ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

その場をどう仕切るか?イタリアンレストランでのオーダーとペナルティーマークからのキック(後編)

前編から間があいてしまってごめんなさい。

 

ではいわゆる「PK戦」の手順をまず振り返りたいと思います。実は今回書きたいのはこの手順それも「キックを始めるまでの手順」とそれを主審としてどのように(≒何に注意しながら)進行させていくべきかということについてなんです。

 

実はこれについては競技規則やガイドラインだけ読んでもわからないことがあります。例えば試合終了後「勝者を決定する方法」としてPK戦は行われるわけですけど、試合終了後選手をセンターサークルに集めてセレモニーを(この場合は整列して一礼するか等)すべきか?それとも集めずにそのままベンチに戻すのか?などが不明ですね。

 

このあたりの手順は書かれてはいないのですけど、慣習的な?進め方がありますので次にかき出します。この手順についてはなぜ曖昧にしか知られてないかというとガイドラインなどで明確に説明されていないということもありますし、そもそも自分が主審を務めている試合でPK戦となることは10試合やって一回あるかないかの頻度でしょうから、他の審判員の方の手順を見たり自分で経験できる機会もなかなか巡ってこないからでもあります。

 

さて手順です。この手順については3級審判員同期の鬼審判部長ことKさんにもアドバイスをもらいました。また下記手順は4種の試合を想定しております。(ちなみに私は社会人の試合で初めて主審を担当した時にいきなりPK戦となってしまいましたけど・・・ドノヨウニ、ススメタノカ、アマリオボエテナイ・・・。)

 

① 試合終了の笛の後センターサークルに選手を向かい合わせで整列させる。

  この時次のことを伝え、その後ベンチに選手を戻します。

  1)引き分けで試合が終了したこと。

  2)PK戦を行うこと

  3)一度ベンチに戻ってキックをおこなう順番を決めること。*

  4)ただしフィールドの中にいること。

  5)(寒い時期には)ベンチコートを着用していいこと(給水はOK。尋ねられな

    い限りあえて言及しない)

  6)先攻後攻を決めるコイントスを行うのでベンチに戻ったのちキャプテンだけ

   先に主審のところまで来ること。

  *競技規則にある選手の人数の調整が必要な場合キャプテンにその旨を伝える。

② 審判団は本部前に移動し、主審は本部に対してどちらのゴールでPK戦を行うか

  本部に伝える。この時ゴールラインなどマーキングの復元が必要なら本部に伝え

  る。その後副審との間で監視の分担、サポートして欲しいこと、シグナルの出し方

  などを打ち合わせして決める。

③ 上記の打ち合わせ中もキッカーとなる選手がフィールドの中にいることを監視す

  る。(4種の多くの試合では第4の審判員がいないことに注意)

④ キャプテンだけよんで本部前でコイントスを行う。*この時人数の調整が必要だっ     た場合には除外した選手の指名と選手番号を主審に伝えさせる。

⑤ 笛を吹いてセンターサークルに両チームの選手を集める。

⑥ センターサークル内に両チーム同数の選手がいることを確認する(指でさして数えてはダメですよ~)。

 

④~⑤については先に笛を吹いてセンターサークルに選手を集める手順と同時にキャプテンだけよんでコイントスをする方法もあると思います。

 

また①のプロセスをとばしていきなりベンチに選手を戻すこともあり(4種以外で)かと思います。これが絶対というのは競技規則の進め方だけで、あとは上記も参考手順としてご理解ください。

 

では話を前編のKさん、4級のKさんが主審としてどのようにPK戦のキック開始まで進めたかを振り返ってみたいと思います。

 

まずKさんの進め方は何ら競技規則やガイドラインから逸脱していたわけではありません。試合終了後センターサークルに選手を整列させ、ベンチに戻るように指示したまでは何の違和感の声も誰からも起こりませんでした。ところが・・・・。

 

「ちょっと長いな」本部席で私の横に座っていた同じ3級のIさんからこんな声が起こりました。実は私も心の中で『これって・・・何待ち・・・?』と思っていたところでした。で、ようやく笛が鳴ってセンターサークルに選手が集められたら・・・あれ?今度は審判団全員で選手の全員の番号のブッキングを始めました。片方のベンチから堪らずといった感じで「あれ何?蹴る順番なんて途中で変わるかもしれないから・・・。」との声が本部席へ。やがてママさん達からも「(子供たちの)集中力途切れちゃうわよねぇ」との声も上がり・・・うーん確かにキック開始までの時間が長すぎる(ように感じる)。

