西村主審が出したかったもしれないもうひとつのカードとは?
本日はストレートなタイトル通り、巷で議論になっている3月3日に行われたガンバ大阪VS鹿島アントラーズの試合でのあのシーンについてです。
前半36分に味方から前線に蹴り出されたボールを受けてトップスピードでドリブルする鹿島アントラーズのペドロ・ジュニオール選手をペナルティエリアの外に飛び出したガンバ大阪のゴールキーパー東口順昭選手が両手で押さえて倒してしまいます。
このシーンを見た瞬間私も「あっ~これはレッドかな」と思いました。ただTV中継の画像だと他の競技者の位置や数が分からないので再度様々な視野から撮られた画像を見た結論は・・・これやはり西村主審の判定が適切だったと思います。つまりレッドカードを提示する要件は満たしていないってことです。
さて競技者が得点、または、決定的な得点の機会を阻止した場合に退場を命じられるには次の状況を考慮(=つまりこれらの要件を全て満たす必要がある)しなければなりません。それは:
・反則とゴールとの距離
・プレーの方向
・ボールをキープできる、または、コントロールできる可能性
・守備側競技者の位置と数
の4つです。
さてここから私が西村主審の判定が妥当だと思う理由を4つの要件を順番に見ていくことで説明しますね。
まず「反則とゴールとの距離」です。これはゴールから遠いように思えますけど私は決定的な得点の機会の要件は満たしていると思います。なぜならゴールーキーパーの東口選手はすでに飛び出してきてゴール前にはおらずトップスピードに乗ったジュニオール選手は簡単に東口選手を置き去りにしてゴール方向に切り込んであっという間にその距離を縮められた(=ゴール前に接近できる距離に既にいた)はずです。
「プレーの方向」。これも問題ありません。2017/18の競技規則で追加された条文通り「全体的にその反則を犯した競技者のゴールに向かって動いている」と言えるでしょう(それにしてもこの和訳もう少しどうにかならなかったんでしょうか・・・ハッキリ言って悪文ですね。英語の公式条文をご参照ください。)。
「ボールをキープできる、または、コントロールできる可能性」。これも問題なしです。「ボールが早いスピードで転がってジュニオール選手はコントロールできなかった(タッチラインを割る前に収めることができなかった)のでは」と見えるかもしれませんけど、それはファウルを受けた結果に過ぎないと思えますね。
ここまでくるとレッドカード以外考えられないのではと思われるかもです。なのでもう満たされていない要件は最後の「守備側競技者の位置と数」しかありません。
より広い視野からの録画映像を見てみると東口選手がファウルを犯した瞬間、西村主審の前を走る選手は東口選手を除くとガンバ大阪3名、鹿島アントラーズはジュニオール選手を入れて2名です。うちガンバ大阪のひとりはジュニオール選手よりゴールに近いフィールド中央にいてもう1名はジュニオール選手より遅れているもののゴールに向かって、これまたフィールド中央を走っています(この選手の前をもう一人鹿島アントラーズの選手がゴールに向かって走っています)。なのでこの画像から判断する限り少なくともガンバ大阪の選手2名がジュニオール選手に対してプレーに直接影響を与えることの出来る位置にいたと思います。
さて上記は、画像を何度も観ながらの判断に過ぎず、西村主審はフィールドの中にいて上記の要件すべてを一瞬で判断し判定を下すことが求められるわけです。難しいですよね~。プロフェッショナルレフェリーと言えど。
さてこれで西村主審の判定(=イエローカード)の妥当性がお分かりいただけたかと思います、これにて一件落着・・・と行かないのは判定は妥当でもなんか納得出来ないというか違和感が残ってしまう・・・つまり鹿島ファンの気持ちも分かるということにあります。それは多分、ガンバ大阪の東口選手のファウルが全くボールをプレーしようとしていない悪意性が際立っているからです。なので審判員としてもこれは限りなくレッドに近いまさに「オレンジカード」のケースのように思います。
でもそんなものはありませんので・・・。判定が妥当でも周りを納得させられるかどうかはまた別モノとは・・・やはりサッカー審判員って難しい・・・。
では、I'll be back.