ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

私論カテゴリー別サッカー審判法 傾向と対策

先月、今月と実戦の機会が多くあり、やはりあーだこーだと理屈をこねたり言葉を連ねるより1回の笛、1回の旗の経験から得られるものは多ございますと再認識した次第。

 

とは言いつつも今回も、またまた理屈をこね言葉を連ねてみます。

 

さてファウルをどうやって見極めるのか、そもそも何を監視すべきかという問題が常に審判員にはつきまとう(というかそれこそ頭では分かっているけど出来ないという問題な)わけです。

 

ここでまずひとつのヒントとして審判員の立場から見たカテゴリー別の(ファウルに限らず)傾向を書き出してみたいと思います。でもこれはあくまで私の限られた試合経験の中でのインプレッションに過ぎません。ですので皆さんなりのカテゴリー別の印象を思い出されながら「ちょっと違うなあ~」とか気楽にご批評ください。逆に言えば様々なカテゴリーを経験することは引き出しも増え、気付きも多く、自信にもつながるということです。*ここでいう「カテゴリー」とは競技種別のことです。

 

まず4種。

U12とかU10とかU8とかカテゴライズされますけど分かりやすく学年で言えば小学生ということになります。成長曲線の傾斜が一番急なカテゴリーなので(=1~2年差で体力やスキルや知識や精神力がかなり異なる年代である)独断と偏見で3つに区分します。

 

1.小学校1~2年生

1年間で子供は競技者としてずいぶんと成長するにもかかわらず、ここではその差を無視して乱暴にひとくくりにしています。この学年は普段あまり運動されないお父さんお母さん審判の方々にも体力的に「優しい」カテゴリーです。それなら審判デビューはこの年代からかというと、実はあまりお勧めできません。なぜなら「え~そんなことするの」という予期しない展開や行動を子供たちがとり、競技規則をよく理解していないと適切な対応が出来なくなる可能性があるからです。また子供たちが勝手な解釈や判断でリスタートの方法や判定結果を間違えたりすることもあるので、手短な分かりやすい言葉で指示を出して細かくマネジメントすることも時には求められます。 オフサイドラインは「線」にはならず、誰が最後から2番目の選手なのか目の前の映像を素直に捉えることも求められます。上級審判員でも勉強になるカテゴリーです。

 

2.小学校3~4年生

主審や副審などお父さんお母さん審判員がデビューされるにはちょうどいいカテゴリーのように思います。ただ久しく担当していないので、この辺の私の感覚はズレているかもしれませんけど・・・。ちなみにこのカテゴリーまでなら副審はほぼ全てサイドステップでフィールドに向かって正対したままオフサイドラインをキープできるようにしましょう。

 

3.小学校5~6年生

Jリーガーのふるまいも真似ます。異議だって言います。個々人の主張がプレーにも言動にも明確に表れます。主審として下手なポジションなんかとろうものなら「邪魔だよ!」なんて言われます。ファウルをとれていないとハーフタイムにベンチへ引き上げる選手から「XX番のファウル見ててくださいよ」なんて言われます。ベンチも黙ってないです(チームの「社風」によりますけど)。卒業が間近な場合「思いも」増しますのでひとつひとつの決定に対して応援団のボルテージも上がります。ただ体力的にはハーフは通常20分の試合時間40分なので、スタミナ切れなんて許されません。副審もよほどのトップスピードでない限りできるだけフィールドに正対してサイドステップ。競技者、ベンチ役員、観客からの精神的なプレッシャーも、このカテゴリーでは涼しい表情で受け止めましょう。一方で体格、体力、気力とも小学生の中で一番充実する時期なのでラフプレーなどによる警告また過剰な力や著しく不正なファウルによる退場も常に視野に入れておきましょう。

 

4種全般に言えることですけど、戦術理解や技術の未熟さからプレーの展開が予測できない部分があり、審判としての動きやポジションの取り方が3種以上のカテゴリーより逆に難しいということがあり得ます。この辺は主審のトレーニングとしては適切な負荷がかかり、いいかもしれませんけど。

