ターミネーター3級審判員の反省部屋

パブリックプレッシャーを感じながら今日も走る。サッカー3級審判員の"I'll be back!"な毎日

試合中に熱中症になりかけたら。

先々週末の筋肉疲労も抜けないまま、週末もすべて審判業務とあいなりました。

 

で、特に厳しい気象条件だったのが日曜日でした。この日は勝手に曇りになるかなと思いながらも日焼け止めも塗り、塩飴、メープルシロップ入りミネラルウォーター、塩味のカシューナッツも持参し試合前から準備万全だったのですけど・・・それは突然やってきました。

 

午前中だというのにすでに気温は30℃越え。日差しは紫外線が針のように注いでいるかのような状態。WBGTは・・・。実は筆者WBGTの基準値とか意味をよく理解していなかったのです。もうこの時点で準備万全とは言えませんね。ひらたく言うと甘くみていたわけです。

 

まずは筆者の下手な説明より環境省のこちらのサイトをご覧ください → 

環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは?

 

まずは:

 

WBGT=28℃=厳重警戒=熱中症患者が著しく増加する境目

 

と覚えておいてください。

 

そして:

 

28~31℃ 厳重警戒
(激しい運動は中止)
WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。
体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。

 

31℃以上 運動は原則中止

WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。
特に子どもの場合は中止すべき。

 

 

となります。

 

そのうえで、こちらの日本サッカー協会の通達をご覧ください → 熱中症対策ガイドライン 

 

ここで特に注目したいのが以下の文章。

 

「屋根の無い人工芝ピッチで試合を行う場合は、天然芝等に比べて WBGT 値の上昇が見込まれるため、上記の値から-3℃した値を基準とする。 」

 

つまり仮にWBGTが28℃であってもそれは31℃に匹敵するので「WBGT=31℃以上となる時刻に、試合を始めない。(キックオフ時刻を設定しない。)」ということになることを意味するわけです。

 

さてWBGT計測器なんて常に用意されているわけでもないですし、そもそもその意味を理解していなかった反省すべき審判員である私としては後で思えばかなり危険な状況で45分ハーフ90分ゲームの副審を務めたわけです。当然走るペース配分は最終ラインおよびボールの動き次第。このような気象条件のときに限って守備側の最終ラインの上げ下げが頻繁に行われたのです。そうやって裏に抜ける攻撃側の動きとも相まってスプリントを繰り返した結果、だいたい前半30分過ぎだったでしょうか・・・以前記事にしたような状況の予兆を自分の体に感じたわけです。つまり体温が異常に上がったように(身体、特に頭部が熱く)感じ始めたかと思うと、「ちょっと寒いかも」というアノ感じです。そうちょうどインフルエンザになって高熱が出始める時の悪寒のようなアノ感じです。

(以前の記事はこちら →「 サッカー審判員の「無知」が選手の生命を危険にさらす(後編)。 」)

 

やばいな~と感じながらも、あと15分+アディショナルタイムを乗り切れば休める。なんの根拠もないまま頭の中では後半ハーフに向けてハーフタイムのインターバルでリカバリーするためのある「秘策」が思い浮かんでました。

 

さてその「秘策」とは?ここからはあくまで個人の経験としての対策であって医学的根拠をもとにした推奨されるべき熱中症の対応策でないことを念頭にお読みくださいませ。

 

さて15分間の休息に入ってすぐに行ったことは2本の冷えた飲料を自販機で購入することでした。一方はミネラルウォーターそしてもう一方は「グリーン ダ・カ・ラ」。

 

まずは「グリーン ダ・カ・ラ」で水分、塩分、その他ミネラル補給です。市販の飲料の中では一番添加物が少なく、甘すぎず、塩分やカリウムなどのバランスがとれた優れものの飲料だと思います(念のためメーカーの回し者ではございません)。

 

