読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

オフサイド - ターミネーターしか判断不能か?~後編③

さて、いよいよ「意図的なセーブ(a deliberate save)」とは何を意味するのか?探っていきます。

 

本日は前回(後編②)以上に、言葉について頭が痛くなる(ある意味どうでもいいと思われる)お話が展開されます。前回同様、気分が悪くなられた方は勇気を持って読むことを中止されることをお勧めいたします。また非常に長い文章になったので3回(!!)に分けてアップします!

 

ここであらためて、オフサイドについての新しいガイドライン文章を載せておきます。

 

“その位置にいることによって利益を得る”とは、次のようにボールをプレーすることを意味する。
(ⅰ)ゴールポストやクロスバー、または 相手競技者からはね返った、または それらに当たって方向が変わってきた ボールを、既にオフサイドポジションにいる競技者がプレーすること。
(ⅱ)相手競技者が意図的にセーブして、 はね返った、方向が変わってきた、 またはプレーしたボールを、既に オフサイドポジションにいる競技者がプレーすること。

相手競技者が意図的にプレーした(意図的なセーブは除く)ボールを、既にオフサイド ポジションにいる競技者が受けたとしても、その位置にいることによって利益を得たとは判断しない。

 

さてここで、考えたのはある言葉には反対(または対)の概念を表す言葉が存在するということです。で、「意図的に」というと「意図的でない」が当然あるわけです。これは「偶発的」といいかえてもいいかもしれません。これでいくと「偶発的なセーブ」からのボールであればオフサイドポジションにいる競技者はボールを受けてもオフサイドの反則にならないのでしょうか?

 

この対概念におよんで、論理学の条件法でまとめることを思いつきましたのでそれを書いてみると:

 

命題=「意図的なセーブからのボールであればオフサイドである」

対偶=「オフサイドでないのであれば意図的なセーブからのボールではない」

(これを論理学では、命題の「対偶」といいます)

逆 =「オフサイドであれば意図的なセーブからのボールである」

(これを命題の「逆」といいます)

裏 =「意図的なセーブからのボールでないのであればオフサイドではない」

(これを命題の「裏」といいます)

 

ということになります。

 

さて、事実と照らし合わせると「対偶」は真(文の意味するところが事実と合っている)になります。

 

一方、「逆」や「裏」は偽(文の意味することろが事実と合っていない)となりますね。

 

例えば「逆」についていえば、オフサイドの反則になる時には、意図的でないはね返ったボールもあり得ますね。(ガイドライン(ⅰ)をご参照)また「裏」で言えば、意図的なセーブでからのボールでなくても、これもまた意図的でないはね返ったボールでオフサイドになりますからね。

 

これは、まさに論理学でよくいわれる「日常言語レベルでは、ある命題(=ここでは「意図的なセーブからのボールであればオフサイドである」)が真であれば、対偶は必ず真である。しかし逆や裏は必ずしも真ではない」の典型例なんです。

(注意して頂きたいのは対偶と裏を混同してしまうことです。なんで、対偶だけが真なの?と疑問に思われた方は文章を再度、お読みください)

 

ここまでかなり、迂回しながら書いてきたので、すでに読むのを中止された方も多いと思います。まだ「つきやってやろう!」思われている方は感謝!です。

 

さて、ここまで書いてきて、明確にしたいことは今回改正されたオフサイドのガイドラインにおいて重要な対概念になっていることは「意図的な」と「偶発的な」ということではなく、「意図的なセーブ」と「意図的なプレー」つまり「セーブ」と「プレー」であるということです。

 

「意図的なセーブ」の意味もまだ紐解いていない段階で「意図的なプレー」という新たな言葉を持ち出すとさらに混乱しますね。でも、この対概念で考えることが「意図的なセーブ」の意味合いを明らかにして、もう一方の重要な概念である「意図的なプレー」の意味もあきらかにしてくれると思います(『サッカー主審の動き - 言うは易し行うは・・・後半』の「プレーの中」「プレーの外」と同じアプローチです)。

 

「意図的なセーブ(a deliberate save)」と「意図的なプレー」どちらも意図的ということばが共通してます。「セーブ」と「プレー」にいくまえに、この「意図的に」という言葉を、ちょっとだけ見ておきましょう。

 

この言葉はガイドライン上では正式には「相手競技者が意図的にセーブして」と「相手競技者が意図的にプレーした」という文章になっています。ここで公式言語である英語版を見てみるとそれぞれ:

「a deliberate save by an opponent 

「an opponent, who deliberately plays the ball 」

となっています。

 

このdeliberateとい単語を(私が一番信頼している辞書の一つである「小学館 プログレッシブ英和中辞典」で)調べてみると、類義語が三つありました。

①willful  身勝手な;我執から出た故意の

②intentional 偶然ではなく意図的な

③deliberate 行為の意味を承知の上で意図的な

 

どうでしょう。この「意図的な」という言葉は「ボールを意図的に手または腕で扱う」のいわゆるハンドの条文にもあります。この英文は「handles the ball deliberately」です。競技規則においてこの「deliberate」という言葉が共通して使われているんですね。

 

最初にFIFAの競技規則英語版を見た時、「intentionalじゃないんだ」と思いました。一方willfulにはネガティブな意味が単語の中自体にありますので競技規則でいう「意図的」にはふさわしくない(悪意の程度は主審の裁量)ことがわかります。(事象として「反スポーツ的行為」にあたる「ボールを手または腕で扱って、相手競技者がボールを受け取るのを妨げる、また攻撃の展開を防ぐ」や「ボールを手または腕で扱って得点をしようと試みる」のようなハンドは、このwillfulという単語がふさわしいかもしれません」)

 

私も「意図的に」を単純に「偶然ではない」という意味で捉えていました。でも、今回、②と③の英単語を比較したとき、よりdeliberateの意味で(②のintentional との違いで)「意図的」を理解しておくことが大切と感じました。

 

「意図的に」という言葉を、ちょっとだけ見ておきましょう、といって随分長い話になってしまいました。繰り返しになるのを承知で書けば:

 

●「意図的なセーブ」=セーブという行為の意味を承知の上で意図的な(もくろみを持って)セーブすること

●「意図的なプレー」=プレーという行為の意味を承知の上で意図的な(もくろみを持って)プレーすること

ということになります。

 

それでは「セーブ」となんでしょう? → 次回 後編④へ

 

では、I'll be back.