ハンドにおける多様性と多角監視
先月の記事で書いた3月3日に行われたガンバ大阪VS鹿島アントラーズの試合で筆者が最も注目した事象はあの「決定的な得点の機会か否か?」ではなく実は別のプレー(審判団の連携プレー)にありました。
それは前半10分ごろだったと思うのですけど、ペナルティエリア右側付近でボールを受けた攻撃側の鹿島の選手のトラップに対してA2の森川 浩次 さんが即フラッグアップ。西村主審の笛が鳴りました。このプレー、腕を使ってボールをコントロールしたようです。「ようです」と書いたのはTVカメラが写している方向からだとちょうど死角になってしまい直接ボールと腕の接触を見ることが出来ないのです。ただ森川さんの方向からだと正面に見えたはずでこれはまさにナイスファウルサポートです。
同じような事象と思われることが先日の日本女子代表のオーストラリア代表との試合でもありました。ロングボールのパスを受けた中島選手(だったはず)のトラップが腕を使ってのトラップであることをオーストラリアのDFの選手がアピールしていました。これまた死角になってTV画面では見えなかったのですけどA2の方からは見えていたはずです。旗は上がりませんでしたけど。
このようにハンドの反則の認定には副審と主審の連携プレーが重要になってくることが多々あります。特に主審から死角になる場合に備えて試合前に(特にペナルティエリアやゴール近くでの)副審に対して積極的なサポートをお願いしておくことは必須にしていいと思います。
競技規則にあるように「ボールを意図的に手または腕で扱う」ことが反則なのでハンドの認定には「意図」を見抜くことが大切です。
ハンドの意図とは:
1)パスを止める
2)トラップする
3)自分がプレーしやすいようにコントロールする
4)得点する(しようとする)
5)得点を阻止する
に大別できるかと思います。
今回フォーカスを当てたのが2)ですね。この2)のパターンで代表的なのが:
i) 胸でトラップしながら両方の腕(特に上腕で)でボールを挟むこむようにする
ii) 胸でトラップしているように見えて腕(これまた上腕で)を身体と一体化させながら止める
というプレーがあります。
この辺は監視する方が意識していないと一連の正当なプレーとして見落としてしまう可能性があります。なので試合を通じてどのようなパターンのハンドがあるのか、また腕については常に意識して見ておく必要があります。
この辺のパターン学習の教材としては残念ながら?「これは笛鳴っていないけど完全にハンドの反則では?」と思える動画が多数ネット上にアップされています。
Jリーグ担当の審判員の方でもハンドの反則の見落としがある原因の一つは死角になって見えなかったというこもあるとは思います。これについては冒頭に書いたように副審と主審の連携監視が有効でしょう。で、その他の原因としては事象としてハンドを見極める難しさもあります。それは「これって意図的か?避けられなかった手の接触か?」ということの見極めの難しさではなく(もちろんそれもありますけど)ハンドというのは「単独行為」であることの難しさということです。
これは私の仮説なのですけど、通常ファウルは相手競技者に対して「不用意に」「無謀に」そして「過剰な力で」為されるプレーが念頭に置かれています。つまりそのような行為を見極めようと主審の意識は集中されている状態が常なので、どうしても二人以上の競技者の動きに注意を奪われがちで目の前で行われている一人の競技者の行為を正確に認識できないのではということです。よくマジシャンが観客の注意を他に向けておいて・・・っていうテクニックにハマっている状況と似ている・・・?
なので死角を作らないだけでなく副審と監視対象行為を分担しておくことで視野だけでなく認識パターンも多角化できるのではと思うわけです。
いずれにしてもサッカーでは手を使うプレーは存在してはならないので、その不正については念には念を入れましょうという自戒も込めてのお話でした。
では、I'll be back.