で、次にミネラルウォーターの出番。これを自販機で買ってすぐに脳内を巡回している血液の温度をさげるべく(もしくは頭部の熱を冷ますために)冷えたボトルを首筋に当てたわけです。特に有効なのが首の横から前方に向かって斜めにペットボトルをあてて(多分)頚静脈付近(と思われる個所)を冷やすことです。このためなら別にミネラルウォーターでなくても冷えたペットボトル飲料ならなんでもいいのですけど(例えば「 グリーン ダ・カ・ラ」で首筋冷やしてから飲むとかなら飲料1本買えば事足りる)水のいいところはそのまま頭にかけることが出来る点です。

 

これでイメージとしては脳内に行く血液を冷やすことで熱のこもった頭部を冷却しているつもりだったのですけど(実際は頚静脈というのは脳内からの血流が心臓に戻っている血管なのですね)、まさにイメージどおりこもっていた熱が取れたのです。そうやって不思議にも後半ハーフの方がバテないで走れたというわけであります。

 

あと試合中もタッチライン付近に置いてある両チームの飲料をアウトオブプレーの時に飲むようにしました。このようにすれば試合中も水分補給は出来ます。出来ますけど上記のように熱が体にこもり始め、いわゆる熱中症のステージ2に進み始めると水分補給だけではその勢いを止めることが難しくなる可能性があります。なので試合中に熱中症になりかけたら中断を求める勇気も大事。またよく冷やした水をかけた帽子をかぶる勇気も大事。

 

とまあ、結果的に今回も何事もなかったのでいい経験になりましたけど、やはり熱中症はナメてはいけません。それは忘れたころに突然やってくるのです。サッカー審判員としては安全な試合運営、選手の健康の確保そして安心していいコンディションで選手に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことが任務となりますけど、その任務を遂行するためにはまず自身の安全を確保しなければならないというわけです。

 

ということで熱中症の予防対策対応メモ。

 

<試合前>

体調管理。とくに担当週における十分な睡眠および栄養補給。体調不良なら割当てを受けない。

必要に応じてアップ時からこまめな水分&栄養補給。

アップで熱のこもった身体の冷えたペットボトルを使った冷却。

<試合中>

アウトオブプレー時での水分補給。

時間軸と状況に応じたペース配分。

帽子の使用。

<ハーフタイム>

冷えたペットボトルを使った身体冷却。

水分&ミネラル補給。

帽子の使用。

<試合後>

十分な休息および栄養補給。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

サッカー審判員のコンタクト

前回の記事(「 サッカー主審の「動体視力」の本当の意味 」)でコンタクトレンズを使用したことの効能を書きましたけど、重要なことを書き落としてました。

 

それは主審 ⇔ 副審でのアイコンタクトがクリアになったことです。実はこれが一番悩みの種だったのです。各選手の動きや他の審判のシグナルは見えてもお互いの目と目がしっかり合わせることができないと(ぼんやり見えているだけでは)短い時間内で信頼関係を築くことが難しくなります。言葉やシグナルと同じくらい、いや会話できる状況は限られる試合中の審判同士ではこの目によるコミュニケーションが口ほどにものを言います・・・っていう真理なんですね。

 

アイコンタクトが重要になる状況についてはこちらの過去記事をご参照ください。→ 「 サッカー審判 「スゴイミニ」とは?  - 後編 」

あとこちらの記事も合わせてどうぞ。→ 「 主審と副審の「未知との遭遇」 」

 

シグナルビープとか電子通信システムなんてものを使用する試合を担当することはない私としてはこの主審と副審のアイコンタクトを引き続き実戦での課題とし、繰り返しチャレンジしてみます。

 

では、I'll be back.

サッカー主審の「動体視力」の本当の意味

「 サッカー審判員の身体「矯正」 」でお伝えしながらも審判業務が雨などでキャンセルとなり「コンタクトレンズ・デビュー」がなかなか果たせなかったのですけど、GW中にようやくその機会が訪れました。
 「 サッカー審判員の身体「矯正」 」でお伝えしながらも審判業務が雨などでキャンセルとなり「コンタクトレンズ・デビュー」がなかなか果たせなかったのですけど、GW中にようやくその機会が訪れました。

 

