ペナルティーキック開始時 - 笛を吹くべきなのか?吹かなくていいのか?
さていきなり質問です。
ペナルティーキックの進め方としてキッカーがボールを蹴る前に主審は笛を吹く必要があるのでしょうか?
競技規則を見てみます。
第14 条 ペナルティーキック
進め方
●主審は(中略)ペナルティキックを行うための合図をしない。
うん?笛吹かなくていいの??
もう一度確認してみましょう。
第14 条 ペナルティーキック
進め方
●主審は(中略)ペナルティキックを行うための合図をする。
あれ?どっちよ(笑)
これふざけているわけではなく、どちらも競技規則に書かれているんです。もうネタばれしているかもしれませんね。タネ明かしすると:
2012/2013
サッカー競技規則
第14 条 ペナルティーキック
進め方
●主審は、競技者が競技規則どおりの位置につくまで、ペナルティーキックを行うための合図をしない。
2013/2014
サッカー競技規則
第14 条 ペナルティーキック
進め方
●主審は、競技者が競技規則どおりの位置についたことを確認した上で、ペナルティーキックを行うための合図をする。
(下線筆者)
というふうに、2012/2013 年版と2013/2014年版の競技規則では表現が異なっているんですね。別に競技規則が変更されたわけではありません。それが証拠に英文の競技規則を見てみると:
LAW 14 – THE PENALTY KICK
Procedure
• After the players have taken positions in accordance with this Law, the
referee signals for the penalty kick to be taken
といように2012/2013 年版と2013/2014年版では同じ文章となっています。
この英文を直訳すると:
●主審は、競技者が競技規則どおりの位置についた後に、ペナルティーキックを行うための合図をする。
となりますね。
この直訳より現在の表現の方が「確認した上で」という主審が行うべき手順を強調していて適切な表現だと思います。
ついでにいうとここで確認すべきは「競技者の位置」だけではないですよね。
ボールと競技者の位置
ボールは、
●ペナルティーマーク上に置かなければならない。
ペナルティーキックを行う競技者は、
●特定されなければならない。
守備側のゴールキーパーは、
●ボールがけられるまで、キッカーに面して、両ゴールポストの間のゴールライン上に
いなければならない。
キッカー以外の競技者は、次のように位置しなければならない。
●フィールドの中
●ペナルティーエリアの外
●ペナルティーマークの後方
●ペナルティーマークから少なくとも9.15ⅿ(10ヤード)以上
特に注意すべきは主審の背後や死角にいる競技者の位置です。
ペナルティーマークより前方に位置していたり、片足をペナルティーエリアに踏み入れている選手がいないか等々、確認しましょう。で、合図の後ボールが蹴られて前方に移動してインプレーになるまでの間、選手が競技規則で定められた通りの位置にいるかどうかの監視も行います(これは副審との連動が大切ですね)。
さて、今回は思わせぶりなタイトルのわりには拍子抜けするようなオチだったとしたらごめんなさい。
誰も気付いてないことに気付いたよ~!なんてことで悦に入っているわけではなく、年に一回の3級審判員の更新筆記試験のために競技規則を見直していて偶然「発見」しただけなんです。昨年度版と本年度版の競技規則を比較すると結構あるんですよね微妙な表現の違いが。
多分、毎年翻訳の見直しが行われているんでしょうね。
さて、こんな重箱の隅をつつくようなことやっているからには競技規則を完璧に暗記出来ているかと思いきやこれが怪しい。もちろん競技規則の運用やどんな質問にも答えられる自信はありますけど、暗記となると別。今回も100点ではないです(それに近い点数だったはずですが・・・)。
でも上級審判であるかぎり競技規則は8割覚えていればいいや~とは絶対なりません。精進あるのみ。
最後に再び最初の質問に戻って「ペナルティキックの進め方としてキッカーがボールを蹴る前に主審は笛を吹く必要はあるのでしょうか?」に対しての答は競技規則に書かれているとおり「合図」をします。あれ「笛」じゃないじゃん!?
まあ、まあ、ここは素直に笛を使いましょう。
審判員のためのガイドライン P82 主審のシグナル
笛の使い方
次の場合には、笛を吹くことが必要である。
●前、後半の、また得点後のキックオフのとき
●次の理由でプレーを停止するとき
─フリーキックまたはペナルティーキック
─試合の一時的な中断、または中止
─プレー時間がすべて終わった、前、後半の終了時
●次の場合にプレーを再開するとき
─規定の距離を下げたときのフリーキック
─ペナルティーキック
●次の理由でプレーが停止された後にプレーを再開するとき
─不正行為に対するイエローカードやレッドカードの提示
─負傷者の発生
─交代
(下線筆者)
では、I'll be back.