サッカー審判員なら「トンマナ」を運用しよう!
寒暖の差が激しかった本日は、一か月ぶり?に公式戦の主審を務めました(実戦から遠ざかっていて反省反省)。
今日は、試合前から決めていた二つの課題にチャレンジ。まず一つ目は主審としての動き(またはポジショニング)。スプリント、ジョギングそしてウオーキングの基本三本柱にプラスして、サイドステップ、バックステップ、ターニング(方向転換)等々積極的に取り入れました。結果、選手同士が重なった時にボールやプレーが見え辛くなることがあり、ポジショニングにまだまだ大きな課題が残りました。(主審の動きについてはこちらをご参照 →「サッカー主審の動き - 言うは易し行うは・・・後半 」)
そして二つ目の課題が本日のお題、審判員としての「トンマナ」です。
「トンマナ」とは「トーン&マナー(Tone & Manner)」の略ですね。
この用語は広告、ブランディングというマーケティング業務に携わっている人には身近な言葉かもしれません。この用語、ネットで検索してみると色々な説明がされていますけど、ここでは以下のような意味で使っています。(別にどこかの本とかに書いているわけではないのであくまで私が知っている限りとしての意味です)まあ、マーケティングとかに興味がない方はこの部分は読みとばしてください。
で、まずトーンは「口調」とか「語気」とご理解ください。でマナーは、ここでは行儀、礼儀の意味ではなく「(人への)対し方、物腰、態度」となります。ですから「どのような話し方や接し方で表現しようとしているか」ということがトーン&マナーになります。
「トーン&マナー」はこの用語単体では理解し辛いです。なので以下の3点セットで覚えてください。
●ブランドキャラクター
●ブランドパーソナリティー
●トーン&マナー
で、以上の三つの用語はマーケティングでいうところのブランドやその表現(広告など)を全て「人」に例えていることが共通点です。
ブランドキャラクターはブランドを人に例えたら、どのような人なのかということです。ですのでいわゆるキャラクターグッズのキャラクターではなくブランド戦略を決める時に話し合われる表舞台に出てこないブランドの設定です。
でブランドキャラクターは皆が知っている存在(職業、役割その他あらゆる構成要員)で定義されます。私が知っているブランドキャラクターで秀逸なのが、ある自動車のブランドの「タキシードを着たラガーマン」です。知的なフォルムでなおかつ優秀なエンジンを搭載した、この車の本質を言い得て妙に表現していますね。
ブランドパーソナリティーはブランドキャラクターと混同されることも多い言葉です。でパーソナリティーはキャラクターとして設定されたブランドの性格を表現します。知的とか優しいとか精悍な、などなど形容詞であることがほとんどです。
このようにして戦略的に設定されたブランドキャラクターやパーソナリティをもとに商品やサービスのブランディングを行うことで意図したイメージを一貫性を持って構築していくことができるわけです。
このブランドキャラクターやパーソナリティーは一度決めて実際のブランディング活動を開始したら、変更することには大きなリスクが伴うので慎重になることが必要です。人と同じで「多重人格」と思われると、その商品やサービスを効率的かつ効果的に売り込むことが難しいからですね。
さてこれに対して「トーン&マナー」は極端に言うと局面局面で変えることもOKです。この辺がちょっと勘違いされているようで、必ずしも「一貫性」が必須というわけではないのです。つまり「トーン&マナー」はブランドのコミュニケーション活動(例えばパッケージや広告)を行う時などの表現にかかわることなのです。ブランドの個々のコミュニケーション活動が消費者に向かって「どのような話し方や接し方で表現しようとしているか」ということがトーン&マナーです。もちろん一貫性があったほうがいい場合が多いです(同時期の一連のキャンペーンやプロモーションなど)。
一方でブランドのキャラクターやパーソナリティーはそのままで広告のトーン&マナーを変えて新鮮なイメージを与えることもOKです。
*ここでいう「話し方」や「接し方」というのは表現全体に関わることなので、デザイン、言葉の選び方、文体、文字の種類、カラー、音楽の調子などあらゆる表現要素を含みます。これらがトンマナの「実体」です。
人の場合ですと漫才師のようなキャラクターの人がいたとします。で、その人のパーソナリティーは「陽気、冗談好き、皮肉屋、そのわりに繊細」とかとします。ここは何時も変わりませんけど、その人の「トンマナ」は宴会の時とお葬式のときとは違いますよね。服装という「トンマナ」も違いますよね。でもやはり彼のキャラクターは漫才師なんです。
宴会では話芸で皆を爆笑に誘います。お葬式では繊細な心配りで人を慰めます。
毎度のことながら長い、長くなってますね(苦笑)話をサッカーにもどします。
でサッカーの審判員のキャラクターは?それは当然「審判員」です。わたしのように家では「ダメおやじ」キャラクターでもフィールドでは「審判員」です。それがどのようなキャラクターかは皆さんもうお分かりですね。
では審判員のパーソナリティーはどうでしょうか?「決断力に富む」「毅然としている」。うん、うん、そうですよね。もちろん共通して求められるパーソナリティーはあるとは思います。でも審判員としてのパーソナリティーって実は個々の審判員の方々の普段のパーソナリティーが大きく反映されます。 (競技規則「日本語版付録 審判員の目標と重点項目」P150に書かれていることですね)なぜならパーソナリティーは長年培われてきた人の性格だからです。急に変わるわけがないです。不自然ですし。
だから同じ競技規則を運用して同じトレーニングを受けても様々なパーソナリティーの審判員の方がいます。それでいいんです。自分のパーソナリティーに沿ってやらないと審判員活動も長続きもしません。
*ちなみに審判員の共通のパーソナリティとして絶対持っていて欲しいのは「オープンマインドである」ことです。
で、試合に臨んで場面場面で使い分けるべきは「トンマナ」です。
例えば試合の始まりから終わりまで、どんな局面でも笑顔のままも変ですし、厳しい表情のままっていうのもいただけません。
時には笑顔で注意を与えながら興奮している選手を落ち着かせることも必要です。また時には危険なプレーには厳しい態度と表情で選手に向かい合うことも大切です。これが「トンマナの運用」ってことです。ここでポイントを二つ。
①「サッカーの仲間」として接する。
② 笛の「トンマナ」を考える。
①について。試合を通じてずーっと無表情とか不機嫌なトンマナで審判している方々は結構多いのでは。選手、チーム役員、審判員と立場は違えど同じサッカーに携わる仲間です。サッカーの魅力をそれぞれの立場で最大限引き出すために皆いるわけですから、試合中に全く選手に話かけないとか「警察官と犯人」みたいな関係性(この用語の定義は「サッカー主審と副審の「関係性」とは?(関係ではあ~りません)」をご参照)のままって、とっても変ですよね。
試合中に様々なトンマナで選手に積極的に話しかけてみましょう。
②は笛の吹き方のトンマナが重要ってことです。コツは自分の気持ち(心の声)と笛の吹き方を一致させること。「ちょっと待ってね」と「おーい、今のプレーは危ないよー!」の笛が同じトンマナであるはずがないですよね。
さて本日の課題「トンマナ」。今日の試合では必ずしも満足いく出来ではなかったです。次回以降も課題にして試合に臨みます。GWは審判実戦を積みたいと思ます。そのご報告もここで。
では、I'll be back.