晴天にも恵まれ文字通り視界良好。いや~その効果は絶大です、って審判ぶりが上手くなったかどうかは別にしてはっきりと見えるというのは自信にもつながります。特に選手番号が離れていてもくっきりと見えると個々の選手の区別も容易で、いいこと尽くしです。シニアの審判仲間とも愚痴ったのですけどナイターなんかの場合は乱視+老眼の身には厳しい視認環境でした。もっと早くコンタクト作ればよかったな~(ただ装着はまだ手馴れてなくて時間+無駄にしたレンズがモッタイナイ状態です)。

 

さてデビュー戦では主審+副審を務めました。主審の時、ホールディングに対して2回ほど笛を吹きました。この時も体を押さえ付けた瞬間がはっきりと見えて、「スッキリ」?という感じです。

 

で、今回意識してチャレンジしたことは、よりよいポジションを求めての動きです。自分のことを棚に上げて他人の棚卸となりますけど、4級の方々を見ていて気になったことがいくつかあります。それは:

 

1)ボール(プレー)から遠い。

2)動き出しが遅い。

3)静止している。

 

の三つです。

 

今回特に自分も意識したのは「止まっている状態を作らない」ということです。もちろん人間は動いていない状況の方が安定した視力を得られます。ただプレーは常に動いているので主審が静止していることは必ずベストな視野や視角から(そしてもちろん視覚距離から)ズレが起こり得ることを意味します。なので最初のうちは1秒たりとも静止した状態を作らない(=常に動く)ことを実践してみてください。

 

もちろんそれは闇雲に走り回っているということではなく:

 

①ジョグ

②ウォーキング

③サイドステップ

 

を必ず織り交ぜるようにしてください。これで1段も2段もステップアップできますよ。もちろん「何を見るか」の目的が明確になっていることが1番重要であり動くことは主審にとっては目的ではなく手段に過ぎません。ただ、あまり最初は難しく考えず「常に動く」ことの実践です(そのスタミナは必須ですよ!)。

 

ちなみに動くときの意識付けとして重要なのが「角度」です。これ自分も課題なんですけど、プレーを監視するためのよりよい角度を求めて動くことです。競技者の重なりや串刺しになることでの死角をなるべく作らない(100%は無理でも)ようにしてみてください。

 

さて、ここで書かれていることを確かめるためにもJリーグなどでの主審の方々の動きをじっくり観察してみてください。とても参考になりますよ。

 

そしたら、あとはお互い実戦で切磋琢磨です。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

ボールボーイ(パーソン)に乱暴な行為をしたら・・・。

まずはこちらの公式動画をご覧ください。

 

千葉が高橋と指宿のゴールで徳島を下す【ハイライト:明治安田J2 第10節 千葉vs徳島:Jリーグ.jp

 

今回の場合実際の事象を正確にご理解いただくために、文章では事細かに再現いたしません。さて、この事象を目にした場合、もしあなたが主審ならどのような判断と対処をしますか?

 

「え~っと、どうしょうかなイエロー以上は確定のような、待てよ・・・カードの対象になるのか?この場合・・・う~ん口頭で注意もあり・・・?」なんてよもや迷ったりしないですよね。

 

実は偉そうに書いていますけど、私もこんな場面に主審として出くわしたら咄嗟に判断できないで「反スポ・・・かな?ということはイエロー・・・。」なんてやりそうです。いわゆる「困ったときの反スポーツ的行為」ってやつ?ですね。確かに反スポは広範囲な不正行為を網羅しておりますけど、それに対する懲戒処置は警告なわけです。では再度公式動画をご覧ください。これが警告で妥当な行為なのか。つまり徳島ヴォルティスの馬渡選手に試合に続けて参加することを認めていい行為なのか・・・?と考えれば、それはあり得ないですね。

 

正直に言ってこれを咄嗟に判断できない遠因は選手間での乱暴な行為ではないということもあるかもしれません。つまり競技者以外にこのような行為を犯すことに出くわすケースは、多くない(というか私は経験なしです)ということです。「選手が競技者以外に・・・えっーと」なんて考えるようでは審判失格。ここで、やはり役立つのは競技規則の文言をちゃんと咀嚼して覚えておくということではないでしょうか。

