巨匠映画監督と20世紀の知の巨人によるサッカー審判員のコミュニケーション その本質とは?(前編)
先日Jリーグで主審を務めていらっしゃる方のお話を聴ける機会がありました。
お話の内容は多岐にわたり最近の記事もその時のことをまとめたことが多いです。
さて私にとって一番印象深かったことは、実はその方の卓越したコミュニケーション能力についてなんですね。
その時のセッションは2級以上の審判員の方が担当した試合映像を見ながらレヴューするというものでした。会場には実際、画像に出てくる審判員の方もいらっしゃいました。
で、ある試合の画像でその試合を担当された審判員の方に、講師であるJリーグ主審の方が、その試合で実際に審判員を務めてどうだったかの感想を尋ねました。
初めての大舞台?だったせいもあり、その審判員の方が試合開始にあたって、とても緊張して頭の中が真っ白になっていたというような率直かつ自虐的な?感想を述べられると、会場からはいっせいに笑い声が上がりました。
それを聞いた主審の方が一言。「頭が真っ白になるなら(審判)割り当てを受けないで下さい。そのような状態では皆に迷惑がかかりますから」と。
笑い声が上がっていた会場が一瞬にして緊張した雰囲気に。でもその直後、その主審の方は「まあ、Aさん(その試合を担当した審判員の方)も半分冗談で、その時の気持ちを表現したんですよね。今私が言った試合を担当するときの心構えも準備についても十分にわかっていますよね」とフォロー。
こうやって書いてみると普通のやりとりのように思えるでしょう。でも、その発言が出た時にすぐさま釘をさすような一言とその後のフォローまでの流れが実に落ち着いていて心憎いばかりなんですね。
このような状況はビジネスの場でもあるのでは?例えば社内で会議をやっていて誰かが冗談で発言したことに対して、出席者の爆笑の直後それを諭すような正論で瞬時に緊張した雰囲気に。たしかに正論は正論。正しい。でも発言した人の意図も置き去りにされてその表現だけ取り上げられたことで、発言者のプライドも傷つけられ(たように感じる)笑った出席者も気まずい雰囲気に取り残されるというような状況。
もしくはその逆の状況。冗談で起こった雑談を誰も鎮めることなく会議が弛緩したままの雰囲気で続き結局は集中した真剣な議論にならなかったといようなこともあるのでは。
私がとても感心したのはその主審の方が、安易に冗談に迎合して自らの姿勢を崩したりせずに(=会場の雰囲気に流されることなく)そのセッション参加者全員に対して自らの威厳や信頼性をゆるぎないものにしつつ、同時にその冗談の意図にも理解を示しセッション参加者全員とのラポール(心の繋がり)をしっかり保ち、親近感(=心のバリアを取り除き聴講者をよりオープンマインドにさせる)を失わなかったことです。
これを目の当たりにして、この方が試合中にも選手と巧みにコミュニケーションされている様子が即座に思い浮かびました。そればかりかビジネスマンとしても最高のお手本となる高度なコミュニケーション能力だとも思います。
このような講義形式の場合1対多数(講師VS聴講者)のコミュニケーションとなるわけで、試合における審判員と同じ状況だといえます。(審判員VS競技者)
例えば興奮している複数の競技者に審判員としてどう対峙するのか。例えば審判員の判定について、これ見よがしに選手同士で揶揄しているかの発言にどう反応すべきか、等々。
さて確かに試合においては1(もしくは第四審判員も含め4)対 多数のコミュニケーションとなります。でも実はそれが1対1でも1対多数でもコミュニケーションの本質としては変わらない。
ではコミュニケーションの本質とは何でしょう?その前に、そもそも私たちが日々耳にしているコミュニケーションとは何でしょう?
うーん、サッカー審判員の話から遠くなってきている?うん、そうかもしれませんけど(苦笑)そうでもないんです(どっちよ)。暫くのご辛抱を。
そう、コミュニケーションとは何か?についてですね。
ここでは次ような定義をもとに話を進めます。
コミュニケーション≒贈与と返礼
贈与=心理的な負い目を相手に感じさせること。
返礼=負い目を払拭するために再び贈与すること。
なので以下のようにも定義できます。
コミュニケーション≒不均衡の相殺
*これらの定義の参考文献:「現代思想のパフォーマンス」難波江和英、内田樹
???な展開でごめんなさい。
次回以降、私が主審として試合中に犯したコミュニケーションの大失敗(まあ小さなものを含めると失敗の連続ですけど)を紹介しながら以上の定義の説明も含め審判員のコミュニケーションの本質に迫ります。うーん、いつになく大風呂敷。
ところでファウルした選手から「え~マジ~」とファウル判定直後に言葉が出たらあなたならどうしますか?
1)無視する
2)異議として警告(イエローカード)する
3)黙るように諭す
4)ちゃんと見ている旨を伝える
5)反論する
6)判定の理由を説明する
7)笑って許す(?)
そんなこんなも含め次回にて。
では、I'll be back.