ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

PKもしくはPK戦における「正当なフェイント」と「不正なフェイント」

さて昨日の記事のフォローアップです。

(ここでの事象は6月6日(水)にパロマ瑞穂スタジアムで開催された天皇杯2回戦の名古屋グランパス(J1)対 奈良クラブ奈良県代表/JFL)の試合後のPK戦で起こった奈良クラブ40番金久保彩選手のキックプレーを取り上げています)

 

私もそうですけど多くの審判員の方々が知りたいのは今回のキックフェイントは「正当なフェイントなのか不正なフェイントだったのか?」ということだと思います。

 

結論から書くと本日開催され公表されたJFA審判員委員会の判断は以下の様です。記事をそのまま引用させていただきます。

ここから引用>>>

審判委員会では、PK時の金久保のシュートそのものに違反があったかどうかを映像を使って確認した。蹴る際にフェイントを入れると不正になるが、助走中のフェイントは不正にならない。今回軸足でステップを踏んだ時点は助走の一部であると確認し、「主審の判定は誤りであった」と誤審であったことを公表した。

引用ここまで>>> 「デイリースポーツ」より引用

 

この記事が正確に審判委員会の判断を表現しているかどうかは今はまだ完全に把握できないのですけど、現時点では清水修平主審が不正なフェイントと判定したこと自体が間違いだったということになります。

 

正直言って清水さんに同情してしまう難しい事象だったように思います。ここでのポイントはあれが「ケンケン」だったということではなく「助走の完了」というのはどの時点になるのかということに尽きると思います。つまり:

 

「競技者が一度助走を完了した後、ボールをけるためにフェイントをする(助走中のフェイントは認められる)主審は、そのキッカーを警告する」

 

というのが不正フェイントと正当なフェイントの唯一の競技規則上の定義なのです。

 

なので今回の奈良クラブの金久保選手の助走はどこで完了したと見なすべきなのかが判定の分かれ道になるわけです。上記の記事通りだとすると審判委員会の見解は軸足でステップを踏む行為は助走の一連の行為となり、軸足が停止しボールをける体勢になって始めて「助走を完了した」状態になると理解できます。

 

蛇足ながら今回のような「事件」が報道されている記事を読むと担当記者の方の多くが正確に競技規則を理解していないまま執筆している、もしくはかなり読者に誤解を与える表現をしていることが分かります。例えば:

 

記事A「今季から禁止フェイント「失敗」」→ 不正なフェイントの場合は結果を「失敗」(=ゴールにならなかった)とすると表現しているつもりなんでしょうけどなんか今年の競技規則からフェイント自体が禁止になったように読めますね。

 

記事B「昨シーズンから、審判がフェイントと判断した場合、そのPKは失敗と見なすことになっていた。」→ 助走中のフェイントは認められていますよ。

 

記事C「奈良クの4人目のキックについて、主審は助走の際にフェイントを入れたと判断。競技規則に従い、「失敗」と判定すべきだった」→ だ・か・ら・・・助走中のフェイントは認められていますって(苦笑)。

 

というような感じです。記者の皆さん正しい情報の普及のために競技規則を読むとか、こちらの記事を定期購読して下さいね!

 

さて閑話休題。というわけで不正フェイントと正当なフェイントの判断の境目は「軸足が停止された(固定された)かどうか」ということになろうかと思います。なので仮に「軸足ケンケンキック」でも最後の軸足ステップでボールを蹴る体勢に入ったのちにフェイントがなされなければ正当なキックプレーとして認められ、同じ「軸足ケンケンキック」でも最後の軸足ステップの後になされたフェイントは不正となるわけです。これが私が「ケンケン」が事象の本質ではないと書いた理由なわけです。

 

う~んでもいきなり目の前でケンケンキックされたらやはり迷います。

 

あと、仮に助走後のフェイントが起こってもいきなり笛を吹いて止めることのないように。これは試合中のPKだろうが試合後のPK戦であろうが同じです。「主審がペナルティーキックを行う合図をしたならば、キックは行わなければならない」わけですから仮に不正なフェイントがあっても蹴らしてください。フェイントが起こった時点で笛を吹いて止める必要もなければ、それがフェイントかどうかを蹴り始めた瞬間からボールに触れるまでの間に判断するのは至難の業ですからじっくり見極めて判定してくださいね。

 

さて最後に質問です。以下の事象をあなたならどう判定しますか。

 

「キッカーは助走を停止したあとボールを蹴るふりをしたものの、それが認められないフェイントと気付き、再度後ろに下がり助走を始めた」

 

では、I'll be back.