 

公式発表はまだのようですけど、今回の馬渡選手の退場理由は「乱暴な行為を犯す」となります。

 

この「乱暴」っていう言葉が曲者でどの程度なら乱暴かって話にも成りえます。なので具体的に咀嚼しておく必要があります。とまた偉そうに語ってますけど今回のケースがあるまではわたしも次の競技規則にある文言をちゃんと読んで覚えておりませんでした。

 

乱暴な行為

乱暴な行為とは、身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールに挑んでいない ときに相手競技者に対して、あるいは、味方競技者、チーム役員、審判員、観客またはその他の者に対して過剰な力を用いたり粗暴な行為を行う、または、行おうとすることで ある。 加えて、競技者がボールに挑んでいないとき、意図的に相手競技者やその他の者に対し て頭や顔を手や腕で打つ場合、その力が微小なものでない限り、乱暴な行為を犯したこ とになる。

(下線筆者)

 

このように競技規則上では:

ボールパーソン=その他の者

馬渡選手の行為 = 粗暴な行為 (ちなみに英語では乱暴な行為はviolent conduct、粗暴な行為は brutality となります)

ということですね。

 

この「その他の者」とか「粗暴な行為」って言葉を覚えているだけで事象に対して的確かつ迅速な判断が出来るように思います。ただその場に突然出くわしたら・・・。

 

ちなみに競技規則英語版にあるbrutality って言葉を辞書にあるような「残忍な行為」とか「蛮行」って日本語ではなく「粗暴な行為」とした日本語訳はナイス!でございます。

 

言葉ってやはり重要だよな~と思っていたら複数の報道では馬渡選手の退場理由が「非紳士的行為」って書かれていますけど、競技規則にはそのような文言も退場理由もございません。(例えば女性の試合を考えただけで、この言葉の奇妙さに気付くはず)。蛇足ながら紳士的って言葉は「紳士らしく、上品で礼儀正しいさま。また、相手との相互信頼を前提にして行為すること。」と辞書では定義されていますけど、徳島ヴォルティスの馬渡選手の行為は「そのようなふるまいではなかった」の範疇をはるかに超えた不正行為です。

 

今回の場合、馬渡選手はボールをボールパーソンの方に投げ返している(突き返している)ようなので以下の競技規則も頭に浮かびます。

 

物(またはボール)を投げる反則

ボールがインプレー中、競技者、交代要員、交代して退いた競技者が物(ボールを含む) を相手競技者やその他の者に対して投げつけた場合、主審はプレーを停止し、次の処置 を取らなければならない:

•  無謀な場合:反スポーツ的行為として警告する。

•  過剰な力を用いた場合:乱暴な行為として退場を命じる。

 

この条文に引っ張られて考え過ぎない・・・というか、一連の事象を見極めて判断して的確な懲戒処置をとる必要がありますね。

 

それにしても馬渡選手、乱暴な行為を犯したあと主審に対してボールパーソン(の方向と思われる)を指さしながら何か言っているようですけど、プロとして感情をコントロール出来なかった自らの非を即座に認めて欲しかったですね(コノヨウナ ソブリハ カッコワルイ ミットモナイ)。

 

あと徳島ヴォルティスのサポーターが試合後にボールパーソンに水をかけるという事態も発生したようで、残念としかいいようがありません。主審が試合前の点検でフィールドに入ったときから試合終了後にフィールドを離れる前にこのような行為が競技者、交代要員、または交代して退いた競技者によって行われたら即レッドですね(ベンチ役員なら退席)。

 

いずれにしても後味悪し。ボールパーソンが遅延したなんて言い分で馬渡選手の行為が情状酌量になるものでもないです。鈍感なオッサンの私でも好きなサッカーでこのような目に遭ったらトラウマになります。十分なケアが彼に与えられることが審判員としての私からのお願いでもあります。

 

では、I'll be back.

