サッカー審判員にとっての「見る力」~ その③
さて、では具体的なトレーニング方法の説明です。
その前に一言。このトレーニングの前提は下記のような独善理論となります。
1)人間には見ているのに見えていない画像がある。
2)両眼はカメラのレンズであり画像を見るためにはピントを合わせる必要がある。
3)そして画像を認識するためにはピントと一緒に意識を集中する必要がある。
4)一方である画像にピントと意識を集中するほど、それ以外の画像は見えにくくなる。
5)なのでピントと意識を素早く移動させる必要がある。
では、まず「両眼視トレーニング」から。
① 親指視点移動
② ブロックストリング
上記のふたつの方法は私は元WBA世界スーパーフライ級王者であった飯田覚士さんのムック本「見る力も脳も10歳若返る!! ビジョントレーニング」を読んで知りました。両眼視に問題があった私にはこの二つのトレーニング効果は絶大かつ即効性のあるものでした。私の両眼視は2週間程度のトレーニングで大きく改善されました(別に本の宣伝をしても私には何の得もない)!
さて①のトレーニング方法は同書の69ページに掲載されてますので、詳しくはそちらをご参照。簡単に説明すると目の高さで左手の腕を真っすぐ伸ばして親指を立て、その手前に右手の親指を立てたまま置きます。そしてピントをそれぞれの親指の爪の先に合わせることを繰り返すわけです。正しく両眼視出来ていれば左手の親指を見ている時は手前の右手の親指は2本(2重)に見え、手前の親指を見ていると向こう側の左手の親指が2本に見えるというわけです。
これは、どこでも手軽にできます(ただし列車の中など公共の場でやっていると「ヘンな人」と思われてしまう可能性大なのでご注意を)。私は最初うまく出来ず(つまりピントが当たっていない方の親指が2本(2重)に見えない。もしくはピントの移動がスムーズにいかない)にいたのですけど繰り返しやっているうちに出来るようになり、すっかりハマってしまいました。
さて②も同書に紹介されています。「ブロックストリング」は紐やロープを使って行う両眼視のトレーニングの代表で、同書では20~21ページにイラストで再現されています。やはり、実際に紐などを使ってトレーニングしたほうがやりやすいです。これは紐やロープの一方の先端を固定したまま一直線になるように手で持って、もう一方の先端を両眼の真ん中、ちょうど鼻先に付けます。そして紐にあらかじめピントを合わせる目印として通されたビーズ(通常は手前、真ん中、向こう側の三つ)に両眼の視点を合わせます。正しく両眼視できていれば視点で、つまりビーズの部分を中心として紐はX状に2本となり交差しているように見えます。
この「ブロックストリング」のトレーニングを行うと「両目で見るっていうのはこういうことか!」と納得し体感できます。なお、このトレーニングはただの紐でも出来ます。紐にビーズが通っていなくても自分でペンで印をつけたり、印がなくても自分で視点を決めて両眼のピントを手前→向こう側、向こう側→手前、と移動させればOKです。
このトレーニングを2週間ほど続けたせいで『 サッカー審判員にとっての「見る力」~ その① 』で書いた私の両眼視の問題が改善され三角形のフレームワーク越しに対象物を見て右目を閉じても対象物はフレームの中に納まっているようになりました。つまり指で使ったフレーム(手前)と対象物(向こう側)の遠近感および位置関係が正しく把握できるようになったわけです。
オマケは「ステレオグラム」という3D隠し絵の画像がバンバン見えるようになったことです(以前は何回やっても何分も見続けても見えなかった)。まあ、直接審判員に必要な見る力には関係ないかもしれませんけど・・・(と、いいつつ後で書く「見ることの楽しさ」が増えたことは間違いありません)。
では次に「眼球運動(眼球トレーニング)」です。
以下の三つは私が独自にやっているものです。
① 雑踏視点移動
② 車窓外数字探し
③ 徒歩数字探し
