ブラックジャックもお手上げ? サッカー審判員の七つ道具。
さて前述したGWの大会で、今度は主審を担当したときのことです。
まず試合開始前のこと。
お決まりのボールチェックでちょっとトラブルがありました。
ボールを両チームから出してもらったのが用具チェックおよび入場のために選手を集合させてからとなり、その場で慌てて空気圧を計ったら案の定、規定値に足りない。通常副審の「業務」となるのですけど、「手の空いている人がやればいいんですよ」と率先して空気入れをしていた2級審判員の方の姿勢を見習ってポンプで空気入れをしていたら・・・ゲッ!ポンプの針が折れたぁ!しかも折れた針が・・・抜けない!!本部にいたIさんが「それは抜くから」ともう片方のボールを渡してくれたので、あわてて針のスペアをA1担当のKさんからもらって再度ポンプを操作していたら・・・ありゃー!また折れたぁーああ!(焦涙)。
代わりのポンプが急きょ出動!って事態と相成りました。
さて、ここで試合前の準備について、いつも大切にしている(はずなのに今回は・・・)インストラクターの方から頂いた注意点を挙げます。
① キックオフの時間(この時間の定義は正確にご存じですよね?)を遅らせないために、逆算してすべての準備に入る。
② 試合要綱およびフィールドの確認を開始。要望や確認点があれば本部に伝える。
③ ボールを両チームから余裕をもって出してもらう(選手が集合する前にボールの状態や空気圧の確認および調整を終了させおく)
④ アップの時間をたっぷりとる(審判服では行わない)、審判打ち合わせも早めに。
⑤ 試合開始5分前には両チームの用具チェックを開始できるようにする(実際の選手集合の時間は本部と確認しておく)
所属する審判協会の割り当ての試合ですと会場入りのタイミングは試合開始の2時間前を目安にしてますので、①~⑤の準備を十分余裕をもって行えます。
チームに帯同した場合などは、このプロセスをどのように効率的に行うか、特に主審担当の場合はリーダーシップを発揮したいですね。と偉そうに言いながら今回出来てなかったわけで・・・反省。
というわけで、試合開始が遅れる~と焦って空気を入れようとして針2本損傷。
なぜ折れたのか?何となく理由はわかるような・・・と感じていてもまさか金属製の針がこうも簡単に(しかも2度続けて)折れるとは驚き!でした。最初は「すわ、不良品か?」と一瞬思いかけたところ、「折れる時あるよ」とKさんに言われて(だからこそKさんも針のスペアを持っていたわけです)これは自分の空気入れの使い方に問題があったのではと考えました。
通常、私も審判仲間の方たちも針を自分の唾で湿らせてからバルブ口に入れています。これなんとなくマネしていたのですけど、針を湿らせるのは針との摩擦でボールのバルブを痛めることのないようにするためです。ただし唾は・・・便利ですけど推奨はされてないはず。水分で針が錆びるなんてこともありえます。
というわけで、ここは素直に専門家のアドバイスをもらおうとモルテンさんを直撃。電話「取材」を敢行しました。
今回、非常に丁寧かつ親切にご対応をいただきました。さすがモルテンさん。ありがとうございます。
で、教えて頂いた空気入れの針を折らないために大切なことは:
① 針に潤滑剤を付ける(もしくは代用品でも可。これについては後ほど)。
② 針をバルブ口に対して垂直に入れる。
③ 針は根元まですべてバルブ口に入れる。
④ ②~③はゆっくりと行う。すこしでも強めの摩擦抵抗を感じたら①に戻る。
⑤ ボールを安定させるためにボールを地面に置いて空気を入れる。
などなどです。
こちらもご参考ください ↓
http://www.molten.co.jp/sports/jp/support/care/handsewn/
上記の代用品ですけど、これは家庭用台所洗剤を入れた水でもOKのようです。というわけで、ほとんど石鹸しか使っていない我が家なので石鹸水を作り100円ショップのスプレーボトルに入れて使用してみようかと。使用しての感想はまたご報告します。
さてボールの空気圧についてです。
サッカー競技規則
第2条 ボール
品質と規格
ボールは、次のものとする。
●球形
●皮革または他の適切な材質
●外周は、70㎝(28 インチ)以下、68㎝(27インチ)以上
●重さは、試合開始時に450ℊ(16オンス)以下、410ℊ(14オンス)以上
●空気圧は、海面の高さの気圧で、0.6∼1.1気圧(600∼1100ℊ /㎠:8.5∼15.6ポンド/
平方インチ)
(下線筆者)
とりあえず「海面の高さ」という言葉は忘れてください(ただし筆記試験ではこれを忘れると不正解になりますよ!)。で、ボールにはバルブ口の周囲に、そのボールの適正空気圧の範囲が印字されています。
例えば:
Inflate to 0.6 - 0.9 bar 600 - 900 hPa
のようにボールによって数値は異なるのでご確認を。
ちなみにbarもhPaも気圧の単位。天気予報で使われるヘクトパスカルや旧来の表示(ミリ)バールですね。
このボールに印字されいる適正範囲内で何気圧にするかは・・・副審担当であれば主審に確認してください。目安として:
●グランド種類や状態(土か芝か。湿っているのか乾いているのか等々)によって調整
●適正数値の中間 例えば0.75~0.8
●気持ち目安値よりも高めに(時間の経過とともに空気は抜けていくので)
と覚えておいてください。
あと、当然と言えば当然ですけど、2個以上ボールを使用する場合は(通常は2個のケースが多いと思います)各ボールの気圧は同じ数値にしておきましょう。
このことだけでもボールを押してみたり弾ませて試合球を選ぶことは適切ではないことがお分かりいただけるかと思います。各ボールの気圧が異なっていれば試合中にスペアボールになった時に感触や弾み方が違って極端な話プレーに影響を与えかねませんね。
そもそも手で押してたりボールを弾ませて空気圧をピタッと正確に言い当てられるのならそれは日本が世界に誇る匠の技と成りえるでしょう。
匠レベルの方がそんに数多くいるとは思われないので、我々は空気圧計を必ず使用しましょう。
ところでU12の試合では適正数値範囲内にするとボールが固いと感じる子供たちが多いのも事実です。子供たちのレベルに合わせて練習のときにはボールの空気圧を適正数値以下にするのもありだとは思います。しかし試合になっていきなり不慣れな固さのボールを使ってプレーするよりも出来るだけ普段から適正な空気圧のボールで練習するように指導者の方々にも配慮いただきたいように思います。
というわけで、審判員の七つ道具には空気入れ(ポンプ)と空気圧計は必須です。
そして潤滑剤(もしくは代用品を)も。
で針を折らない配慮をしていても万一ってのはあり得ますので、今回の経験から:
●スペア針
●小型ラジオペンチ(これがないと折れた針が引き抜けない!100円ショップのもので十分。針が刺さったままボールを返却したら、ヒンシュクでしょう。でも抜く時はあくまでゆっくりと慎重に。ブラックジャックみたいに折れた針と「対決」したらダメですよ~分かる人にはわかるエピソード?!)
を七つ道具に加えました。
ともあれ、普段からボールを素早く適正な空気圧に調整するトレーニングも加えるべきだと今回の経験から思った次第です。
では、I'll be back.