 

追記:自分で「言葉ってやはり重要だよな~」といいながら最初記事中で「ボールボーイ」という表記を(違和感持ちながら)使っておりました。自省と共に「ボールパーソン」という表記に訂正させて頂きます。また徳島ヴォルティスの公式謝罪文によると試合後別のボールパーソンに向けてスタンドからかけられたのは「アルコールと思われる液体」とのことです。

 

 

ボールがオフサイドラインになっている場合の判定 「忖度」してはならない!

自分も以前から(未熟さゆえ)「難しいなあ~」と思っていた判定の例が、かつーさんの記事にありました(こちらです →  「2017UCL準々決勝2ndレグ R.マドリー対B.ミュンヘン 」)。

 

一番最後のオフサイドの反則「誤審」のケースとなったクリロナ選手のハットトリックのプレーです。

 

このように攻撃側選手が最終ラインを置き去りにしてボールをドリブルしながらゴールに向かう場合、副審がキープすべきオフサイドラインはボールとなります。なのでボールより味方攻撃側選手の手と腕以外の体の一部が相手ゴールに近いと、その選手はオフサイドポジションに位置していることになります(ちなみに攻撃側選手の髪型が極端に前方に突き出たリーゼントの場合、それは体の一部とみなされるのかどうか?ということが現在FIFAでも議論になっています・・・なわけないか。失礼)。

 

さて、このケースの場合のオフサイド判定の難しさの要因は以下の四つに大別されるかと思います。

 

①走力

②視角

③錯誤

④雰囲気

 

ここからは(というか常にそうですけど)あくまで4種を主に担当する未熟審判員の視座からの要因としてお読みください。

 

ではまず①。かつーさんも書かれているようにトップスピードになった攻撃側選手に副審が追いつけない状態ですね。4種の試合では追いつけないなんていうことは決してあってはならないでしょうし、上のカテゴリーでも副審に求められるのは「即加速、即停止」。早瀬左近の乗るポルシェカレラRSRターボの並みのパフォーマンスが要求されます。

 

②は見る角度ということなんですけど、当然ながらドリブルでゴールに向かって駆け上がる攻撃側選手と並走するにはサイドステップでは無理なので視線だけをフィールド側に向けた状態で全力疾走となります。正確にラインを目測する精度はフィールドと正対している場合と比べると劣ってしまいます。

 

③は「事象と認識のギャップ」です。ヘンな言い方ですけどこれ侮れません。競技規則上では理解出来ていても突然最終ラインが守備側競技者からボールになった場合にラインの修正が脳内で出来ないままオンサイド、オフサイドの判断をしてしまうことがあるわけです。

 

そんなことあるの?と思われるかもしれませんけど、例えばクリロナ選手の場合のような分かりやすい状況とは異なりゴールエリア内での混戦から1m程度ゴールに向かって攻撃側選手がドリブルで抜け出た状況を想像してみてください。この時最終ラインが守備側の2番目の選手からボールに「入れ替わったら」・・・。もっとパズルのような状況はゴールキーパーが最終ラインより前方に出ているとか同レベルとかになっていたら・・・。これを一瞬で判断する必要があるわけです。

 

話をかつーさんの記事にあるクリロナ選手のケースに戻します。このケースでは映像を見る限りクリロナ選手はボールの最終ラインより相手ゴールに近い・・・つまりオフサイドポジションにいます。

 

さてこの時注意が必要です。それはくどいようですけど監視すべきオフサイドラインはドリブルしている攻撃側選手ではなくボールだということです。「へっ?そんなの同じでしょ」と思われる方もいらしゃるかも知れません。ところがドリブルしているボールがその選手の足元よりかなり相手ゴールに近い(前方に蹴り出されている)ことも大いにあり得ます。この場合必ずボールの真横から監視していなければなりません。このケースの誤審はクリロナ選手の場合とは逆でオンサイドなのにオフサイドと判定してしまうことでもあります。

 

錯誤というものが生じる根本原因はやはり習慣の力のようにも思います。つまり大半の場合最終ラインは守備側選手で形成されており、ボールを最終ラインとして監視する時間はそれに比べてとても短い(=慣れていない)ので脳内での「最後から2番目の選手⇔ボール」という切り替えがスムーズにできないというわけです。

