴り出されている)ことも大いにあり得ます。この場合必ずボールの真横から監視していなければなりません。このケースの誤審はクリロナ選手の場合とは逆でオンサイドなのにオフサイドと判定してしまうことでもあります。

 

錯誤というものが生じる根本原因はやはり習慣の力のようにも思います。つまり大半の場合最終ラインは守備側選手で形成されており、ボールを最終ラインとして監視する時間はそれに比べてとても短い(=慣れていない)ので脳内での「最後から2番目の選手⇔ボール」という切り替えがスムーズにできないというわけです。

 

さて④はなにかというと、大抵のクリロナ選手のようなケースでは守備側競技者は振り切られているので自分の位置からオフサイドかオンサイドかの判断ができなくなります(すでに自身は最終ラインではないので)。またこのようにドリブルでゴールに迫るプレーというのはスピード感および緊迫感満載のまさにサッカーの醍醐味に溢れる瞬間だったりするわけです。

 

守備側選手から手を上げてのオフサイドアピールもなければ、ゴールに向かっている攻撃側選手の攻撃をゴールキーパーが止められるのかそれともシュートされたボールがゴールネットに突き刺さるのかの1点に観客のみなさんの興味も絞られている、つまり「その瞬間を観たい!」という期待を感じてしまうわけです。もちろんラインを基準に正確に雰囲気に影響されることなくオンサイドかオフサイドの見極めを行います・・・行いますけどやはり過去思い返せば雰囲気を読んで「忖度」していたケースがあったように思います(遠い過去です!)。つまり「ちょっとだけ体が前に出ていてオフサイドだけど、守備側からの異議も全くないし、攻撃側選手やベンチや応援団も盛り上がっている・・・なにしろナイスプレーだから・・・このままゴールに・・・」ってわけです。ココデ ハタアゲタラ クウキヨメテナイ。

 

とまあ、ここまで書いてきてなんですけど、周囲の雰囲気で流されるようでは副審としては不合格です。たとえ目の前のプレーがゲームの展開として素晴らしいものでもダメなものはダメ。すこしでも受け手の攻撃側選手がボールより前方にでていたらフラッグアップです。

 

ただこの雰囲気に流されてしまう本当の原因はボールがオフサイドラインになった場合に副審がラインをキープ出来ていない、つまりラインより後方から追いかけているポジションでの監視になっているため攻撃側競技者のポジションを正確に判断できないことにあると考えます。つまり仮にオフサイドのような印象を持ったとしても「見てもいない」ことに憶測でシグナルを出すわけにはいかないということです。

 

いずれにしても要因はともあれ得点ではなかったものを得点にしてしまう、もしくは得点できていたのにプレーを止めてしまう・・・といった誤審は絶対に防ぎましょう。

 

全く視座を変えると、副審の方の技量によっては主審自ら最終ラインを監視してオフサイドの判定を行うことも必要となります。副審まかせではなく自身の走力とカテゴリーのレベルを考慮しながらチャレンジしてみてください。

 

では、I'll be back.