 

さて、これで思い出したのが同じく週末に親戚と行ったイタリアンレストランでのこと。妻を含めて4人でのランチで男性は私だけ。ここは私がオーダーを仕切るしかない(って勝手に思い込んでいるだけですけど)と意気込み・・・ってほどでもないんですけど、性分なのかオーダーが決まらず時間が経ってしまうと、ちょっと落ち着かなくなってしまうんですね(短気ってわけではない・・・はず)。

 

さてグループで料理をシェアしながらの会食でオーダーするときに(もちろん何をオーダーするかが重要なんですけど)大切な(だと私が思っている)ことは「急かさず、もたつかず」です。つまり「ゆっくりメニューを見てたい」「ちょっと考えたい」と思っている人がいる一方で「何でもいいよ」「なんか迷ってばかりでいつまでたっても決まらないなあ」と思う人もいるわけです。このバランスを如何にとりながら皆に喜んでもらえるように料理をオーダー出来るかが腕の見せ所・・・ってそんな大袈裟なわけではあ~りません。

 

この「急かず、もたつかず」は会食するメンバーにとってもサービスを提供するお店のスタッフの方からも重要ですよね。お店だっていつまでも注文が決まらないテーブルに何度も来たり、他のテーブルの注文をやりくりしている厨房に何時まで経っても注文を繋ぐことが出来ないのは困ったことにもなります。

 

誰もリードせずに事がうまく(=誰のストレスにもなることなく)運べばいいのですけどそうは問屋が卸しません。なのでホスト役がリードするわけです。この会食でのホスト役も結局経験の豊富さがものをいうのでしょうけどPK戦の主審と同じでそうそう私達に巡ってくることではありません(なんのこっちゃ)。

 

まあ、いつもながら審判に関係ないことを長々と書くのもなんだかなぁ~と思いつつも私がメニューのオーダーを任された時の手順を書くと:

 

1)メニューの選択を全てまかされたのか皆からの注文の取りまとめを任されたのか瞬時に把握する。

2)(1で「全てまかされた」のなら)全員の嫌いな食材を確認する。

3)(全体のバランスも見ながらも)「自分の好きなもの」をまず選ぶ。

4)お店のスタッフの方にお勧めを聞いたり料理内容を確認する(このとき皆に聞こえるように会話することが大切)。

5)選んだ料理を声に出して読み上げ、皆の反応を確認する

6)(5でよほど反応が悪くない限り)オーダーする。

 

てな感じです。

 

ちなみに蛇足承知で付け加えると3)はなぜその料理を選んだのか自分の気持ちが入った言葉で説明できるから・・・は多少後付の理由で単純に自分が「ちょっとどうかな~」と思った料理を選ぶと他の人にも不思議とその気持ちが伝わるという根拠のない経験から・・・です。蛇足ついでに私は嫌いな食材はございませんです。4)は出される料理への期待を高めより美味しく感じさせる(もしくは期待外れでも責任回避できる・・・ズルイ)からです。

 

もちろんこの1)~6)の間に他の手順を踏むこともあります。そもそも料理に満足出来るかどうかはどの店を選んだかの時点でほとんど決まっていると言えますので、このホスト役の仕切りがよくてもわるくてもあまり関係ないかもしれません。それでもせっかくの会食、良いお店を選んだのならなおさら「仕切り」が大切でしょうね(って別にハウツーを説くほどの経験も専門性もございませんです。はい。)。

 

この会食時の「急かさず、もたつかず」はPK戦のキック開始時までの進行にも言えることで、前半のキックオフ時のようにキックオフの時間が公式に決まっているわけではないので、まさに主審の「仕切り」によって選手、ベンチ、本部、観客全員を納得(=違和感を抱かせない)させることが出来るのです。

 

具体的に我がチーム4級のKさんのケースを振り返ってみると、まずベンチに一度戻らせた選手達を再びセンターサークルに集めるまでの時間が長いように(少なくとも)周囲には感じられました。ちなみに私の手元にある日本サッカー審判協会制作の「サッカーレフェリーズ2010-2011」にはペナルティ―マークからのキックの時の手順として「タイムアップののち、延長戦の前と同様に5分以内の時間をとる」と書かれています。