 

さて④はなにかというと、大抵のクリロナ選手のようなケースでは守備側競技者は振り切られているので自分の位置からオフサイドかオンサイドかの判断ができなくなります(すでに自身は最終ラインではないので)。またこのようにドリブルでゴールに迫るプレーというのはスピード感および緊迫感満載のまさにサッカーの醍醐味に溢れる瞬間だったりするわけです。

 

守備側選手から手を上げてのオフサイドアピールもなければ、ゴールに向かっている攻撃側選手の攻撃をゴールキーパーが止められるのかそれともシュートされたボールがゴールネットに突き刺さるのかの1点に観客のみなさんの興味も絞られている、つまり「その瞬間を観たい!」という期待を感じてしまうわけです。もちろんラインを基準に正確に雰囲気に影響されることなくオンサイドかオフサイドの見極めを行います・・・行いますけどやはり過去思い返せば雰囲気を読んで「忖度」していたケースがあったように思います(遠い過去です!)。つまり「ちょっとだけ体が前に出ていてオフサイドだけど、守備側からの異議も全くないし、攻撃側選手やベンチや応援団も盛り上がっている・・・なにしろナイスプレーだから・・・このままゴールに・・・」ってわけです。ココデ ハタアゲタラ クウキヨメテナイ。

 

とまあ、ここまで書いてきてなんですけど、周囲の雰囲気で流されるようでは副審としては不合格です。たとえ目の前のプレーがゲームの展開として素晴らしいものでもダメなものはダメ。すこしでも受け手の攻撃側選手がボールより前方にでていたらフラッグアップです。

 

ただこの雰囲気に流されてしまう本当の原因はボールがオフサイドラインになった場合に副審がラインをキープ出来ていない、つまりラインより後方から追いかけているポジションでの監視になっているため攻撃側競技者のポジションを正確に判断できないことにあると考えます。つまり仮にオフサイドのような印象を持ったとしても「見てもいない」ことに憶測でシグナルを出すわけにはいかないということです。

 

いずれにしても要因はともあれ得点ではなかったものを得点にしてしまう、もしくは得点できていたのにプレーを止めてしまう・・・といった誤審は絶対に防ぎましょう。

 

全く視座を変えると、副審の方の技量によっては主審自ら最終ラインを監視してオフサイドの判定を行うことも必要となります。副審まかせではなく自身の走力とカテゴリーのレベルを考慮しながらチャレンジしてみてください。

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オフサイドの反則。再開場所に隠れた競技規則の「落とし穴」(後編)。

とかなんとか言っていたら?1週間経ってしまいました。

 

さて前回記事にした事象はこういうことでした。

 

1)副審の目の前(ニアサイド)でオフサイドポジションにいた攻撃側選手に向かって味方からパスが出た。

2)その選手は自分がオフサイドポジションに位置していることを知っておりプレーしようとしなかった。

3)この時副審はフラッグアップを堪えながらウエイト&シー。

4)そして次の瞬間ボールに向かってその攻撃側選手が移動して守備側選手と競り合いそうになり、ここで副審がフラッグアップ。

5)オフサイドの反則を認める主審の笛が吹かれた。

 

そして問題は副審がフラッグで指し示した再開場所は4)の反則が成立したところではなく3)の副審がフラッグアップするのを堪えていた場所、ということでした。

 

 

さて、旧規則であれば「競技者がいたところ」となるのでこれでいいのですけど、新規則ですと再開場所は「反則が起きたところ」となるので、このフラッグ指示は如何に・・・?というわけです。

 

ここで前回挙げた次の三つの可能性を再度記します。

 

1)競技規則の適用を間違えた。

2)反則が起こった場所と再開場所のズレは許容範囲。

3)正しい再開場所だった。

 

もし仮に3)であるとしたらそれはどういうことなのか?

