ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

サッカー審判員が桃太郎侍になる時。

  先日BSプレミアムを見ていたらビートたけしさんの番組の再放送があり「殺陣師」のお仕事を紹介していました。時代劇には欠かせない立ち回りシーン。歴代のスターが紹介されておりましたけど、私がかって最も衝撃を受けて虜になった立ち回りは勝新こと勝新太郎さんの動き。いや~さすが不世出の天才。スピード、キレ、そして踊るが如くの立ち回りにはシビレます。

 

なんでもかんでもサッカー審判と無理やり結びつけるわけではないですけど勝新のような動きで主審なんかやったらカッコいいだろうな~。脱線ついでに言うと座頭市が主審やったら・・・音と気配だけでファウルを見極めて笛吹いて・・・カッコ良過ぎ~・・・ってナンノコッチャ。

 

ところで、この回にはゲストとして高橋英樹さんが出ていました。で、高橋さんと言えばやはりあの「桃太郎侍」です。勧善懲悪の時代劇の筆頭ですな。もはや偉大なるワンパターンゆえのカタルシスの大きさでは「水戸黄門」や「遠山の金さん」に並びますよね(なんか時代劇評論になってきたな・・・)。

 

で、「桃太郎侍」のセリフと言えばあの悪党たちを成敗するクライマックスシーンでの「ひとぉ~つ、人の世の生き血を啜り。ふたぁ~つ、不埒な悪行三昧ぃ。みっつ醜い浮世の鬼を 退治てくれよう 桃太郎」が有名ですけど、その前のシーンでもお決まりのあのセリフがありますよね。

 

それが「許さん!」です。

 

そう、悪党の悪行三昧の被害にあった人々を見た桃太郎侍怒髪天を衝く、まさにあの特撮映画の傑作「大魔神」の中で大魔神が民衆を虐げている悪人たちに怒り柔和な埴輪の表情から恐ろしい形相に変わる瞬間のように、浪人侍が鬼退治の怒れるターミネーターに変わる瞬間なのです。まさにこの「許さん!」が決して見逃すことが出来ない事が行われたという認定であり基準となっているのです。

 

というわけで?ここからが審判のお話。そうこの「許さん!」っていう基準が審判員にも必要って話なんです。

 

この「許さん!」には語感通り、極めて強い意志が込められています。

 

例えばフリーキックでの再開時にボールは静止していなければならないわけですけど、「ちょっとぐらい動いていてもいいかな~」ということを許してはダメです。これはいわゆる「マイクロマネジメント」になりますけど試合全体のマネジメントに影響を及ぼす重要なマイクロマネジメントだと思います。逆に悪いマイクロマネジメントとは目的が置き去りにされて、マネジメント自体が手段から目的になっているような状態を指します。でも、今回の「許さん!」はこのような「いい」マイクロマネジメントを指してはいません。今回の「許さん!」はあなたのサッカー観、いや人生観にかかわるといっても過言ではないでしょう。子育てや育成なんかにも通じるものでしょう。

 

つまり目的を置き去りにしたままの過度の干渉や指示(=悪いマイクロマネジメント)は避けながらも「子供がXXXの言動をしたら絶対にそのままにしない」というあなたの方針や信念に基づいた「許さん!」と同義なのです。

 

それは選手やベンチ役員による異議すれすれの言動に対して柔軟かつ毅然と硬軟両方のアプローチを使い分けながらも、「この言動は絶対許さん!」という基準を持つということです。

 

例えば選手たちと和気あいあいとしたコミュニケーションを続けていたとしても「これを言ったら許さん!」という基準です。ベンチ役員がつい冗談で言った人の尊厳を傷つける、もしくは暴力行為を喚起させる言葉、これもあなたの基準で「許さん!」なら曖昧にしてはだめなのです。

 

プレーにおいても「許さん!」があるはずです。ボールを全くプレーする気がないことが明らかで、空中にいる不安定な状態の競技者へのトリッピングや全力で走っている選手の後方からのタックル等々、これらは限りなくカードの対象の可能性が高いプレーでもあります。そしてなにより危険なプレーかつ悪意のプレーです。この中でもさらにこれだけは絶対やってはダメというプレーそれが、「許さん!」です。

 

でも今回の「許さん!」はあなたのサッカーに対する価値観や信念と密接に結びついている審判員としての基準なのです。たとえ周りの空気に抗っても貫き通すべき基準なのです。

 

たとえ軽口でもたとえ冗談のような仕草でも:

 

●差別

●暴力

●生命への冒涜

 

を示唆したり意味したら「許さん!」というのが私の基準です。つまり退場もしくは退席ということですね。

 

とまあ、偉そうにいったもののこれを一貫して実行することはまさに審判員としての戦いでもあります。桃太郎侍への道は簡単ではないのです。

 

では、許さん・・・じゃなく

 

では、I'll be back.