飯田覚士さんの本でも眼球運動が紹介されています。ペンを使って(自分の親指を使うやり方もあります)眼球を動かすトレーニングです。「目は鍛えられない。なのでどのような強者にとっても最大の急所である」はその昔格闘技をやっていた時に聞いた覚えがありますけど、この時に言われていたのは目というのは眼球そのものですね。ここで鍛えるのは正確には眼球を動かす筋肉となります。ここは鍛えることが出来る訳です。
でもまあ、そう難しく考えないでまず「眼球を動かす」ということを覚えましょう。よく試合中でもよりよくプレーを監視するためにポジションを変えたり、次の争点を予測するためにボールを持っていない選手以外の動きを確認するために顔を動かすということをやっておりました。しかしこの眼球を動かすことで今見ている画像に中にもいくつか監視ポイントがあることが強く意識づけられます。またただ顔を動かすだけだと「見ているのだけど見ていない」状態になる恐れがあります。眼球を動かす意識を持つことでカメラがピントを合わせるように遠く近く、左右斜めの画像を、そしてここが重要なのですけど具体的な対象物(選手の表情、足の先、手の先、肘、背番号等々)を認識できるようになります。
眼球運動の重要性はある程度ご理解いただいたと思いますけど、ペンとか指を使ったトレーニングは単調で飽きるんですね(苦笑)。なので自己流なわけです。
まず①「雑踏視点移動」は私の嫌いな人混みの中を歩きながら前方から来る人、前後左右を歩いている人、時には後ろから歩いてくる人、遠くの風景などに瞬間的に視点を移動させるトレーニングです(人にぶつかるなど危険もありますので自己責任で)。このトレーニングのポイントは二つ。一つ目は視点を極端に遠く(例えば500m先の建物の看板の文字とか)から極端に近く(目の前を歩いている人の靴の踵等)に瞬間時に移動させることです。この極遠→極近、極近→極遠を繰り返します。このときしっかりとピントを合わせます。二つ目は認識する力も高めたいので具体的に画像情報を読み取るようにします。例えば看板の文字や数字、靴の色や形等々です。
このトレーニングのルールは視点の固定はコンマ数秒(1秒以上にならないように)とするということとと、出来るだけスムーズに歩くです。つまり前方から来る人のコースや動きを察知してなるべく相手の動きを止めたり妨害しないで自分も同じペースで歩けるようにポジションを調整します。これは選手の動きや視界を邪魔しないでフィールドの中で動くことの疑似トレーニングも兼ねているわけです。
さて②の「車窓外数字探し」は通勤、通学中に「ヘンな人」と周囲に思われないで何時でも思いついたときに出来るトレーニングです。これはズバリ列車から見える風景の中に出てくるあらゆる数字を見つけるだけのトレーニングです。車のナンバー、看板に書かれた電話番号、交通標識の数字・・・等々です。動体視力も試されるこのトレーニング、例えば車のナンバープレートばかりに気を取られていると例えばマンションの壁面に書かれた大きな数字を見落としたり・・・と見ることの難しさを楽しく知ることができます。これなら危険もありませんしね(数字はただ見るだけではなく、ちゃんと見た数字を心の中で呟いてください。ホントは声に出すと「認識➡行動」の良い訓練になるのですけど・・・ヘンな人になるので・・・)。
さて③の「徒歩数字探し」です。これは②を歩きながらやろうってことです。この場合は十分余裕ある状態で行ってください。つまり自転車や自動車とすれちがう、もしくは横切るようなような状況ではこのトレーニングは行わないでください。
①や③のトレーニングは危険がともないますのであくまでも自己責任でお願いします。このトレーニングを行うたびに歩きスマホの危険性がよくわかります。視点を一瞬でも移動させることでピントも意識も他の画像からは逸れます。スマホの画面を見ながら歩くなんて・・・アリエナイ~!自転車に乗りながらなんてもう目を閉じて包丁持って歩行者に向かっていくようなものです。絶対お止め下さい。
というわけで、ここまでが自己流トレーニングの紹介でした。長くなったのでトレーニングしてから臨んだ試合での実感は次回に。
では、I'll be back.