ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

主審の異常な位置取り または私は如何にしてPK戦においてガイドライン通りの位置取りを止めて監視するようになったのか(後編)。

さて、PK戦(ペナルティマークからのキックのことです。念のため。)における主審の位置取りについてです。

 

まず競技規則とガイドラインにおいて「ペナルティマークからのキック」について書かれているのは以下の通り。

 

● 競技規則 P15 第2条 ボール

● 競技規則 P55 試合またはホームアンドアウェーの対戦の勝者を決定する方法

● ガイドライン P84 追加副審

● ガイドライン P90 第6条 副審

● ガイドライン P137 試合またはホームアンドアウェーの対戦の勝者を決定する方法

 

さて、このうち審判員の位置が記述されているのはP84の追加副審の位置およびP90の副審の位置についてだけで主審の位置が記述されている文章は存在しません。

 

なので我々が審判員が「正しい位置」の根拠としているのはP55の透視図とP90の俯瞰図で、とりわけP55の透視図を参照されることが圧倒的に多いのではないでしょうか。なぜならこの図は直感的に全体の構図も細部も把握しやすいからです。そしてこの2ページがとにもかくにも我々に「正しい位置」について教えてくれるオフィシャルな情報でもあります。

 

さて、この位置取りは図によって示されているだけでなく、実際我々が3級審判員になるための研修を通じてもペナルティキックとペナルティマークからのキックでは主審と副審の位置取りが異なることをインストラクターの方々から再度確認させられました。

 

なのでオフィシャルな位置取りは、この図にあるようにゴールラインから直角にフィールド内に5.5m延ばされたラインの先端、ゴールラインと平行なラインと交わるゴールエリアを囲むラインのゴールから向かって右側の角となるわけです。(やはり文章読んでもピンときませんけど、図なら一目瞭然ですね)

 

では、なんでそこがオフィシャルな位置取りなのかというと監視するという任務を果たすために合理的だからです。

 

さて、この監視する対象が異なることが試合中のペナルティキックと試合後のPK戦における審判員の位置取りが異なることと結び付くわけです。

 

例えばペナルティキック時の主審の位置取りはペナルティマークからゴールラインと平行な架空のラインを延長させた線上。これはキッカーや他の競技者の進入違反などを監視するのに都合がいいこともありますし案外見落としされがちな「キッカー以外の競技者はペナルティーマーク(ボール)の後方に位置しなければならない」の見極めがすぐにつくからです。前方にいる競技者の位置も見極めやすく、また死角になる後方も自分の真後ろを基準レベルにして競技者がそれより前に出ていないか瞬時に見極められるからです。

 

さて、ではいよいよ監視という観点で見た時のPK戦時の主審の位置取りについて。PK戦の時の主審と副審の監視分担については今さら繰り返す必要はないと思いますけど念のために書きますと:

 

主審:キッカーの確認、ボールの位置、キッカーの動き(反スポーツ的フェイントの有無)、ゴールキーパーの飛び出し

副審:ゴールポストの間とクロスバーの下でボールの全体がゴールラインを越えたかどうか

 

となります。

 

ひとつご注意を。これは監視役割分担であって主審はゴールかどうかの判断を副審に完全に委ねるという意味ではありません。判断(=決定)は主審の任務であり、またゴールキーパーが副審側から見た時ボールに覆いかぶさるようにしてゴールになったボールをかき出すこともあり得るわけで、このような場合主審はしっかりとボールの全体がどこに位置したか自身で見極める必要があります。

 

というわけで、キッカーとゴールキーパーの双方の動きを監視する主審にとってPK戦時のオフィシャルな位置取りは極めて合理的なわけです。

 

じゃ、なぜ私はガイドライン通りの位置取りを止める決断をしたのかって?それはフィールドのサイズやマーキングのされかたに関係しています。

 

私が普段担当する地区レベルの小学生以下の試合ですと多くの場合は競技規則どおりのラインの長さを確保できないことも多々あります。

*例えばペナルティマークひとつとっても競技規則に載っている日本サッカー協会の決定によれば直径22cmの円でマーキングされる必要があります。でも、普段は石灰を素手で握って地面に置いてマーキングなんて方法がほとんどでしょう。ちなみに22cmの円の中心に0・8気圧の5号球の中心を合わせて置くとボールによってペナルティマークの円は隠されるかギリギリ見えるかという状態になるはずです。で、ボールの一部がマークに載っていればOKならば中心からせいぜい四分の一回転動かせる程度ですね。

 

決断のきっかけは、ある時のPK戦。冒頭に主審として正しい位置につくと「うん?クビヲウゴカサナイト、キッカートゴールキーパーヲドウジニ、カンシデキナイ・・・。」ということに気付きました。

 

ちなみに私は人より視野が狭いとは思ってません。といより視界の片隅で動くものを追っかけるのは得意な方です。

 

ですから、その時のゴールエリアのサイズが小さくオフィシャルな位置に立つとあまりにもフィールドの内側に入り過ぎた位置取りになり結果視野が狭くなったわけです。

 

上記なような状態ですとキッカーの助走や助走終了後の動きそしてボールが蹴られる直前までのキーパーの露骨な飛び出しなんかが適切に監視できないわけです。ということでフィールドの状態(ゴールエリアのサイズ)にあわせて柔軟な(でも合理的な)位置取り、つまりガイドラインとは異なる位置取りをしようと判断したわけです。

 

これは、考えてみれば当たり前で位置取りは手段で目的は各プレーヤーの動きを監視することにあるわけですから手段を優先させて目的を達成できない(任務を遂行できない)のは本末転倒ですからね。

 

え、じゃあなんで全国選手権やJリーグや国際試合のようにフィールドのサイズなども競技規則どおりになっている状態でのPK戦で主審の位置取りがガイドライン通りになっていないかって?

それは・・・主審が監視の目的でその位置を合理的と判断しているからとしか申しようがありません。うん?謎がますます深まった?・・・ごめんなさい。

 

本件、また機会をあらためて取り上げますね。

 

では、I'll be back.