 

次に3種。

 

これも細分化できないわけではないのですけど、ざっくり言うと中学生、U15ということです。このあたりからチームの指導方針(もしくは技術)、戦術、カラー等々によってかなりチーム間の実力差や個性が顕著になってきます。逆を言えば審判員としては上記のような各チームの傾向を事前にインプットしておくことはジャッジングやマネジメントの助けにもなるということです。

中学の3年間もまた成長率の著しいステージでもあるので例えばU13ですとリーグや試合の都合上、一人審判員なんてシステムもあったりします(これは避けたいですね)。3年生になると体力的にも技術的にももう小学生の延長ではありません(場合によっては飛び級で上のカテゴリーでプレーする選手もいますよね)。ただ一般的には中学生と高校生の間には高い段差があり、やっはり競技者としての体力的精神的タフさは高校生になってグッと鍛えられるように思います。

 

さて4種と比較した場合の違いはまず試合時間とフィールドの広さに現れます。

 

U15の試合時間は35分ハーフの70分とか40分ハーフの80分が標準だと思います。普段どのカテゴリーを中心に審判業務を行っているのかでこの試合時間を「長い」と思うか「短い」と思うかの体感が変わってくると思います。またフィールドの広さで言えば大会によっては2種や1種の試合で使用するスタジアムや競技場をそのまま使用することもあるわけで、審判員としての走行距離や監視すべき範囲は4種と比べて大きく広がります。

 

さてチームごとの実力から見てみると、技術、戦術レベルの高いチームであれば明確な意図や連携意識で正確なボール回しを行なってきます。主審はプレーの展開の予測がし易く、滑らかな動きと適切な距離でのポジションがとりやすくなります(ただし適切な監視角度を常に保てるかは主審の技術に負うところが大きいですね)。副審も明確なラインキープが可能となり、ラインの上げ下げのタイミングや意図も明確で動きのリズムが掴みやすいと思います。

 

一方でスピードは4種とは明らかに違ってきますので、走力やスタミナは求めらます。副審はゴールキック時にゴールエリア内に確実にボールが静止した状態で置かれたことを確認後すばやく最終ラインに戻っていく必要があります。GKによるパントキック時も同じくペナルティーエリアの外に出てボールを手で扱っていないかを確認しキックされたのと同時に最終ラインまでダッシュで戻ります(動きとしては4種の審判時と何ら変わりありません)。裏スペースの抜け出しにも遅れることなく(かと言って最終ラインより前のめりにならないように)スプリントをかける必要があります。これらの動作を正確に繰り返す体力と集中力がより求められるということです。

 

ファウルで注意すべき点は、実力差があるチーム間での対戦の場合、片方のチーム(実力がより下位のチーム)が厳しいコンタクトで守備を行なうケースでは無謀以上になりやすいということです。つまりある意味「身を呈して」チャレンジしないと相手チームの攻撃を止められない状況ですので、しっかりとるべきファウルをとらないと試合が荒れます。この点は次の2種でも書きます。

 

試合前のプロセスや交代の手続きなども、公式戦やリーグ戦では多くの場合4種の試合よりも「厳格」になります。第四の審判員として経験を積むことでも、より広範かつ深く審判任務を理解する助けになります。Jリーグのユースの試合を担当できる機会もこのカテゴリーから増えるでしょう。

 

さて、次は2種。

 

U18もしくは高校生ですね。3級審判員の場合、このカテゴリーで出来るだけ多くの経験を積むことで体力、気力、精神力、技術が最も鍛えられるように思います。さらに上級を目指す方々の研鑽の場として不可欠なカテゴリーだと思います。

 

