ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

「カメラを止めるな!」ゴールかノーゴールかの先に。

ちょっと記憶が薄れつつも去年の夏にあった事例について触れます(自分にとってもちょっと反省しきりな事例だったので、すぐにアップするにはためらいがあったのです)。

 

それは社会人リーグで副審(A2)を担当していた時のことでした。

 

リードしていたチームのコーナーキックでした(A2側、つまり私の目の前のコーナーからのキックです)。いつものように争点はゴール前の攻撃側選手と守備側選手の位置関係、つまりオフサイドの判断を念頭に集中力を高めていました。

 

そしてそれは私にとっては突然の出来事でした。

 

「入った!」

 

その声の直前にボールはゴールキーパーの手によってゴールからはじき出されました。

今思えばボールの全体は空中で完全にゴールラインを越えていたかもしれません。

ただその時の私はそのような形でボールがゴールラインを超えるとは全く予期していませんでした。もっと言えばボールがゴールラインを超えたか越えなかったの判断を強いられるとも思っていなかったのです。逆に言えば得点される場面は予期していたのですけどそれはボールが完全にゴールネットに突き刺さるイメージだったのです・・・。

 

「エッ~!」という選手の声、そして私の方を見る主審の視線を感じながらベンチからは「笛が鳴っていなんだから続けろー!」とのコーチの方の声。

 

それでも私の手にもたれているフラッグがアップされることはありませんでした。プレーはそのまま続行です。その直後再度私サイドのコーナーキックとなりました。私が得点を認めなかった側の攻撃チームの選手がボールをコーナーアークにセットしながら呟いた言葉が耳から離れません。

 

「公正公平にお願いしますよ」

 

これにはもちろん反論ありです。審判員がどちらかのチームに加担するなんてことは絶対にないという自負があります。ただ一方で自分は正確に事象を捉えていたのか?ということにたいして負い目があったのも事実なのです。私はその選手の言を否定しながらも自分が副審として最高のパフォーマンスを発揮できたかどうかには自信が持てなかったわけです。

 

ゴールの見極めには集中力が必須です。そう、まさに審判員は近づいたり、角度を付けたり、フォーカスしながら事象を「撮影」し続けなければなりません。カメラを止めてはならないのです!

 

そして同時に予断をもって事象を勝手にパターン化してはならないのです。私が行ったように「得点シーンはボールがゴールネットに突き刺さる」と限定してはならないのです。そうカメラがそうであるように事象を解釈なしにそのまま映し出すことも必要なのです(もちろん同時に解釈も必要なのですけど)。

 

「この場面では得点はないだろう」「ここからシュートはしないな」「この角度でシュートされたボールが得点になることはないよ」ということがよりよい距離、角度、ポジションから事象を見極めようとすることの大きな足枷になるのです。そう、まさに「予断」大敵なのです!

 

画像録画やVARやゴールラインテクノロジーがない私のようなレベルの審判員では試合後に遡って事象が正確にどうだったかをレビューすることは出来ません。なのである意味自分という「カメラ」しかも再生不可能なカメラで全力を尽くす必要があるのです。

 

審判員は常に得点だったのかそうだったのかも含め全力を尽くして見極める必要があります。今回は出来なくても次回こそ!というのが審判員の持つべき向上心であり、それが審判員としてのあるべき姿勢なのです。

 

ミスプレーが選手を育てるように誤審が審判員を育てることもあります。プロならなおさらです。ひとつひとつのプレーに「人生をかけている」のがプロのサッカー選手だとしたらサッカー審判員だって「人生をかけている」のです。サッカーにかけてその先の夢を追い続けているのは選手だって審判員だって立場は違えど同じなのです!

 

オウンゴールしたくてオウンゴールしている選手など一人もいないように誤審したくて誤審している審判員など一人もいません。

 

もちろんミスをした選手や審判員にはフィールドの内外から非難がよせられることは承知しなければなりません。だからこそフィールドに立つサッカーを愛する同志として選手と審判員はお互いをリスペクトしあわなければなりません。そしてフィールドの中のミスでフィールドの外でリスペクトが失われるなんてことは絶対にあってはならないと思います。

 

時には嘲笑と揶揄を遠くに聞きながら、フィールドの中でサッカーの魅力を世界に向かって映し出す選手と審判員に向かって再度言いたい!カメラを止めるな!

 

では、I'll be back.