で、ここでやや強引な「推理」です。

 

それは:

①実は副審が最初にフラッグアップせずにいた場所ですでに反則は起こっていた。

②ただ明らかに「プレーに干渉」はしてはいない(=ボールをプレーしたり触れていない)し、「相手競技者に干渉」もしていない(=視線を遮ったり、チャレンジしていない)のでウエイト&シーした。

③でボールがさらにゴールライン寄りに移動し、それをオフサイドポジションにいた攻撃側選手が追いかけていき相手競技者に干渉したのでフラッグアップ。

④副審はここで①での攻撃側競技者の動きが「自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える」ものであったと思い返した。

⑤そこで③で相手競技者に干渉したところではなく、①での場所を指示した。

というものです。

 

なんか、分かり辛いですね。簡単にいうと「思い返すとウエイト&シーするまでもなく最初のところでオフサイドの反則になっていた」ということです。

 

まあ、これ強引な解釈の上、副審の方にも失礼な話となります。なんせ「干渉」という言葉でも明らかなように副審の方の頭の中で旧規則と新規則が混じりあっていた状態を意味するわけなのですから。ある意味妄想ですね。

この妄想を誘引してくれたのが新規則にある以下の文章なわけです。

 

オフサイドの反則

(中略)

・自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競 技者に影響を与える。または、

・  相手競技者がボールをプレーする可能性に影響を与えるような明らかな行動をと る。 

 

この文章の正式な解釈は聞いてないなあ~。まあ、原則はなにも変わってないんだろうな~。でもこの文章があるせいで、フラッグアップしてしまうケースに幅がでるような・・・。というわけでさらに具体的ケースに基づいてこの競技規則について検討していきたいと思います。

 

あと、ひとつ気になることがありまして、それは副審のポジションです。例えば今回のケースにおいてもウエイト&シーを行っていた副審は、最初の場所つまり最後にパスが出た瞬間に攻撃側選手がいたところに留まっているように見えました。旧規則ならここが再開場所なので正しくもあり、同時にオンサイドの選手が飛び出して来たら慌てて最終ラインを追いかけるべきなので留まっているのはマズイ・・・という「迷い」がありました。でも新規則なら反則が起こった場所と再開場所は同じなのでこのような「迷い」は生じない・・・と思っていたら今回の副審の位置取りは・・・?

 

う~ん。前後半と分けたのに何も解決されずで失礼しました。勝手ながらもご意見をお待ちしております!

 

では、I'll be back.

 

 

 

 

 

 

 

 

オフサイドの反則。再開場所に隠れた競技規則の「落とし穴」(前編)。

昨日の日産スタジアムで行われたJ1リーグ第6節横浜FマリノスVSジュビロ磐田の試合を見ていて「おや?」と思うシーンがありました。

 

それはA2の方(多分、作本貴典さん?)がオフサイドの反則でフラッグアップしたシーン。副審の目の前(ニアサイド)でオフサイドポジションにいた攻撃側選手(もはやどちらのチームだったか記憶が定かでない・・・)に向かって味方からパスが出されました。その選手は自分がオフサイドポジションに位置していることを知っておりプレーしようとしませんでした。フラッグアップを堪えながらウエイト&シーの副審。で、次の瞬間ボールに向かってその攻撃側選手が移動して守備側選手と競り合いそうになり、ここでフラッグアップ。主審の笛。

 

「おや?」と思ったのはこの反則での再開場所。フラッグアップした瞬間に攻撃側選手がいた場所、つまり反則が起こったところが再開場所になるべきなのですけど副審のフラッグが指示したのは攻撃側選手がパスが出る瞬間にいた場所なのです。その差10メートルもないとは思いますけどこれって・・・次の三つのうちのどれかのはず。

 

1)競技規則の適用を間違えた。

2)反則が起こった場所と再開場所のズレは許容範囲。

3)正しい再開場所だった。

 

1)はないと思いますけど、事実・・・。2)が一番現実的な解釈なんですけど、でもなあ・・・。

 

さて3)です。旧競技規則ならその通り。今の競技規則に沿うなら間違い.。なので問題外・・・ってわけでもないのですね。どういうことか?次回大胆な推理に挑みます!(大袈裟だな・・・)。

 

では、I'll be back.