上位のチームではスピードもJのチームに限りなく近づきますのでその中で90分間審判員としてフル稼働することは自信にも繋がるでしょう(というか最初はついていくのが精いっぱいかもしれません)。ボール回しも上位、下位チームに限らず意図やチーム戦術がより明確になるのでプレーの予測もさらにつきやすくなるかもしれません。一方で展開のスピードは3種より大幅に早くなるので、主審の場合置き去りにされて適切な角度からゴール前の攻防を監視できなくならないよう集中力をさらに高め、早め早めの動き出しが求められます。主審の場合静止している状態はほぼないと考え、スプリント、ジョグ、ウオーク、サイドステップ、バックステップ、ルックアラウンド(=首を左右に振りながら争点以外の競技者の動きやポジションを目視すること)の動作を状況に応じて組み合わせます。

 

2種では都道府県によって過去の戦績や昨年度のリーグ戦の結果によって1部、2部、3部(さらに4部もある場合もあるでしょう)と分かれているので、より上位(強豪)チームと下位チームの差が明確に分かるようになっていると思います。さらに同じ部の中でも成績上位と下位のチームでは実力差が顕著な場合があります。逆に下位の部に属するチームが上位の部のチームにトーナメント戦に勝つ場合もあり、一概に実力のヒエラルキーが固定されているとも言えません(それがサッカーという競技を面白くしているところでもあります)。

 

さてここで3種の時にも書いた上位チームと下位チームが試合を行う場合の注意点があります。下位チームが厳しいコンタクトプレーでとにかく激しく守備やボール奪取を狙うとファウルの多発が予想されます。特に足元にあるボールやパスされたボールを奪おうとタックルなどを仕掛けようとして、かわされた場合にそのかわされるスピードについて行けずレイトチャージ(いわゆるアフター)になる可能性が高まります。つまりすでにボールは回され足元にないのに相手競技者にチャージやタックルをしてしまうということです。またすでに相手競技者がボールを前に出してかわしているのにもかかわらずトリップなどで止めようとしてしまう等のファウルにも警戒する必要があります。感覚的に言えば真面目で団結しているチームほどこのようなレイトファウルを犯す率が高いようにも思えます。これらの「アフター」を主審が認識していないと競技者だけでなくベンチの不満も高まります。

 

さて高校生は一見大人になっているように見えて精神的には不安定な側面もあります。つまりキレやすい側面もあるし、そのパワーにもあふれているということです。それはいい悪いということではなく、成長の過程では必要な記憶力を高めたり感受性を磨いたりする結果本人にもコントロール出来ない精神状態になることもあるということです。我々も含めすべての人が通過するプロセスです。ですので審判員はそのことを念頭にコミュニケーションをとることが求められます。常に各競技者の表情や仕草を観察しその精神状態を見極めることが必要になります。ファウルを受けてもしくは自滅してもしくはアクシデントで傷んだ選手に声をかけることも重要ですよね。これらはもちろん2種に限った話ではないですけど、最初のうちはこのことが分からず警察や風紀委員のようにファウルを「取り締まる」審判員になったりするのですよねえ。いずれにしてもコミュニケーションの技術の鍛錬にもうってつけのカテゴリーです。

 

試合前のプロセス(=メンバー表の確認、選手登録証との照合、マッチミーティングにおける確認合意などキックオフまでの手続き)を把握理解するにもこのカテゴリーは丁度いいと思います。

 

そしてなにより3級審判員としては間もなくJリーグや世界で活躍する選手たちと一緒にフィールドを駆け回ることの出来る楽しみと夢があるではあ~りませんか!まあ、話は尽きませんのであらためて。

 

 

で、1種です。

 

大学生とか社会人ということになりますけど、年齢制限がないということなので高校生が社会人リーグの選手として出場することもあります。

 

さてこのカテゴリーの特徴は審判員としての精神力、メンタルタフネスを鍛えて頂けるということでしょうか(苦笑)。私自信、それほど多い経験はありませんので偉そうなことは言えませんけど、2種におけるコミュニケーション技術だけでは太刀打ち出来ないこともあります。実力や個々のチームカラーによってかなり異なりますけど、審判員としては試合前の情報収集やそれに基づいた審判チームとしての協働体制もさらに重要になると思います。

