ボールを保持したゴールキーパーと他の競技者が接触してもファウルにならないケース
AFCアジアカップオーストラリア2015。
単純にもうちょっと日本代表の試合見たかったな~というのとコンフェデレーションズ杯に出場できないのも残念。
さて審判視点でひとつの振り返りを。
アラブ首長国連邦戦で後半、交代で入った豊田選手が相手ゴールキーパーと接触したシーンがありました。クロスボール(もしくは後方からのロングボール)に飛び込んで得意のヘディングで勝ち越しの一点を狙ったシーンのように記憶してます。
この場面、主審のファグハニさん(イラン)の笛はなりませんでしたけど、私には豊田選手のファウルのように映りました。(不用意なチャージでしょうか)
ところで話は逸れてしまいますけどファグハニさん、最後のPK戦では「異常な」位置取りではなくガイドラインに沿った位置取りでしたね。これぞお手本!うーん、引き続き検証が必要なテーマ?ですね。
さて閑話休題、ゴール前(ペナルティエリアの中)では各選手間での接触の見極めも大切ですし、ゴールキーパーと他の競技者の接触については十分な視覚情報を得て適切な判定をする必要があります。
特にボールを保持した状態であるゴールキーパーへの接触の見極めは重要ですね。
(ゴールキーパーがボールを保持した状態についてはこちら →「ゴールキーパーがボールを保持している状態を正確に言えますか?-前編」)
ここで本日のお題です。ボールを保持した状態のゴールキーパーに対して他の競技者が「チャレンジ(接触)」してもファウルにならない(してはいけない)ケースを御存じでしょうか?
その前に、昨日電車の中であった出来ごとについて。
それは通勤時間帯のこと。いつものように車両の中は満員で私も立ったままスマホのメールをチェックしていました。周りの人もほぼ同様にスマホをいじってます。と、その時私の背後からスマホのシャッター音が。どうも私の真後ろにいた女性が誤ってシャッターを押したような雰囲気。ただ、周りの人も誰も気にしてないようで私もスマホを引き続き操作していると前方からの視線を感じます。その視線の方を見ると・・・私からちょっと離れた所に立っている年配の?男性が私が持っているスマホと私の顔を何度も交互に見ています。とっさに心の中で叫んだのが「俺じゃない~(苦笑)」。そう、どうもその男性の方は私がシャッターを切ったと勘違いして「なに車内で撮影してんだよ」って視線なんですね(苦笑).。
さてこじつけの様にも聞こえてしまうかもしれませんけど、車内のこの状況は、とてもペナルティエリア内の混戦にも似ています。人の密度が極めて高く、しかも重なりあった配置で、どの方向のどの位置で何が起こったか一瞬の見極めにおいて勘違いが生じるリスクは他のエリア以上に高まります。
ペナルティエリア内では、得点に絡むプレーになるので狭いゾーンでの:
1.選手の密度
2.接触の頻度
3.動作の速度
が最も高くなることが判定を難しくしている一因です。
そしてこの状況下でフィールド内で唯一手を使うことを許されているゴールキーパーがプレーに絡むわけなので判定の難度は最高潮に達するわけです。(しかもペナルティエリア内なので多くの場合には副審のファウルサポートはお願いできない状況です)
さて、ここまで書くとカンの良い方なら?お気づきだと思います。そうボールを保持しているゴールキーパーに他の競技者が「チャレンジ」してもファウルにならない(してはならない)ケースとはゴールキーパーが味方の競技者(守備側競技者)と接触した場合のことです。
ゴール前の混戦でなら十分にあり得るケースですけど、それを見誤る(勘違いする=つまりゴールキーパーに対して攻撃側競技者がチャレンジしたと判断すること)なんてことは(昨日の私の電車内の出来ごとのように)あり得ない!と思いますか?いえいえ、こんなこと審判員が言ってはいけないと思いますけど十分あり得ます。
このようなミスジャッジを防止するためにはやはり、当たり前のことですけど:
1)適切な位置取りによる争点を中心としながらも周辺部も含めた視野の確保。
2)思い込みで視覚情報を処理しない論理的な見極め。
が求めれれます。
というわけで、まずはボールを保持したゴールキーパーがどの競技者と接触したかを見極めることに集中しましょう・・・と結びたいのところですけど、ことはそんなに単純じゃないですよね。
さて再びアジアカップそれも前回の2011年カタール大会のことです。今回いくつかの試合がTVで再放送されていましたけど、その中で当時の日本代表DFだった岩政選手が相手ペナルティエリア内にて攻撃をしかけた時に相手の守備側競技者とゴールキーパーが接触するプレーがありました(準々決勝のカタール戦か決勝のオーストラリア戦?)。
この時は笛が吹かれ岩政選手のファールとなりました。
これは、適切な判定で、岩政選手がチャレンジした相手DF選手が(押された)その勢いで味方ゴールキーパーと接触したからなんですね。ということで接触した瞬間だけでなくその前に何が起こったかも見極めることがとても大切ってことです。
これが両方のチーム入り乱れて起こるのがペナルティエリア内の攻防なわけですから審判員としても極めて高い集中力が要求されます。実戦で経験を積むことが適切な見極めができるようになる一番の近道でしょうね。
おさらいまでに書くと:
1.競技者の特定(誰と誰が接触したか)
2.因果性(どうしてその接触は生じたのか)
3.優先権(ボールに対してプレーできる可能性が高かったのは(もしくはあったのは)どちらの競技者か)
などが判定のポイントとなります。
さて、日本代表が早々とオーストラリアを去ってあとは錦織選手の全豪オープンでの活躍を期待!と思っていたら前回覇者のスイスのスタン・バブリンカ選手(世界ランキング4位)にセットをひとつもとれず敗れ去りました。錦織選手らしい早い攻撃の仕掛けやラインぎりぎりへのショットの応酬などありましたけど、やはり4回戦までの相手とは違いますね。
さて、この試合で気付いたことを次回は書きます。
では、I'll be back.