ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

オフサイド - ターミネーターしか判断不能か?~後編④

それでは「セーブ」とはなんでしょうか?(後編③からの続き。)

 

ゴールキーパーがシュートを手ではじくことでしょうか?そう、これは典型的なセーブですね。でも「セーブ」はゴールキーパーに限った話ではなく、すべての競技者に言えることですよね。

 

ここで、再びわが愛する「小学館 プログレッシブ英和中辞典」の登場です。

 

save (サッカーなどで)相手の得点を妨げること。

 

そうです「意図的なセーブ」は当然ながら、「得点を妨げる」ことが最優先となっている行為です。(思い通りに「得点を妨げた」かどうかの結果は問いません)

 

次の展開を考えること(例えばシュートされたボールをトラップして味方競技者に繋げるなど)は二の次になっている行為だということです。

 

ですからいくらゴールの枠内に向かってきているボールでも次の展開も考えてボールを扱えば「意図的なセーブ」ではなく「意図的なプレー」です。(ここでもボールを思い通りに扱えたのかどうかは問いません)

 

このことから「セーブ」と「プレイ」の核心を一言であらわすとそれぞれ:

 

「阻止」と「コントロール」

 

になると言えるでしょう。ですので:

 

●意図的なセーブ = (得点の)阻止のもくろみ > (ボールの)コントロールのもくろみ

●意図的なプレー = (得点の)阻止のもくろみ < (ボールの)コントロールのもくろみ

 

と書き表すことができます。

 

これを実際のプレーの事象例に当てはめると:

①ハーフウエーラインより僅かに自陣内に下がった守備側競技者の頭に攻撃側競技者が強くキックしたボールが当たり(守備側競技者は向かってくるボールに反応もできず)、もともとオフサイドポジションにいた他の攻撃側競技者がボールを受けた場合=オフサイドの反則

 

ペナルティエリアのすぐ外から攻撃側競技者がゴール目がけて鋭くキックした。最終ラインの守備側競技者が辛うじて足を出したもののボールは後方にそれてゴール前のもともとオフサイドポジションにいた他の攻撃側競技者がボールを受けた=オフサイドの反則

 

③ハーフウエーラインより僅かに自陣内に下がった守備側競技者が攻撃側競技者が強くキックしたボールをヘディングした。しかしボールは後方にそれて(守備側競技者の意図通りのプレーではなかったものの)、もともとオフサイドポジションにいた他の攻撃側競技者がボールを受けた場合=オフサイドの反則ではない

 

 上記事象例①はガイドライン「“その位置にいることによって利益を得る”とは、次のようにボールをプレーすることを意味する。」の:


(ⅰ)ゴールポストやクロスバー、または 相手競技者からはね返った、または それらに当たって方向が変わってきた ボールを、既にオフサイドポジションにいる競技者がプレーすること。

 

に該当します。

 

事象例②は:


(ⅱ)相手競技者が意図的にセーブして、 はね返った、方向が変わってきた、 またはプレーしたボールを、既に オフサイドポジションにいる競技者がプレーすること。

 

に該当。

 

で③は:

 

相手競技者が意図的にプレーした(意図的なセーブは除く)ボールを、既にオフサイド ポジションにいる競技者が受けたとしても、その位置にいることによって利益を得たとは判断しない。

 

の事象例です。

 

新しいガイドラインによって競技規則の解釈が変更されたわけではありません。しかしながら、今後現場でも議論がおきるとすると、この「セーブ」だったか「プレー」なのか?の判断の部分だと思われます(今までの後編の長い道のりはこの論点までの序章だったともいえます。逆に一直線にこの論点に行く前に論点の理解がとても大切だと思い長々と書きました。長すぎますが・・・(汗笑))

 

今後起こりえることとして例えば:

 

ペナルティエリアから離れた地点から放たれたシュート。当たり損ねだけどボールはしっかり枠を捉えている。ふらふらとループ気味にゴールへと向かうボール。そのボールをゴール手前で守備側選手がヘディングしたものの、もともとオフサイドポジションにいた攻撃側選手の一人がボールを受けた。それを見た副審は迷わずフラッグアップ。ところが主審はそのシグナルを採用せず、そのままプレーは続行。そして得点が決まった。副審は主審が気付いていないと思い、そのままフラグアップを続行。そこで主審は副審に駆け寄る。

 

主審「今のシュートだったけど、守備側選手はボールをコントロールしようとしていたように見えたけど」

副審「えっ?」

主審「セーブから出たボールとしてオフサイドと判断したかもしれないけど、あのシュートからのボールはコントロールできる余裕があったし、実際のプレーもそうだったから枠に飛んでいてもセーブじゃないね」

副審「??」

 

というようなケースです。

 

このようなケースの場合、「意図的なプレー」の意味は:

1)ボールをコントロールするもくろみはあった。しかし得点を阻止しようとするもくろみはなかった。

2)ボールをコントロールするもくろみが得点を阻止しようとするもくろみを上回っていた。

のいずれかです。

 

ではどの程度「コントロール」のもくろみが「阻止」のもくろみを上回っていれば「意図的なプレー」になるかは明確な線引きはないというしかありません。正直上記のようなケースで「プレー」と「セーブ」の境界線を設定することは難しいです。

 

まったく審判泣かせですね。でもこのことを知って審判がどのようにオフサイドを判断するかを観客の立場で見ればサッカーの楽しみがまたひとつふえるかもしれませんね。

(もちろん応援しているチームに不利な判定がでればストレスですけどね)

 

ここまで長々と書いてきました。(すべて読んでこられたかた、あなたは偉い!いや辛抱強い!!)後編②で挙げた二つの疑問点の:

1)「意図的なセーブ」の意味するところは?

について私なりの回答を書いたつもりです。

ではもうひとつの疑問点:

2)「プレーしたボール」とはなにを意味するのか?

これについて書くことで『オフサイド - ターミネーターしか判断不能か?』のグランドフィナーレとします。→ 後編⑤へと続く。

 

では、I'll be back.