ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

ボールボーイ(パーソン)に乱暴な行為をしたら・・・。

まずはこちらの公式動画をご覧ください。

 

千葉が高橋と指宿のゴールで徳島を下す【ハイライト:明治安田J2 第10節 千葉vs徳島:Jリーグ.jp

 

今回の場合実際の事象を正確にご理解いただくために、文章では事細かに再現いたしません。さて、この事象を目にした場合、もしあなたが主審ならどのような判断と対処をしますか?

 

「え~っと、どうしょうかなイエロー以上は確定のような、待てよ・・・カードの対象になるのか?この場合・・・う~ん口頭で注意もあり・・・?」なんてよもや迷ったりしないですよね。

 

実は偉そうに書いていますけど、私もこんな場面に主審として出くわしたら咄嗟に判断できないで「反スポ・・・かな?ということはイエロー・・・。」なんてやりそうです。いわゆる「困ったときの反スポーツ的行為」ってやつ?ですね。確かに反スポは広範囲な不正行為を網羅しておりますけど、それに対する懲戒処置は警告なわけです。では再度公式動画をご覧ください。これが警告で妥当な行為なのか。つまり徳島ヴォルティスの馬渡選手に試合に続けて参加することを認めていい行為なのか・・・?と考えれば、それはあり得ないですね。

 

正直に言ってこれを咄嗟に判断できない遠因は選手間での乱暴な行為ではないということもあるかもしれません。つまり競技者以外にこのような行為を犯すことに出くわすケースは、多くない(というか私は経験なしです)ということです。「選手が競技者以外に・・・えっーと」なんて考えるようでは審判失格。ここで、やはり役立つのは競技規則の文言をちゃんと咀嚼して覚えておくということではないでしょうか。

 

公式発表はまだのようですけど、今回の馬渡選手の退場理由は「乱暴な行為を犯す」となります。

 

この「乱暴」っていう言葉が曲者でどの程度なら乱暴かって話にも成りえます。なので具体的に咀嚼しておく必要があります。とまた偉そうに語ってますけど今回のケースがあるまではわたしも次の競技規則にある文言をちゃんと読んで覚えておりませんでした。

 

乱暴な行為

乱暴な行為とは、身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールに挑んでいない ときに相手競技者に対して、あるいは、味方競技者、チーム役員、審判員、観客またはその他の者に対して過剰な力を用いたり粗暴な行為を行う、または、行おうとすることで ある。 加えて、競技者がボールに挑んでいないとき、意図的に相手競技者やその他の者に対し て頭や顔を手や腕で打つ場合、その力が微小なものでない限り、乱暴な行為を犯したこ とになる。

(下線筆者)

 

このように競技規則上では:

ボールパーソン=その他の者

馬渡選手の行為 = 粗暴な行為 (ちなみに英語では乱暴な行為はviolent conduct、粗暴な行為は brutality となります)

ということですね。

 

この「その他の者」とか「粗暴な行為」って言葉を覚えているだけで事象に対して的確かつ迅速な判断が出来るように思います。ただその場に突然出くわしたら・・・。

 

ちなみに競技規則英語版にあるbrutality って言葉を辞書にあるような「残忍な行為」とか「蛮行」って日本語ではなく「粗暴な行為」とした日本語訳はナイス!でございます。

 

言葉ってやはり重要だよな~と思っていたら複数の報道では馬渡選手の退場理由が「非紳士的行為」って書かれていますけど、競技規則にはそのような文言も退場理由もございません。(例えば女性の試合を考えただけで、この言葉の奇妙さに気付くはず)。蛇足ながら紳士的って言葉は「紳士らしく、上品で礼儀正しいさま。また、相手との相互信頼を前提にして行為すること。」と辞書では定義されていますけど、徳島ヴォルティスの馬渡選手の行為は「そのようなふるまいではなかった」の範疇をはるかに超えた不正行為です。

 

今回の場合、馬渡選手はボールをボールパーソンの方に投げ返している(突き返している)ようなので以下の競技規則も頭に浮かびます。

 

物(またはボール)を投げる反則

ボールがインプレー中、競技者、交代要員、交代して退いた競技者が物(ボールを含む) を相手競技者やその他の者に対して投げつけた場合、主審はプレーを停止し、次の処置 を取らなければならない:

•  無謀な場合:反スポーツ的行為として警告する。

•  過剰な力を用いた場合:乱暴な行為として退場を命じる。

 

この条文に引っ張られて考え過ぎない・・・というか、一連の事象を見極めて判断して的確な懲戒処置をとる必要がありますね。

 

それにしても馬渡選手、乱暴な行為を犯したあと主審に対してボールパーソン(の方向と思われる)を指さしながら何か言っているようですけど、プロとして感情をコントロール出来なかった自らの非を即座に認めて欲しかったですね(コノヨウナ ソブリハ カッコワルイ ミットモナイ)。

 

あと徳島ヴォルティスのサポーターが試合後にボールパーソンに水をかけるという事態も発生したようで、残念としかいいようがありません。主審が試合前の点検でフィールドに入ったときから試合終了後にフィールドを離れる前にこのような行為が競技者、交代要員、または交代して退いた競技者によって行われたら即レッドですね(ベンチ役員なら退席)。

 

いずれにしても後味悪し。ボールパーソンが遅延したなんて言い分で馬渡選手の行為が情状酌量になるものでもないです。鈍感なオッサンの私でも好きなサッカーでこのような目に遭ったらトラウマになります。十分なケアが彼に与えられることが審判員としての私からのお願いでもあります。

 

では、I'll be back.

 

追記:自分で「言葉ってやはり重要だよな~」といいながら最初記事中で「ボールボーイ」という表記を(違和感持ちながら)使っておりました。自省と共に「ボールパーソン」という表記に訂正させて頂きます。また徳島ヴォルティスの公式謝罪文によると試合後別のボールパーソンに向けてスタンドからかけられたのは「アルコールと思われる液体」とのことです。