 

多分この時Kさんがとった時間も5分程度だったような気もします。正確な時間は計測していないので周囲が「長い」と感じたのはこの5分を超過していたというより、単純に周囲が審判団の動きから得た印象の結果からと言えるでしょう。(これを観察者から見た時間経過速度における一般相対性理論・・・とは言いません・・・m(_ _)m)。ではなぜ長いと感じたのかそれぞれの立場から見ると:

 

本部 : トーナメント大会で午後の予定もあるし時間もおしている。そもそも審判団 

     が打ち合わせで時間をとっているようにも見えない等々。

ベンチ: キックの順番は決めた、快晴ではあるにしても気温は低い。選手の身体が冷 

     える。審判団は打ち合わせでなく別のことを喋っている(雑談?のように見える)。

観客 : 子供達にはPK戦に向けて励ましの声がけをしたけど・・・なんか間延びしてる。

 

という感じでしょうか(もちろんこれも私の主観です)。

本部担当の3級Iさんは自分なら最長でも1分半程度で笛を吹いて集めると仰っておりました。私の感覚も同じです。この辺は状況次第で、夏場だと給水、暑さからの疲労回復にちょっとでも時間が欲しいとベンチも選手も思うでしょうし冬場だと体が冷える前に始めたいとベンチも選手も思うでしょう。いずれにしても審判団がちゃんと状況を見て時間を配分していることがベンチから見ても本部から見ても分かるようにすれば「何待ち?」っていう違和感は起こらないように思います。

 

で、「長い」の違和感に拍車をかけたのが笛を吹いてセンターサークルに選手を集めたのち審判団が選手の番号をブッキングし始めたことにあります。これは何をしていたのか試合後Kさんに確認したところ副審の一人の方の提案で選手が入れ替わっていないかの確認のために選手番号を審判全員で記入していたと言うのです。「えっ?そうか~(苦笑)」。

 

どうもKさんも違和感を覚え「そんな必要は・・・」と思いつつも、その方の提案を受け入れてしまったようです。ここは主審のリーダーシップが欲しかったですね。そもそも試合終了時にフィールドにいた選手が入れ替わっていないのか確認が必要(もちろん必要ですけど)でその手段が選手番号との照らし合わせならそれはPK戦の時だけでなく後半戦開始時にもそうすべきという理屈になるはずです。ベンチコートを着て戻ってきた選手にコートを脱がせて、全員の選手番号を記入する・・・やはり周りから見ても??ですよね。

 

さて、とはいっても冒頭に書いたようになかなか自分が主審の立場としてそう何度も体験できないPK戦です。やはりここでも事前の準備が大切です。

ポイントとしては:

 

① 競技会規定に目を通しておく(引き分けで試合終了してから「どうするんでしたっけ?」なんて訊かないように)

② 上記のような手順を自分の中で決めておく。

③ キックを行うゴールを事前に決めておく。(強い向かい風、逆光、フィールドが酷く傷んでいる等)コンディションに差がないなら本部席から見て左側のゴールとする。

④ ゴールライン、ペナルティーマークなどのマーキングの復元が必要ならベンチに選手を戻した直後に決めたゴールとともに本部に伝える。

⑤ 副審の方たちとの打ち合わせ内容も事前に決めておく。

⑥ 上記のプロセスの間もベンチに戻した選手達の監視も忘れない。

 

などかと思います。

 

今回記した「急かさず、もたつかず」の心構えは主審は当該試合のマネージメントの責任があるのと同時に大会全体の運営にも協力的であるべきとの考えからも来ています。

 

 

というわけでペナルティーマークからのキックのときにはキックが始まってからは言わずもがな「試合終了直後からキック開始までの仕切り」もとても大切というお話でした。

 

今回の「試合終了直後からペナルティーマークからのキック開始直前」までの手順をも含む主審の「仕切り」は私の数少ない経験からだけの気づきなので、ぜひ皆さまからのご指摘も頂ければ他の審判員の方々の参考にも(もちろん私自身の参考にも)なりますので、ご意見などよろしくお願いいたしますm(_ _)m。

 

では、I'll be back.