 

フィールドに入る前のことで言えばしっかりと選手登録証との照合を行わないと極めて稀ですけど無登録の選手を出場させてしまうことにもなりかねません。累積の懲戒罰の確認も必要です。本来出場させてはならない競技者を出場させたら試合成立の根本から崩れてしまいます。また用具や装身具の有無のチェックではピアス、ネックレスの確認はマスト。ピアスをテープで覆って出場することを認めてはダメです。外してもらいます。サッカーやるならピアスはNG。

 

リスペクトって言葉が重く響くカテゴリーですよねえ。

 

さて、最後にシニアです。

 

このカテゴリーでプレイされる方はやはりいい意味で大人です。たしかに試合中はよく口も動きます(苦笑)。ひとつひとつのプレーや判定にもこだわられます。趣味でやられていたとしてもそこはやはり勝負事ですから。でも試合が終わると審判員を労っていただく言葉を頂くことが多く、下手なジャッジングの時にはこちらが恥ずかしくなってしまいます。

 

とにかくケガや事故なく無事にサッカーを楽しんで終わること、そのための環境づくりに審判員は最大の注意を払う必要があります。ケガをされたり気分が悪くなっているようであれば速やかに退出してもらう配慮も大切ですね。それにしても皆さんお元気です!こちらも勇気づけられます。

 

さてここまで各カテゴリー別に自分の雑感を書いてきましたけど、ファウルの観点で言うとすべてのカテゴリーにおいて共通している「傾向と対策」があります。それはファウル=「狡くて危険な行為」と定義した場合最優先すべきは危険なファウルを見落とさないということです。これは競技規則にある危険なプレーという狭義の意味ではなく、文字通り負傷に繋がるような危ないすべてのプレーと言うことです。これらのプレーが行われているのに審判員が流している、もしくは気づいていないとなると競技者はもちろんベンチの不満も溜まりに溜まり爆発することもあります。これは例えばあなたが歩いていて猛スピードの自転車が自分の体に接触しそうになったとか車を運転していたら急に別の車が割り込んできて衝突しそうになった、とかのように人は自身や仲間家族に身体的危害や危険が及ぶと一気に感情が高まり相手に怒りをぶつけてしまう、ということと同じ状況だと思います。ここで的確な対応ができないとサッカー審判員の目的である「サッカーの魅力を最大限に引き出すよう、試合環境を整備し、円滑な運営をする」ことに大きく支障をきたします。私も未熟ものとしてこれを肝に銘じて日々修行です。

 

終わりにJFAのサイトにある種別の定義チャートを下記に載せておきます。

 

サッカー 種別 フットサル
年齢を制限しない選手により構成されるチーム
JリーグJFL・社会人連盟・大学連盟・高専連盟など
第1種 年齢を制限しない選手により構成されるチーム
Fリーグ・フットサル連盟・その他
18歳未満の選手で構成されるチーム(高校在学中含む)
高体連・クラブユース連盟・その他
第2種 18歳未満の選手で構成されるチーム(高校在学中含む)
フットサル連盟・その他
15歳未満の選手で構成されるチーム(中学校在学中含む)
中体連・クラブユース連盟・その他
第3種 15歳未満の選手で構成されるチーム(中学校在学中含む)
フットサル連盟・その他
12歳未満の選手で構成されるチーム(小学校在学中含む) 第4種 12歳未満の選手で構成されるチーム(小学校在学中含む)
フットサル連盟・その他
12歳以上の女性選手のみで構成されるチーム
Lリーグ・一般・大学・高校・クラブ(高校)・中学・クラブ(中学)
女子 ※ フットサルには「女子」「シニア」の種別はありません
※ 年齢は登録年度開始日の前日(3月31日)現在、ただしシニアについては、登録年度最終日(3月31日)現在の年齢
40歳以上の選手で構成されるチーム シニア

 

 では、I'll be back.